「能作」高岡に誕生したクラフトツーリズムの聖地を徹底解剖!
前編|富山観光の“ハブ”とは?
ものづくりと観光。接点がないようにも思えるこのふたつにつながりをもたせ、観光による地域創生「日本版DMO」の役割を担うハブとして2017年4月に誕生した能作の新工場。近隣都市企業との連携を深めながら行う、民間だからこそできる未来を見据えた産業観光(ものづくり×観光)とは?
オープン1ヵ月で1万人が来場した
富山観光の“ハブ”
曲がる金属「錫(すず)」の特性を生かし、国内のみならず海外でも大ヒットしている「KAGO」シリーズ。その自由な発想で躍進する鋳物メーカー能作が、400年にわたり育まれてきた鋳物の産地、富山県高岡市で「産業観光」をコンセプトにし、2017年4月にオープンした新工場。枠にとらわれず、内外の人材やノウハウを取り込みながら多様な関係者と連携することで、地域全体へ波及する産業観光のHUBとなっている。
豊かな水源と爽やかな田園に抱かれた高岡オフィスパークの一画に山々の連なりを思い起こさせるような建物。中に進むと実際に使用されている約2500種もの木型が収納を兼ねて展示されており、その迫力とデザイン性の高さに圧倒される。この木型は実際に製造に使用されているもの。時たま職人が取りに現れる様を目にすることができるだろう。
製造現場の見学「FACTORY TOUR」、鋳物製作体験「NOUSAKU LAB」、観光案内「TOYAMA DOORS」、カフェ「IMONO KITCHEN」、ショップ「FACTORY SHOP」と多くの機能を盛り込むこの新工場には、2017年のオープン直後、1ヵ月ですでに前年の総見学者数を超える1万人以上が訪れた。多くの人々が、伝統産業を支える職人技術を間近で感じる体験型施設となっている。
約4000坪の敷地に建設された新工場の役割は「もの」をつくるだけでなく「こと」、「こころ」を伝えること。なんと20年以上前から「ゆくゆくは工場見学ができる施設をつくって地元のことや技術のことを知ってもらいたい」と語っていたという代表取締役社長・能作克治氏のビジョンは地元の他企業にも引き継がれ、現在、鋳物の町として知られる高岡市が「クラフトツーリズム」のモデルケースになるまで花開いた。
施設紹介
100本のそろりがお出迎え
ENTRANCE
100周年を迎えた2016年、高岡を支えてきた職人一人ひとりに感謝し、その存在を広く紹介するために考えられたプロジェクト「100のそろり」。その全作品がエントランスで出迎える。
土産物も充実
FACTORY SHOP
定番製品はもちろん、能作本社のみで販売している限定品も多数揃える「FACTORY SHOP」。見学や体験のお土産として購入したいアクセサリーや人気製品をモチーフにしたピンバッジなども人気。
職人の技術を体感!
NOUSAKU LAB
砂を使った生型鋳造法を体験できる「NOUSAKU LAB」。能作の職人が毎日行っている造型を体感し、世界にひとつのオリジナル品の製作ができる。
地元食材を使ったメニュー
IMONO KITCHEN
富山の地元食材を使用した料理が楽しめる「IMONO KITCHEN」。能作の「の」をかたどった「のベーグル」や、能作の錫のうつわに最も映えるというサラダが人気。うつわの使い方も参考にしたい。
能作 本社工場
住所|富山県高岡市オフィスパーク8-1
営業時間|10:00〜18:00(工場見学・鋳物製作体験の時間は、Webページ参照)
休業日|年末年始(工場見学は、日曜、祝日休 ※土曜は月により変更あり)
Tel|0766-63-0001(予約問い合わせ専用)
www.nousaku.co.jp
クラフトツーリズムの聖地「能作」の工場を徹底解剖!
前編|富山観光の“ハブ”とは?
中編|ファクトリーツアーへ
後編|能作・社長が考える、高岡と日本の未来
text : Kaeko Ueno photo : Junjiro Hori
2017年7月号「この夏、島へ行きたい理由」