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長野・松本で美味しい朝ごはんを探す旅
ものがたり食堂 さわのめぐみ

2022.8.10
長野・松本で美味しい朝ごはんを探す旅<br><small>ものがたり食堂 さわのめぐみ</small>

いまからワクワクが止まらない夏の旅計画。日頃から全国各地を拠点に活躍中の気になるアーティスト9人にも、この夏、旅に出るならどこへ? とうかがってみました。今回は、「ものがたり食堂」主宰、さわのめぐみさんに、夏旅スケジュールを伝授してもらいました!

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〈お話をうかがった方〉
さわの・めぐみ
フードディレクター。枠にとらわれない多様な料理を提供する、神奈川・鎌倉「Nami zaimokuza」のシェフを務めている。童話や小説、映画から着想を得たコース料理を提供する「ものがたり食堂」主宰

美味しい朝ごはんを求めて、長野・松本へ!

ROOSTERのケージフリーエッグ

「食」にまつわる「旅」。

それが私の趣味だ。「その土地の『食』に出合う事」はマスト。私の食への飽くなき探究心は「旅」へと導いてくれる。

今回目指すのは、長野県松本市。うわさでは夜は冷房要らずの涼しさだとか。寄り道をしながらの旅に、さぁレッツゴー!

ぐんぐん進む車、どんどん近づく目的地。最初の寄り道は、山梨県北杜市の養鶏場「①ROOSTER」にお邪魔します。大自然の中で自由に育った卵は、アッサリしていて臭みもなくサラサラ食べられちゃう。オムレツ、卵かけご飯、目玉焼き。何をつくろうかな? と考えながら、ひとつ目のお土産をお買い上げ。

再び車に乗り込んで、さぁレッツゴー。

ぐんぐん進む車、どんどん近づく目的地。もうひとつどうしても寄りたいところがありまして、来ちゃった諏訪のワンダーランド「②古道具 ninjinsan」。ここは、モノ好きな人にとっては宝の山。愛ある手書きの値札に店主の人柄がうかがえます。前回の旅では、一合炊きの土鍋とお茶碗と漆椀を購入。ninjinsan で時間を使い過ぎるのはそれだけ魅力的だから……と言い訳しつつ、今夜の宿「③松本ホテル花月」へ向かいます。立地がいいので夜の名店もはしごできるし、酔っ払っても大丈夫。

1軒目はナチュールワインが楽しめる「④peg」。自家製シャルキュトリーが揃い、名物は15時まで限定のペグドッグという名のホットドッグ。ぜひ食べていただきたいのが、夜限定のオムレツです。シンプルながらしっとりとコクのあるクリーミーな味わいにワインが進みます。1、2杯いただいて、次はおでん店「⑤」へ。7席のカウンターのみの店内は、いつも地元の方々で賑わっています。店主のこだわりを感じられる練り物はぜひ。「揚げ」か「そのまま」を選べて、ひとつのネタでも二度美味しい。出汁の塩味が心地よく、身体に染み渡ります。

美ヶ原温泉 金宇館

翌朝、ゆっくり散歩しながら目指すのは「アルプスごはん」。松本近郊の自然育ちの野菜や調味料を使った、身体にも心にも優しい朝ごはんが待っています。ひと口、またひと口と食べ進めると身体がだんだんと起きてくるのを実感するはず。不思議。パクパクパク、ごちそうさまでした。お次は「マサムラ本店」で、ベビーシューを一人2個、お土産用に天守石垣サブレも買いましょ。続いて「⑧栞日」でコーヒーとチャイをテイクアウトしたら、なまこ壁の道を散歩しながらベビーシューをほお張ります。シンプル! でも口の中に広がる甘さは心地よく『もうひとつあってよかったぁ』ときっと思うでしょう。

さて、標高2000mを超える美ヶ原高原の山頂を目指します。目的地は雲上のリゾート「⑨王ヶ頭ホテル」。満天の星と、運がよければ雲海も楽しめるほか、日の入りと日の出を見られる、日本でも珍しい場所です。ホテル併設のカフェでビーフシチューをいただいたら、「⑩美ヶ原高原美術館」を目指します! 途中、かわいい牛に出合ったり「美しの塔」の鐘を鳴らしたり。ホテルに戻ったらぜひ貸切風呂を。「ここは日本?」と思うような雄大な景色が見られるでしょう。

夕食は、信州の食材をふんだんに使ったお料理の数々。日本酒や日本ワインもあって……とここで詳しく話してしまうと、もったいない。でも一度訪れると、また季節を変えて来たくなる、素晴らしい体験が待っています。

翌日は松本市内へ戻り、松本城から眺める景色を堪能して城下町を散策しましょう。タイミングが合えば行ってほしいのが「⑪まつもと古市」。長野県内はもちろん、全国選りすぐりの出店者が勢揃いしています。お気に入りの物、見つかるかな?

