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L’évo<レヴォ>富山県利賀村
地方料理は進化を遂げる【前編】

2021.4.6
L’évo<レヴォ>富山県利賀村<br>地方料理は進化を遂げる【前編】

地産地消がうたわれて久しいなか、かつてここまで土地と料理が融和したレストランがあったでしょうか。2020年12月末、富山県の山奥にある人口500人の村に移転オープンしたミシュラン星つきレストラン「L’évo」では、店名の通り、究極に「進化」を遂げた富山尽くしの料理を堪能することができます。「富山が自分の料理観を変え、利賀村(とがむら)が価値観をさらに変えてくれた」と語るのは、オーナーシェフの谷口英司さん。富山に惚れ込み、利賀村に惚れ込んだ、谷口シェフの理想がかたちになったこのレストランには、とっておきの体験が待っています。今回は、谷口シェフに伺った利賀村、L’évoの魅力を3つの記事でご紹介します。

谷口英司(たにぐち・えいじ)
1976年、大阪府生まれ。Dotok代表取締役・L’évoオーナーシェフ。高校卒業後に就職したホテルでフランス料理と出合い、国内外で修業。2010年に富山に移り、’14年に「L’évo」を開店。『ゴ・エ・ミヨ東京・北陸2017』の「今年のシェフ賞」、『ミシュランガイド富山・石川2016特別版』で一つ星を獲得。’20年、利賀村に「L’évo」を移転

原風景が残る利賀村で、
真の地産地消を実現

レストランのテーブルやうつわは、作家や職人とコラボレーションしたフルオーダー品だ

富山駅から車で約1時間半、除雪車によって積まれた雪が、路肩に小山をつくる山道をひたすら上っていく──。新生L’évoが建つ利賀村は、岐阜県に隣接する標高1000m級の山々に囲まれた谷あいにある。富山県内でも指折りの豪雪地帯で、県内からのアクセスも決して良好とはいえない。しかし、だからこそ日本の原風景ともいえる景色が残り、豊かな食材と自然とともに生きる山里の暮らしが息づいている。

「山菜を採りに来て、秘境感が気に入りました。ここでなら、薪を燃やしても炭をおこしても誰にも迷惑をかけない。思いきり、好き放題に料理ができると思いました」。こう話すのはオーナーシェフの谷口英司さんだ。約10年前に富山に来て、富山市内でフレンチをベースとしたイノベーティブ・レストラン「L’évo」を成功させた。

雪深い山奥にある利賀村の中でも、約45年前に無人となった集落。この僻地に革新的なレストランが現れた
国道からL’évoに続く小道に建つ看板。ここからはじまる唯一無二の体験に期待感が高まる

L’évoの特徴は、食材の生産者をはじめ、うつわや家具の作家・職人たちとの交流を深め、料理や店の大部分を“メイド・イン・富山”で統一していることだ。谷口シェフは「地域を知れば知るほど、料理が進化する。それを教えてくれ、僕の料理観を180度変えたのが富山でした」と振り返る。

そんな谷口シェフが、さらに信念をもって選んだ地が利賀村だ。新生L’évoは、約7500㎡の敷地にレストラン棟、コテージ、サウナ棟、パン小屋など6棟が建つ。谷口シェフが料理人ならではの視点で土づくりから手掛けた農園で野菜を育て、天然の山菜やキノコを採り、パンを焼き、信頼する猟師が撃ったジビエをさばき熟成させる……。料理や洗い物に使う水も裏山から引いている。つまり、真の意味での地産地消が実現するのだ。

さらに、谷口シェフは言う。「利賀村には、郷土料理や食材保存の知恵があります。まだまだ知らない食材もありますし、知るほどに村が好きになっています。ここでさらに進化するL’évoの料理をぜひ食べに来てください」

早朝に出合ったカモシカ。深い山に囲まれたL’évoの周囲には、多様な野生動物が暮らしている

 

L’évo<レヴォ>地方料理は進化を遂げる

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L’évo
住所|富山県南砺市利賀村大勘場田島100
Tel|0763-68-2115
客室数|貸し切りコテージ3棟
レストラン開始時間|ランチ12:00/12:30、ディナー18:00/19:00 ※要予約。提供はコース料理のみ。2万円(税・サ別)
定休日|水曜 ※8月上旬に夏季休業あり
コテージ宿泊料|タイプ別に4万円、5万円、7万円(税・サ別、朝食別途3500円)
IN|15:00 OUT|11:00
Wi-Fi|レストラン棟のみあり ※客室は春頃に開通の計画
施設|レストラン、ラウンジ、サウナ(宿泊者限定)
アクセス|新幹線/富山駅から車・タクシーで約1時間30分、新高岡駅からJR高山本線で越中八尾駅まで30分の後車・タクシーで約1時間
飛行機/富山空港から車・タクシーで約1時間10分
車/富山ICから約1時間15分、砺波ICから約1時間、福光ICから約45分、五箇山ICから約30分
※宿泊者に限りJR越中八尾駅まで送迎可(別途料金)

text: Tomoko Honma photo: Atsushi Yamahira
Discover Japan 2021年4月号「テーマでめぐるニッポン」

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