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隈研吾氏が手がけた
英国アンティーク博物館《BAM 鎌倉》
次世代にアンティークの世界を発信

2022.4.14
隈研吾氏が手がけた<br>英国アンティーク博物館《BAM 鎌倉》<br><small>次世代にアンティークの世界を発信</small>

英国アンティーク博物館「BRITISH ANTIQUE MUSEUM KAMAKURA(BAM)」は2022年9月23日(金・秋分の日)に、次世代にアンティークの世界を伝え、物や人を引き継ぐ素晴らしさ、大切さを多くの方に感じ取ってもらいたいというメッセージが込められたミュージアムを鎌倉にオープンする。隈研吾氏が建築を担当し、館内では発起人である土橋氏が⾧年をかけて集めた100年以上の歴史を持つ本物の英国アンティークを展示。時代ごとのアンティークを設えたフロアには、シャーロック・ホームズの部屋の再現があるほか、グランドフロアには日本初のロンドンタクシーを用いた「ブラックキャブカフェ」が登場する。

建築家
隈研吾(くま・けんご)
東京大学建築学科大学院修了。1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代にアフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで30か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、ほか)、国内外でさまざまな賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

​BAM鎌倉 館長/発起人
土橋正臣(どばし・まさおみ)
1966年生まれ。長崎大学薬学部大学院修了。ファイザー中央研究所の研究員を経て、2007年 株式会社ファーマブリッジを設立。また、大学院卒業後に初訪問したイギリスの文化に衝撃を受け、2012年鎌倉アンティークスを設立。英国アンティーク輸入やイギリス関連イベントのコーディネートを手がける。日本一のロンドンタクシーコレクターとして、本物のブラックキャブを年代別に所有する。また、古き良きものを継承する啓蒙活動の一環「​No Antique No Life」として、長年の夢であった「英国アンティーク博物館」 を鎌倉に建設。

鎌倉と英国との繋がり

鎌倉と英国の繋がりとして、ビクトリア時代に英国で始まったナショナル・トラストの運動がある。それは歴史的に意味のある土地や資産を寄付により永久に保存するというものであり、多くの景勝地が遺産として保持されてきた。

日本で初めてナショナル・トラストの思想が導入された場所が鎌倉。1964年、鶴岡八幡宮の裏山の開発計画が持ち上がった。自然を守るために英国のナショナルトラストを知る作家・大佛次郎氏が立ち上がり、チャリティーを募って、その開発を防いだ。それがきっかけとなり、全国に古都保存法が成立して多くの歴史的に重要な自然や建築物が守られている。英国の古き良きものを大切に引き継ぐ想いと『鎌倉』が結びついて、今なお、素晴らしき文化遺産が継承されている。

土橋がイギリスのアンティークを集めるきっかけ

ビクトリアルーム ※イメージ

今から30年ほど前の90年代初頭、日本はバブルの絶頂期であり、人も物も経済の波に飲み込まれていた時代。そんな時に私の妹がイギリス留学していたホームステイ先に、たまたま遊びに行ったことに始まる。

辿り着いたその街は、ロンドンから北へ車で1時間半ほど行ったところにある、ストラトフォード・アポン・エイボンという田舎町。シェイクスピア生誕の地であり、築百年、二百年というクラシカルな家が立ち並び、落ち着いた風景が広がっていた。そこでお世話になったご自宅は赤い扉が印象的なジョージアン様式の家。そのご主人はいかにも英国紳士で、ジェントルマンズクラブも案内してくれ、そこで見た本物の英国アンティークの素晴らしさに衝撃を受けた。いまでも大切に使われ引き継がれていくモノの姿は美しく、文化を感じ、当時の日本で失っていた心を感じた。アンティークとは人が造ったもので、100年以上経過したものと知ったときに、アンティークを集めて引き継ぐことは、同時に人の想いも引き継ぐことであると気づいた。そこからアンティーク探しの旅が始まった。

隈研吾氏デザインによる建築


隈研吾氏のデッサン

隈研吾氏は2018年、英国スコットランド初の巨大なデザインミュージアムV&A ダンディをデザインした。その博物館はスコットランドの崖を再現した土地に根付いたデザインとなっている。そこには、日本文化の影響を受けた建築家チャールズ・レニーマッキントッシュの茶室(ティールーム)が再現されている。つまり英国の大きな博物館のメインとなる展示物が東洋のデザインであり、それを建てた建築家が日本人の隈研吾であるという事実は重要である。また、隈氏はV&A ダンディを建設したその翌年にオリンピック新国立競技場を建設している。隈氏はかつて、「小さな建築」という本を出版している。そこに示された小さな単位とは「茶室」。小さなものが重なりあい、大きなものを形作っているという考え。そこで、今回、隈氏が、英国の大きな博物館と鎌倉の小さな博物館の対比をすることで、この概念がなお一層引き立つのではないかと考えた。

100年以上経過したアンティークをふんだんに取り入れたデザイン
空間デザインは、フロアごとにテーマを決めて、時代背景にあわせた空間が造られる。特にヴィクトリア時代を中心に、来館者が直感的にアンティークの素晴らしさを体験できるように構成している。その時代に登場したシャーロックホームズの部屋を再現したり、グランドフロアには日本初のロンドンタクシーを用いた「ブラックキャブカフェ」が登場する。

外装ファサード
鎌倉彫をイメージした刀痕を表現した木を全面に採用し、純粋さを表現するために正面には窓をなくした。階段部分 手摺部分にはアンティーク材を使用。壁面はすべてアンティーク絵画で埋め尽くされる。

・1階 日本初のロンドンタクシーを用いた「ブラックキャブカフェ」が登場
・2階 ジョージアン時代(1714~1830年)を中心に、シルバー、家具を展示
・3階 コナンの生きた時代(1859~1930年)。小説シャーロックホームズの部屋を再現
・4階 ヴィクトリア時代(1837~1901年)を中心に、蓄音機、ピアノ、ハープなどを展示


隈研吾氏のイメージスケッチ

隈研吾氏からのメッセージ
英国と日本の繋がりは深く、例えばスコットランド出身のチャールズ・レニー・マッキントッシュという建築家は、日本の建築デザインに影響をうけティールームを造った。そのデザインはまさに日本そのものであり、私が2018年に設計デザインしたV&A Dundee のデザインミュージアムに再現されている。そこには英国アンティークと近代的な電気自動車が展示されており、まさにOLD&NEW という時代を超えた融合ともいえる。

今回、鎌倉の歴史ある段葛の参道に建つ英国アンティーク博物館BAMには、土橋氏の集めた100年以上の歳月を吸い込んだ純粋なアンティークが並ぶ。そう言った意味で建物のデザインは、どこまでも純粋でなければならないと考えた。幾度となく熟考を重ねた結果、すべての窓を無くしシンプルに整え、鎌倉の伝統文化を象徴する鎌倉彫にインスピレーションを受けたファサードを採用した。鶴岡八幡宮の裏山、御谷(おやつ)から連なる里に根差したBAM建築は、鎌倉で大切に引き継がれる文化施設として愛されることになるだろう。

鎌倉へ訪れた際にはぜひ、イギリスのアンティークを展示するミュージアム「BAM鎌倉」と、隈研吾氏が手がけた建築美を楽しんでみてはいかが。

英国アンティーク博物館 BAM鎌倉
オープン日|2022年9月23日(金・秋分の日)
住所|神奈川県鎌倉市雪ノ下1-11
階数|地上4階
https://www.bam-kamakura.com/

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