お腹そろそろすいたかな? 今日のランチは「⑫うなぎ すっぽん 山勢」。肝焼と鰻重、おすすめのナチュールワインを頼みます(夫よ、ごめん)。セルビアの赤ワインと肝焼きの、なんとも言えないマリアージュ。こんなにも離れた日本で、まさか鰻とペアリングされるとは思っても見なかったことでしょう。もし、松本で1軒しか選べないなら、私は間違いなくここを選ぶ。本当に美味しい。

美ヶ原温泉 金宇館の朝ごはん

お腹いっぱい? では、そろそろ向かいます。この旅の最後の宿「⑬美ヶ原温泉 金宇館」へ。きっと、入り口に立った瞬間から魔法にかかるはず。どこか懐かしい。でもはじめてという不思議な感覚になるかもしれません。「時と泊まる」がコンセプトの、約100年の歴史をもつ老舗旅館。無駄な物は何もなく、もう100年残したいという想いで再構築した洗練された空間。意識的につくられた美意識がひっそりと覆っている。

夕食でびっくりするのは、東京では過ぎ去ったはずの季節の食材が登場すること。標高の高さゆえ、関東より旬が遅くやってくるからだとか。もう食べられないと思っていたアレやソレに再会すると「また会えましたね」と自然と笑みがあふれてしまう。心にしっとりと染み渡る感覚をぜひ味わってください。

そして、3泊4日の旅、最後の朝食です。使われている漆器は、明治時代のものを塗り直して、職人さんが新たに息を吹き込んでいます。つくり手に想いを馳せながら朝食をいただきます。ゆっくり噛み、よく味わい、飲み込む。毎日同じことをしているのに、空間が所作を丁寧に導いてくれる。あぁ、もう最後のひと口……、惜しみながらも飲み込み、ごちそうさまでした。

その後、ラウンジでデザートをいただき、お庭を眺めます。あと少しの贅沢な時間を噛み締めるように。最後にご覧いただきたいのがお土産品コーナー。旅館で使用しているうつわや調味料を販売していて、私は朝食で使用していたお味噌を購入。

いかがでしたか? 旅の終わりはちょっぴり寂しいですが、たくさん買ったお土産で旅の思い出に浸るのも、いい時間です。さて、美味しい朝食を探す旅でしたが、お気に入りの朝ごはんは見つかりましたか? 私はいま思い出を振り返りながら朝ごはんをつくっています。

ninjinsanで買った土鍋でご飯を炊いて、お茶碗と漆椀も早速使います。お味噌汁は金宇館で買ったお味噌を、そして最後に、熱々の炊きたてご飯にROOSTERの卵をのせて、塩をひと振り。

美味しい朝ごはんを探す旅の終着点は、もしかしてここなのかもしれないですね。

旅のスケジュール

①ROOSTER
住所|山梨県北杜市武川町柳澤3971-25
www.rooster-henhouse.jp

②古道具 ninjinsan
住所|長野県諏訪郡下諏訪町御田町3190-14
Tel|070-1456-2223
営業時間|13:00〜19:00
定休日|火・水曜

③松本ホテル花月
住所|長野県松本市大手4-8-9
Tel|0263-32-0114
料金|1泊2食付2万350円〜(税・サ込)
https://matsumotohotel-kagetsu.com

④peg
住所|長野県松本市中央3-3-11
Tel|0263-88-9199
営業時間|12:00〜17:0018:00〜23:00
定休日|日・月曜

⑤瀞
住所|長野県松本市中央1-5-11
Tel|0263-36-4146
営業時間|17:30〜23:00
定休日|水曜

⑥アルプスごはん
住所|長野県松本市深志3-7-5
Tel|0263-87-5377
営業時間|8:00〜9:30(L.O.)、11:30〜14:30(L.O.)
定休日|月〜水曜
Instagram|@alps.gohan

⑦マサムラ洋菓子店
住所|長野県松本市深志2-5-24
Tel|0263-33-2544
営業時間|9:00〜18:00
定休日|火曜

⑧栞日
住所|長野県松本市深志3-7-8
Tel|0263-50-5967
営業時間|7:00〜20:00
定休日|水曜
https://sioribi.jp

⑨王ヶ頭ホテル
住所|長野県松本市入山辺8964
Tel|0263-50-8765
料金|1泊2食付1万9800円〜(税・サ込)
www.ougatou.jp

⑩美ヶ原高原美術館
住所|長野県上田市武石上本入美ヶ原高原
Tel|0268-86-2331
営業時間|9:00〜17:00
www.utsukushi-oam.jp

⑪まつもと古市
会場|松本城大手門枡形跡広場
開催日|7月16日(土)〜17日(日)
http://matsumotofuruichi.com

⑫うなぎ すっぽん 山勢
住所|長野県松本市中央1-2-20
Tel|0263-88-6005
営業時間|12:00〜14:00、17:30〜21:00 ※日曜は昼のみ
定休日|月曜
http://yamasei-unagi.jp

⑬美ヶ原温泉 金宇館
住所|長野県松本市里山辺131-2
Tel|0263-32-1922
料金|1泊2食付2万2150円〜(税・サ込)
http://kanaukan.com

 

岐阜・郡上八幡〜白鳥の
徹夜おどりの旅

 
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illustration: Saki Machida
Discover Japan8月号「美味しい夏へ出掛けよう!」

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