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富山・氷見の
伝統発酵文化「こんか漬け」と
ローカルグルメを楽しむ旅
ferment books 編集者 ワダヨシ

2022.8.14
富山・氷見の<br>伝統発酵文化「こんか漬け」と<br>ローカルグルメを楽しむ旅<br><small>ferment books 編集者 ワダヨシ</small>

いまからワクワクが止まらない夏の旅計画。日頃から全国各地を拠点に活躍中の気になるアーティスト9人にも、この夏、旅に出るならどこへ? とうかがってみました。今回は、編集ユニットferment booksの編集者、ワダヨシさんに、夏旅スケジュールを伝授してもらいました!

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〈お話をうかがった方〉
ワダヨシ(
わだ・よし)
横浜市生まれ。編集ユニットferment books編集者。『サンダー・キャッツの発酵教室』、『フードペアリング大全』、『発酵はおいしい!』などの書籍を手掛ける。近作はタイ料理家・下関崇子さんとのZINE『ガパオ』

富山の伝統発酵文化
「こんか漬け」の樽上げに合わせて氷見へ

「サカナとサウナ」のカルパッチョ。氷見の地魚2種盛り

今年、もし夏休みがたっぷり取れたなら、富山県氷見市の「①柿太水産」に駆けつけ、名物こんか漬けの樽上げの様子を見届けて、新物のこんかいわしで一杯やりたい。「こんか」とは米ぬかのことで、氷見の漁港で揚がった鰯、鯖、ブリなどをぬか漬けにしたものを「こんか漬け」という。魚のぬか漬けは広く北陸地方の名物でもあり、福井では鯖のぬか漬けを「へしこ」と呼ぶ。冬場に脂ののった魚を仕込み、半年ほど発酵・熟成させ、梅雨明けに取り出す作業を行う。それが樽上げだ。

こんかいわしは、ぬかの付いたまま少し炙ってから口に入れて、発酵で軟らかくなった魚の身をほどくように舌にまとわせる。乳酸発酵からくるよいあんばいの酸味と、熟成で生まれたたっぷりの旨みがじわーと広がっているうちに、すぐ近所の「②髙澤酒造場」が造る「利右エ門」の冷やしたのを、クイっとやる。シュワっと発泡した、少し濁りもあってフレッシュな、それでいてアルコール度数の結構高い(19度)日本酒が、こんかいわしの風味と混然一体となって、口の中、頭の中はもう氷見一色。

そんな幸せな妄想が膨らんでしまうのは、2022年が特別な年だから。100年以上の歴史をもつ柿太水産の6代目が、その主としてはじめて樽上げするこんか漬けなのだ。

今年の春、柿太水産を父から継いだ柿谷さんは、こんか漬けづくりも受け継いだ。最初のうちは、仕上がりが思わしくないときもあり、一時期はやめてしまおうかという気持ちになったこともあったそうだ。でも、取材で訪れた人や、飲食店を営む仲間に励まされて前進し続けることを決意。発酵容器を扱いやすいポリタンクに替えることもできたが、発酵学の大家に「使い続けるべき」と言われ、古い木桶の伝統も守っている。

自分的には、柿太水産のこんか漬けに使われるぬかにも思い入れがある。黒部市の米農家「濱田ファーム」のもので、実は我が家でも、毎年新米の時期に濱田ファームから玄米を届けてもらい、自宅で精米して土鍋で炊いて食べている。もちろんできたぬかは、キュウリなどのぬか漬けに使う。

柿太水産では樽上げイベントも行われるそうなので、うまく日程が合えば、大勢の柿太ファンたちと交流できるかもしれない。

「髙澤酒造場」のアケボノライト。左の「有磯曙 大漁旗」も定番

さて、東京に持ち帰るこんか漬けと一緒にやる日本酒も入手すべし。前述の髙澤酒造場は、柿太水産から徒歩数分。一般の蔵見学は受け付けていないが、販売所で蔵のスタッフの解説を聞きながらお酒を購入できる。

個人的マストバイな利右エ門のほか、白麹仕込みの「アケボノライト」もゲットしたい。7代目蔵元杜氏の髙澤龍一さんによれば、夏に最高に美味しくなる氷見の岩牡蠣とのペアリングがおすすめなのだとか。ドライな白ワインみたいな味わいで、富山出身の漫画家である堀道広さんによるラベルのイラストもキュート。こんな富山ざんまいもうれしい。

もし余裕があれば、氷見の旨いものめぐりを時間ギリギリまで楽しみたい。富山カレーカルチャーの立役者である仲有紀さんの営む「③ひみつカレー」、サウナを愛する魚料理人・昆布ちゃんの店「④サカナとサウナ SEAFOOD STAND」、氷見のクラフトビール・メーカー直営のタップルーム「⑤ビアカフェ・ブルーミン」などなど、氷見の食シーンは見どころたくさん。そして、さらなるディープ氷見を味わいたいなら、昭和レトロな「⑥喫茶モリカワ」で、日替わり定食もよいかも。柿谷さんもおすすめの、これぞまさしくリアル・ローカル氷見ランチだ。

「柿太水産」の鰯のこんか漬け

旅のスケジュール

①柿太水産
住所|富山県氷見市北大町3-37
Tel|0766-74-0025
営業時間|8:00〜15:00 
※電話、メールでの予約のみ受付
定休日|水・土・日曜、祝日
www.kakita-himi.net

②髙澤酒造場
住所|富山県氷見市北大町18-7
Tel|0766-72-0006
営業時間|9:00〜18:00
定休日|日曜
https://ariiso-akebono.jp

③ひみつカレー
住所|富山県氷見市朝日丘3878-1(7月10日より移転オープン)
Tel|0766-74-6616
営業時間|11:00〜18:00
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休)
facebook.com/himitsu.curry

④サカナとサウナ SEA FOOD STAND
住所|富山県氷見市中央町8-28 break内
営業時間|11:00〜14:00、18:00〜22:00、日曜は11:00〜14:00
定休日|月・火曜
Instagram|@sakana_to_sauna

⑤ビアカフェ・ブルーミン
住所|富山県氷見市比美町24-10
Tel|0766-54-6596
営業時間|金曜18:00〜21:30(L.O.21:00)、土曜11:30〜14:30(L.O.14:00)、18:00〜21:30(L.O.21:00)、日曜、祝日11:30〜14:30(L.O.14:00)
定休日|月〜木曜
http://brewmin.com

⑥喫茶モリカワ
住所|富山県氷見市中央町11-29
Tel|0766-72-0784
営業時間|9:00〜20:00
定休日|水曜(月2回)

 

屋久島の森を五感で感じ
心身ともに癒される旅

 
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illustration: Saki Machida
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