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《東京国立博物館》
日本で最も長い歴史を誇る博物館【序章】

2022.10.18
《東京国立博物館》<br><small>日本で最も長い歴史を誇る博物館【序章】</small>

2022年に創立150周年を迎えた東京国立博物館。「文化財の保存と公開」を両立させることを使命とし、先人から受け継いだ文化財を守り、研究し、日本そして世界へ伝える展示を行ってきた。150年かけ収集された日本最高峰の文化財を所蔵する、日本を代表する博物館とは?

本館をはじめとする計6館で
貴重な文化財を展示

東洋の美の世界を堪能できる東洋館

1872年、湯島聖堂の大成殿で文部省博物局による最初の博覧会が開催された。東京国立博物館の起源となる。博物館は国民に新しい知識や技術を広める勧業政策も担っており、イギリスのサウス・ケンジントン博物館(現ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)をモデルとした、動物園や植物園、書籍館を含む総合博物館が構想されていたという。1876年には上野公園が博物館所管となり、1882年、上野公園内にイギリスの建築家、ジョサイア・コンドル設計による博物館新館(旧本館)が開館。以降、関東大震災による損壊や太平洋戦争を避けるための美術品疎開、大規模な組織改変など、幾多の時代の変遷を経て、今日に至っている。

現在、展示館は計6館。本館では日本美術、平成館では日本の考古、東洋館では東洋美術、法隆寺宝物館では法隆寺献納宝物を展示するほか、表慶館は特別展や催し物会場として利用され、黒田記念館では洋画家・黒田清輝の作品を展示している。展示作品のみならず建築や庭園など見どころが多いため、1日ですべてをめぐるというのではなく、ぜひ時間をゆっくりかけて、文化財との対話を堪能したい。

洋画家・黒田清隆の作品を展示する黒田記念館

【東京国立博物館年表】
1871(明治4)年
文部省に博物局設置
1872(明治5)年
湯島聖堂で文部省博物館として最初の博覧会を開催(博物館の創立)
1873(明治6)年
ウイーン万国博覧会参加のための事務局に博物館・書籍館が合併。内山下町(千代田区内幸町)に移転
1875(明治8)年
博覧会事務局が内務省所管になり、博物館と改称
1881(明治14)年
内務省所管から農商務省所管に。上野公園内旧寛永寺本坊跡地にコンドル設計の博物館新館(旧本館)が竣工。第二回内国勧業博覧会で美術館として使用
1882(明治15)年
旧本館開館。付属動物園、浅草文庫とともに一般に公開。法隆寺献納宝物を収蔵。旧十輪院宝蔵(校倉)を移築
1886(明治19)年
宮内省の所管になる
1889(明治22)年
帝国博物館となる(総長・九鬼隆一、美術部長・岡倉天心)
1900(明治33)年
東京帝室博物館に改称
1901(明治34)年
1900年のパリ万国博覧会出品作品による第1回の特別展開催
1909(明治42)年
表慶館開館(大正天皇の御成婚記念)
1917(大正6)年 
森鷗外、総長に就任
1923(大正12)年
関東大震災で旧本館が損壊
1924(大正13)年
上野公園・動物園を東京市に下賜(昭和天皇の御成婚記念)。表慶館で展示再開
1925(大正14)年
自然史関係の収蔵品を東京博物館(現在の国立科学博物館)などに引き渡す
1938(昭和13)年 
現在の本館開館
1941(昭和16)年
収蔵品の疎開はじまる。太平洋戦争開戦
1945(昭和20)年
空襲激化のため、3月観覧を停止。太平洋戦争終結
1946(昭和21)年 
3月観覧を再開
1947(昭和22)年
宮内省から文部省に移管。国立博物館と改称
1952(昭和27)年
東京国立博物館と改称
1964(昭和39)年
法隆寺宝物館(旧館)が収蔵庫兼展示施設として開館
1968(昭和43)年
文化庁に移管。東洋館開館
1974(昭和49)年
モナ・リザ展開催。過去最高入場者151万人を記録
1984(昭和59)年
資料館開館
1999(平成11)年
法隆寺宝物館(新館)開館。平成館開館(今上陛下御成婚記念)
2013(平成25)年 
東洋館リニューアルオープン
2015(平成27)年
黒田記念館、平成館考古展示室リニューアルオープン

 

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text: Nao Ohmori photo: Shinsuke Matsukawa
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

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