ART

《東京国立博物館》
日本で最も長い歴史を誇る博物館【前編】

2022.10.18
《東京国立博物館》<br><small>日本で最も長い歴史を誇る博物館【前編】</small>
国宝 孔雀明王像
画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

2022年に創立150周年を迎えた東京国立博物館。国宝指定の美術工芸品902件のうち、約1割となる89件の国宝を所蔵し、今秋、この国内最大の国宝コレクションを公開する特別展を開催する(会期中展示替えあり)。

≪前の記事を読む

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 埴輪 挂甲(けいこう)の武人
古墳時代・6世紀
群馬県太田市飯塚町出土
高さ1305㎜/最大幅395㎜
展示:通期

古墳時代の武人のいでたちがわかる
唯一の国宝人物埴輪

全身を甲冑で固め大刀と弓矢をもつ埴輪で、6世紀の東国武人の様子を伝える。出土地周辺では似た特色をもつ埴輪が数体出土しており、熟練した職人集団がいたと推測される

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 扁平鈕式銅鐸(へんぺいちゅうしきどうたく)
弥生時代・前2〜前1世紀
伝香川県出土
総高427㎜/鐸身327㎜/裾径219㎜/裾径176㎜/重量3294g
展示:通期

弥生時代の人々の暮らしぶりを伝える
青銅製の鐘で、当時は内側に舌(ぜつ)と呼ばれる棒を吊るし、全体を揺らして音を鳴らしていた。トンボ、シカを射る人、杵で臼をつく人などが描かれている

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 灌頂幡(かんじょうばん) 
飛鳥時代・7世紀
全長約5100㎜ 展示:通期

天皇の法要や寺院完成の儀式で用いられた旗
「幡」とは仏教の儀式で用いる旗のこと。灌頂幡は特に豪華な仕様で、重要な儀式で使われた。本体には仏や天人などの文様が施され、飛鳥時代の卓越した金工技術が見て取れる

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 孔雀明王像
平安時代・12世紀
絹本着色 1479×989㎜
展示:10月18日〜11月13日

繊細な截金(きりかね)技法と
洗練された色彩に注目

密教において雨を祈り、災厄を除く孔雀経法の本尊・孔雀明王。憤怒の相で表されることが多い明王だが、珍しく慈悲の相で優美に描かれた曼荼羅風の仏画

日本最大の国宝コレクションがある!

東京国立博物館の収蔵品は約12万件に上り、このうち89件が国宝、648件が重要文化財に指定されている。そもそも国宝とは、国が指定した重要文化財の中でも、さらに世界文化の見地から特に価値の高いものが指定、保護されている。美術工芸品は保護の観点から長期間の公開が難しく、同館では定期的に展示替えが行われるため、「常設展」ではなく「総合文化展」として、収蔵品と寄託品で構成された約3000件を展示。ほぼ毎週、いずれかの展示室で展示替えが行われ、その数は年間300回を超えるという。つまり訪れるたびに、新たな美術工芸品との出合いを約束してくれるのだ。

それゆえ89件の国宝すべてをひとつの展覧会に集結させることは極めて困難なのだが、創立150周年を迎えた今年、研究員が総力を結集。所蔵する全国宝を公開するなど、同館150年の歴史を紹介する特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催される。

この特別展では、絵画、書跡、法隆寺献納宝物、考古、漆工、刀剣などの国宝89件をはじめとする名品の数々と、150年の歩みを物語る関連資料を通じて、東京国立博物館の全貌を紹介。会期中、一部作品に展示替えがあるも、3回足を運べば89件の国宝を網羅して見ることができる。

特別展をよりいっそう楽しむため、あらかじめ「総合文化展」を鑑賞し、日本美術への見識を深めておくのもいいだろう。たとえば本館2階では縄文時代の土器から、平安時代の仏教・宮廷美術、鎌倉〜室町時代の水墨画、茶の美術、安土桃山時代の障壁画、江戸時代の浮世絵や衣装まで、時代を追って「日本美術の流れ」を展示。本館1階に降りると彫刻、刀剣、漆工、近代の美術といったジャンル別の展示があり、日本美術の流れを知り、その奥深さにグイグイと引き込まれていくはずだ。

文化財は先人が残してくれた宝。本物の国宝・重要文化財を鑑賞することで、時代を超越する先人たちの想いを感じ、受け継ぎたい。

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)
飛鳥時代・7世紀
全高499㎜/胴径189㎜
展示:通期

古代シルクロードの美を表した
古代工芸の傑作

この水瓶のかたちは、ササン朝ペルシャを源流とする。胴には中国唐時代と朝鮮の百済の美術に影響を受けた天馬が刻まれ、日本で表現された天馬の最も古い絵柄である

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 匙(さじ)
中国・唐時代または統一新羅もしくは奈良時代・8世紀 
長さ(左)135㎜/(中)125㎜/(右)118㎜
展示:通期

聖徳太子が仏教解説書を
書く時に用いた文房具!?

3本の匙は蓮の花びら、ひょうたん、柳の葉のかたちをしており、聖徳太子が法華経など仏教の経典の解説書を書いたときに使用したとされる。奈良時代の見事な金工技術が発揮された名品

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 秋冬山水図(しゅうとうさんすいず)(冬景)
雪舟等楊筆
室町時代・15〜16世紀
本紙 各縦477×横302㎜
展示:10月18日〜11月13日

雪舟が描いた山水画の傑作
3本の匙は蓮の花びら、ひょうたん、柳の葉のかたちをしており、聖徳太子が法華経など仏教の経典の解説書を書いたときに使用したとされる。奈良時代の見事な金工技術が発揮された名品国宝 太刀 銘 吉房(岡田切)

画像出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp)

国宝 太刀 銘 吉房(岡田切)
福岡一文字吉房
鎌倉時代・13世紀 刃長691㎜/反り21㎜
展示:通期

織田信長の次男・信雄が愛用
13世紀に岡山県で栄えた一文字派の代表作。織田信長の次男・織田信雄が1582年の合戦の際、家臣の岡田重孝をこの太刀で切ったということから「岡田切」と呼ばれている

この秋、東京国立博物館が所蔵する
国宝89件をすべて公開!

東京国立博物館の開館以来はじめて、所蔵する国宝89件すべてを公開(会期中展示替えあり)。第1部では国宝の展示、第2部では150年の歩みと今後の展望を、収蔵作品と関連資料を通じて紹介していく

【展覧会予定】
東京国立博物館創立150記念
特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」

10月18日(火)〜12月11日(日)
場所:東京国立博物館平成館特別展示室
休館日、開館時間、入館方法は展覧会公式サイトでチェック
https://tohaku150th.jp

 

≫次の記事を読む
 
  

text: Nao Ohmori photo: Shinsuke Matsukawa
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

東京のオススメ記事

関連するテーマの人気記事