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京都《和久傳ノ森》
あの名料亭・和久傳も
海の京都が起源でした

2026.2.24
京都《和久傳ノ森》<br>あの名料亭・和久傳も<br>海の京都が起源でした

京都北部の7市町で構成される「海の京都」。和の源流を感じながら、冬の味覚をキーワードに“もうひとつの京都”の魅力を発見する旅へ――。今回は、京丹後市久美浜町に位置する「和久傳ノ森」をご紹介。京都で名を馳せる料亭「和久傳」の故郷に広がる鎮守の森。四季折々の恵みが体感できる自然を懸け橋に、人、食、アートをつなぐ施設を訪れた。

自然を懸け橋に、
人、食、アートをつなぐ

在来種の苗木が植樹された和久傳ノ森は、食材や人を育む土壌、水の循環を重視した持続可能な森づくりを取り入れている。三角屋根の建物が工房レストランwakuden MORI

京都を代表する料亭のひとつ「和久傳」。そのルーツが海の京都にあることはご存じだろうか。1870年、和久屋傳右衛門が峰山町(現・京丹後市)に料理旅館として創業。その後、京都市内に料亭「高台寺和久傳」を開店し、京丹後の稀少な間人ガニを囲炉裏の備長炭で焼くといった趣向が好評を博し、瞬く間に名料亭として名を馳せることに。料亭のかたわらで料理人が仕立てるおもたせを販売する「紫野和久傳」が誕生し、店舗を展開する中で、新たな食品工房を立ち上げる際に選んだのが故郷、京丹後だった。

美術館は、建築家・安藤忠雄氏設計!

その頃、時を同じくして出会った世界的な植物生態学者・宮脇昭の指導の下、何百年にわたり人の営みを守る鎮守の森を育てていきたいという想いで生まれたのが「和久傳ノ森」だ。2007年、何もなかった工業団地用の更地に、地域住民や従業員など1600人が苗木を植樹。これまで56種、約3万本の植樹が行われている。

静寂が漂う森に足を踏み入れると、秋風に揺れる葉擦れのささやきが迎えてくれた。橙色に彩られる柿や郷里の伝統工芸「丹後ちりめん」にちなんだ桑、シイタケ、山椒など四季折々の山菜や果実が実り、散策していると心が清澄な安らぎで満たされていく。

「森の中の家 安野光雅館」では、3カ月ごとに企画展示を開催。別世界への期待感を抱かせる長い回廊、わずかな開口部から差し込む光に自然の豊かさを感じる展示室など、安藤忠雄氏が手掛けた空間とともに独創的な作品世界を堪能したい

「ここは、京丹後の素晴らしさを未来に伝えたいという恩返しの想いで生まれました。秋は鮮やかな紅葉が彩り、冬は幻想的な雪化粧に包まれる森を楽しんでください」と「工房レストラン wakuden MORI」料理長・豊田弘志さん。

森の中には、繊細で柔らかい水彩画が老若男女を魅了した画家・安野光雅の原画を展示している「森の中の家 安野光雅館」がある。この森に魅了された建築家・安藤忠雄氏が設計を手掛けた杉板張りの建築は、深閑の森と響き合うようにひっそり佇んでいる。

「工房レストランwakuden MORI」で人気の季節の飯蒸しセット。秋冬は穴子や栗、イチジクが登場。隣接工房から届けられる、和久傳を代表する「れんこん菓子 西湖(せいこ)」の「巻きたて西湖」は同店限定

さらにwakuden MORIでは、桑の実や冬菇どんこシイタケなど和久傳ノ森で採れた食材を取り入れた料理や無農薬の和久傳米を土鍋で炊き上げたご飯、宮津産の真鯖を使用した鯖寿司など多彩な美食が洗練された空間で楽しめ、森に隣接する「久美浜工房」では、一つひとつ手作業でおもたせをつくる様子を回廊から見学できる。

自然の中に食とアートが溶け込んだ森に浸る時間は、俗世の雑事を忘れさせてくれる。

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「工房レストランwakuden MORI」の中にはおもたせのショップも併設

和久傳ノ森
住所|京都府京丹後市久美浜町谷764
休館日|火曜(祝日の場合は翌日休)、年末年始
https://mori.wakuden.kyoto

森の中の家 安野光雅館
Tel|0772-84-9901
開館時間|9:30〜17:00 (最終入館16:30)

工房レストラン wakuden MORI(モーリ)
Tel|0772-84-9898
営業時間|10:00〜18:00 (L.O.17:30)

text: Ryosuke Fujitani photo: Kousaku Kitajima

2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」

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