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屋久島の森を五感で感じ、
心身ともに癒される旅
写真家 上田優紀

2022.8.15
屋久島の森を五感で感じ、<br>心身ともに癒される旅<br><small>写真家 上田優紀</small>

いまからワクワクが止まらない夏の旅計画。日頃から全国各地を拠点に活躍中の気になるアーティスト9人にも、この夏、旅に出るならどこへ? とうかがってみました。今回は、エベレスト登頂にも成功した写真家、上田優紀さんに、夏旅スケジュールを伝授してもらいました!

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〈お話をうかがった方〉
上田 優紀(うえだ・ゆうき)
1988年、和歌山県生まれ。2016年よりフリーランスの写真家として活躍し、これまでに約40カ国を訪問。世界中の極地や僻地を旅しながら撮影を行っている。’21年にはエベレスト登頂にも成功。
https://yukiueda.jp

屋久島の森を五感で感じ、
心身ともに癒される2泊3日

神秘的な雰囲気の「苔むす森」

屋久島に行けるのは屋久島に呼ばれたときだけ」。こんな話を聞いたことありますか? 樹齢何千年といわれる大樹や、まるで太古の神々が暮らしているかのような苔むす森。都会の喧騒を忘れて、そんな神秘的な自然を旅したい! なんて長年思っているのに、なかなかタイミングが合わない……。そんな友人が僕の周りにたくさんいます。そんな人はまだ屋久島に呼ばれてないんですって。なのに僕、実はもう5回も行ったことがあるんです。よっぽど屋久島に気に入られたのか、もしくは相当都会に疲れて自然を求めているのか。そういえばもう2年も行ってないな。この夏、また行きたくなってきました。

遠く離れたイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。乗り継ぎも合わせて、東京から飛行機で約3時間。朝一の便で出ると午前9時には到着します。レンタカーを借りて、まずは明日からの準備をしなければ。トレッキングの道具なんて持ってきてない? 大丈夫。屋久島ではレインウェアやトレッキングブーツ、バックパックもレンタルできるのでご安心を。僕はいつもレンタルショップ「①山岳太郎ショップ」で食料とガスバーナーを買います。そうそう、今回は全身で森を感じる旅。森で夜を過ごします。テントと寝袋も忘れずに。

レンタルショップを出たら、朝も早かったのでちょうどお腹がすいてくる頃です。僕がおすすめしたいのは、「②屋久どん」のトビウオの姿揚げと屋久島うどん。お店の窓から見える海を眺めながら、やさしい出汁のうどんをすすり、トビウオの姿揚げを豪快に頭からバリバリ食べると、あぁ旅をしているなと旅情に浸ることができます。明日からはじまるトレッキングに備えて、今日はゆっくり。屋久島で泊まるホテルといえば「③THE HOTEL YAKUSHIMA OCEAN & FOREST」が僕の定番です。午後からはホテルで休んでもよし、千尋の滝を見に行くのもいいかもしれません。繰り返しますが明日は早いので、あまり夜更かしは禁物です。

翌朝は、4時半に出発です。トレッキングは白谷広場からスタート。まだ薄暗い中、森を目指して川沿いを登っていきます。早いなぁなんて思うかもしれませんが、少し歩いていると目も覚めてきます。森もそろそろ起きる時間。ひっそりとした森を歩いていると、動物たちの息遣いも聞こえてきそうです。早起きは三文の徳。運がよければ、ヤクシカもひょっこり顔をのぞかせてくれるかもしれません。1時間半ほど歩くと苔むす森に到着。ここで長めの休憩をとりましょう。数百種類の苔に囲まれて、前も後ろも右も左も緑に覆われた世界が広がっています。もののけ姫に出てくる森そのままの風景が、あなたの心を癒してくれることでしょう。さらに登った先にある太鼓岩からの絶景もおすすめです。

