「航路の歴史」とは？
日本の産業や文化を発展させてきた
海の道をめぐる挑戦

国土の四方を海に囲まれた日本では古来、漁撈をし、人や物を運び、交流を深めて文化を育むなど、海を舞台にさまざまな営みがなされ、恩恵を得てきた。人々の暮らしを支えてきた「海の道」にかかわる日本の歴史をひも解く。

監修＝綿貫友子（わたぬき ともこ）
東北大学大学院文学研究科修了。大阪教育大学教授を経て現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。日本中世・近世の海上交通とそれを利用した流通を研究する。博士（文学）。

日本の産業や文化を発展させてきた海の道

日本と海とのかかわりが記された最古の史料は、中国前漢の正史『漢書』地理志である。「楽浪海中に倭人あり」と、前漢が朝鮮半島に置いた楽浪郡に定期的に使者が派遣されていたことが書かれている。その後、渡来人や遣隋使・遣唐使などによる外交使節や交易商人によって、さまざまな文物が日本にもたらされ、それらは国としての在り方や文化の発展に大きな影響を与えた。

また、陸路が未整備であった時代には、国内の輸送や移動にも水路が利用されてきた。海運はもちろん、河川や湖沼など内陸水運が各地で利用され、中継地となった水陸交通の要衝には市町や宿が形成された。

敵対国との間では航路が分断されていた戦国期を経て、天下統一がなされた後、近世には幕藩体制下で、幕府の所在地である江戸と、諸藩の蔵屋敷が置かれて商取引の中心となった大坂を二大拠点に、中世海運の基盤をもとに水陸交通路の再編がなされた。

江戸幕府は、天領（直轄地）からの年貢米を運ぶため、商人の河村瑞賢に命じ、出羽国酒田（現・山形県）を起点に、津軽海峡を経て、太平洋を南下して江戸に至る東廻り航路と、日本海から瀬戸内海を経て、大坂・江戸に至る西廻り航路を整備させた。全国規模での航路網の整備により、海運がさらにさかんになり、中継地として各地で港町が発展するなど、隔地間での商取引や人的交流を介して、地方経済の活性化にもつながった。

先人たちが行き交った海の道

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キーワードから紐解く
海の道の歴史（〜古代）
 
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text: Discover Japan
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