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富山県南砺市利賀村「L’évo レヴォ」
一軒のレストランが地域を変える【後編】

2021.3.18
富山県南砺市利賀村「L’évo  レヴォ」<br>一軒のレストランが地域を変える【後編】

ミシュラン星つきレストラン「L’évo(レヴォ)」が、2020年12月末、人口わずか500人の南砺市利賀村に移転オープンしました。山奥にある利賀村は、富山の中でも指折りの豪雪地帯。周囲からは「なぜ利賀村で?」、「絶対に無理だ」と、言われ続けてまで、なぜL’évoは利賀村に向かったのか?裏側には、料理人としての理想をかたちにすべく挑戦し続ける谷口英司シェフの姿と、シェフの料理と想いに突き動かされた、人々の人生がありました。新生「L’évo(レヴォ)」の物語、後編です。

≪前編を読む

澤 千恵(さわ・ちえ)
1980年、富山県高岡市生まれ。Dotok専務・L’évo農場長。東京大学在学中から、全国の農山村再生の現場を歩き、農業経験を積む。2009年、博士(農学)取得。東日本大震災を機に富山に帰郷し、富山県職員として働く。L’évoの料理に感銘を受け、’20年に県を退職し、転身

何もないところにゼロから建てる試練

稀代の料理人・谷口シェフの理想のレストランを実現するべく、利賀村に移転オープンを果たしたL’évo。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。谷口シェフは苦笑交じりに「そもそも一人の料理人がお金を融資してもらうのは、並大抵のことではありません。けんもほろろに融資を断られて頭を抱えたこともあります。それに、いまの僕は日本で一番多くの借金を背負っている料理人かもしれません」と言う。

L’évoは利賀川を望む田島と呼ばれる集落の約7500㎡の敷地に、レストラン棟、コテージ棟、サウナ棟、パン小屋などの合計6棟の建物を新設した。豪雪地帯のため、屋根の雪が落ちやすいように「雪割」と呼ばれる、この地方特有の屋根の形状を採用したり、公的な水道が敷設されていないため、山から引いた水を一時的にためておく貯水槽を設置したりと、山里に馴染むシンプルなデザインながらさまざまな仕掛けを施してある。

「移転の準備をはじめた当初、建築の予算だけでも3億円と聞き、シェフの描くプロジェクトの規模感に驚きました」と振り返るのは、L’évoの経営にかかわる業務全般を担当する澤千恵さん。設計士から「この場所で計画通りの建物をつくるなら、どうしても費用は通常よりもかかる」と言われた澤さんは、過去に学んだある制度のことを思い出した。

プロジェクトを成功させる
強い思いでチャレンジ

移転プロジェクトの資料や、備忘録としてアイデアを書き留めたノート。「夢を実現した20年後のL’évoを見届けたい」と澤さんは言う

その制度とは、「スーパーL資金」。農業者の中でも「認定農業者」だけが受けられる融資制度だ。「新しいL’évoには農園をつくり、自分たちで育てた野菜で料理をつくりたい」というシェフの想いともマッチさせることができると考えた。その後、Dotokは農業法人格を取得し、さらに「認定農業者」の認定を受けた。

「耕作放棄地の増加や農業者の減少は国としても大きな問題ですから、農業者や農業法人は、金融機関から一般的な企業よりも有利な金利や限度額の融資を受けることができるのです。特に『認定農業者』に認定されると、重点的な支援措置が受けられるようになります」と澤さんは解説する。

もちろん簡単なことではない。事業の細部にわたる綿密な計画書を作成し、膨大な書類を提出しなければならない。澤さんが農業や農村政策を学んでいたという属人的なアドバンテージはある。だが何よりも、澤さんの「L’évoの利賀村移転というプロジェクトを成功させたい。村のおばあちゃん、おじいちゃんがつくった農作物をL’évoのテーブルにのせたい」という強い気持ちが、その実現を推し進めた。

 このほか、県や市など行政の補助金の情報を積極的に収集し、空き家改修や企業誘致など使えそうな助成金をL’évoのプロジェクトに組み込んでいったという。谷口シェフは「海外では交通が不便な田舎にも著名なレストランがありますが、日本では、地方の食はまだまだ『ご当地料理』や『B級グルメ』なんだと思います。正直なところ、しんどいこともたくさんありますよ」と笑いつつも、こう断言した。

「料理人や生産者、地域の職人・作家が一体となってその地域の文化を発信していけば、必ずローカルのイメージは変わります。そうやって、エル・ブジがスペインを、ノーマがデンマークを美食の国にしてきた。まずはチャレンジしようと思うことが大切です。そこからすべてがはじまりますから」。

L´évo
住所|富山県南砺市利賀村大勘場田島100
Tel|0763-68-2115
客室数|貸し切りコテージ3棟
レストラン開始時間|ランチ12:00/12:30、ディナー18:00/19:00 ※要予約。提供はコース料理のみ。2万円(税・サ別)
定休日|水曜 ※8月上旬に夏季休業あり
コテージ宿泊料|タイプ別に4万円、5万円、7万円(税・サ別、朝食別途3500円)
IN|15:00 OUT|11:00
Wi-Fi|レストラン棟のみあり ※客室は春頃に開通の計画
施設|レストラン、ラウンジ、サウナ(宿泊者限定)
アクセス|新幹線/富山駅から車・タクシーで約1時間30分、新高岡駅からJR高山本線で越中八尾駅まで30分の後、車・タクシーで約1時間
飛行機/富山空港から車・タクシーで約1時間10分
車/富山ICから約1時間15分、砺波ICから約1時間、福光ICから約45分、五箇山ICから約30分 ※宿泊者に限りJR越中八尾駅まで送迎可(往復6000円)

text: Tomoko Honma photo: Atsushi Yamahira


「L’évo レヴォ」の物語

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