ひっそりと佇む「縄文杉」

今日の目的地である縄文杉を目指し、そこからは思う存分に樹齢何百年、何千年という木々に囲まれて、これでもか! というほど深い森をひたすら歩いていきます。もし疲れたら好きなときに、好きなだけ休んでください。ゆっくり行きましょう。人生も山登りも、急ぐ必要なんてないんです。なんて、森が教えてくれているのかもしれませんね。

日が暮れる前には、縄文杉が見えてきます。もう体力はほとんど残ってないかも。けれど、だからこそ縄文杉がもつエネルギーを、全身で感じることができます。諸説ありますが、樹齢は2000年から7000年。そんな悠久の時を生きる命を前にすれば、疲れも悩みも吹っ飛んでしまいます。

今日の宿はテント。森で一泊です。それだけでもちょっとワクワクしませんか? まずは夕食。お湯だけでできるカレーやラーメンの、なんと美味しいこと。どんな最高級レストランもかなわない、世界で一番美味しいごはんと思えるから不思議です。真っ暗になったら星空観察がおすすめ。仕事終わり、くたくたに疲れて帰宅するとき、夜空を見上げることなんてないんじゃないですか? けれど今日くらいは、スマホも置いて空を見上げてみましょう。街とは違って、数えきれないほどの星々が輝いています。ここには24時間行けるコンビニも、お風呂も冷房も、便利な暮らしなんてものはありません。けれど、確かに豊かです。森があり、川の音があり、星があります。これだけあれば十分。きっと心が満たされることでしょう。

最終日も、早朝からはじまります。朝、まず起きたらコーヒーを淹れるのが、僕のルーティーン。湯を沸かし、ドリップすると芳醇な香りが立ち込めてきます。なんて幸せな時間なんでしょう。コーヒーと朝食を食べたら、テントと寝袋をたたんで下山です。まだかすみがかった森は、昨日とはまったく違って見えるので、森に飽きることなんてありません。行きと同じ道を通ってもいいですが、せっかくなら違う道を歩きたいので、帰りはトロッコ道を通って荒川登山口を目指します。朝早くに出発すれば、お昼過ぎにはゴール。お疲れさまでした。心は森に癒してもらったけど、丸2日間歩きっぱなしでクタクタになっていると思います。旅の締めは身体を癒しましょう。何をするか? そんなときは温泉に限ります。それも絶景の見える温泉。屋久島には、海が目の前に広がる露天温泉がふたつあります。僕が行くのは「④平内海中温泉」。この温泉は、1日2回の干潮時の前後約2時間だけ入浴できる温泉なので、入れるかどうかは運も関係してきます。帰りの飛行機もあるので、もしタイミングが合わなければ24時間入れる「⑤湯泊温泉」もおすすめです。夕日を見ながら温泉で身体を癒せたら、もう言うことはありません。きっと家を出たときと、まったく違った気持ちで帰宅できるはず。

屋久島に行けるのは屋久島に呼ばれたときだけ。もし、いま屋久島行きのチケットを探そうとしているなら、あなたはこの夏、屋久島に呼ばれているのかもしれません。

旅のスケジュール

①山岳太郎ショップ
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町安房410-8
Tel|0997-49-7112
営業時間|9:00〜18:30
定休日|なし(冬季は不定休)
www.andes-k.co.jp

②屋久どん
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町安房500-46
Tel|0997-46-3210
営業時間|11:00〜14:15
定休日|不定休
https://udon-noodle-shop-390.business.site

③THE HOTEL YAKUSHIMA OCEAN & FOREST
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦1208-9
Tel|0997-42-0175
料金|1泊2食付1万6500円〜(税・サ込)
www.ssh-yakushima.co.jp

④平内海中温泉
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町平内
Tel|0997-47-2953(平内公民館)
営業時間|1日2回の干潮の前後約2時間
料金|200円(こころざし)

⑤湯泊温泉
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町湯泊1714-28
Tel|0997-43-5900(屋久島町役場 観光まちづくり課)
営業時間|24時間営業
料金|200円(こころざし)

 

香川・豊島のアートと
食が融合する島旅

 
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illustration: Saki Machida photo: Yuki Ueda
Discover Japan8月号「美味しい夏へ出掛けよう!」

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