HOTEL

「パークハイアット京都」
京都・東山の高台に立つ邸宅のようなリゾート

2020.3.12
「パークハイアット京都」<br>京都・東山の高台に立つ邸宅のようなリゾート
街を見晴らす高台からの眺めは、好天ならば写真のような美しい夕焼けが望める。空がセピア色に染まる頃、夜のとばりが降りる。八坂の塔を近くに眺め、京都タワーを遠望する

千年の都、京都の東山地区に誕生した「パーク ハイアット 京都」。
最高級クラスのスタイリッシュなホテルブランドは、東山の名門老舗料亭に招かれ、共有する“贅”を披露し、新しいかたちの“もてなし”に挑んでいる。パーク ハイアットの革新性と料亭「山荘 京大和」の伝統、互いがからみ合う不思議な魅力が古都に舞いはじめた。

数々の歴史の舞台となった東山で歴史や伝統と共存するホテル

プレミアムスイート「二寧坂ハウス」(68㎡)から見る景色。窓を開け放ち、八坂の塔を前に古都、京都をじっくりと体感できる。山々に沈む夕景シーンもこの部屋から満喫できる

舞台は1200年余りの歴史ある古都、京都東山区高台寺枡屋町。ハイアット最高峰ブランドとして、またモダンな意匠で知られる「パーク ハイアット」が、1877年(明治10)年創業、142年続く料亭「山荘 」の敷地内に誕生した。料亭の建物の由緒はより古く、またさまざまな歴史秘話の舞台であったことを知る歴史マニアなら、熱い思いで訪れたい場であろう。江戸の末期、桂小五郎や久留米藩真木和泉守ら各藩士が集まり、討幕を練った「会議」もこの地で行われた。

東山の一等地、高台寺に隣接した丘陵地に建つ料亭の敷地は、一方が世界遺産の清水寺へと続く二寧坂にも面している。山荘 京大和は耐震補強工事のため、2017年1月から2年間休業していた。至難の業といわれた工事を終え、敷地内に招き入れたパーク ハイアットとともに同時開業に至ったのだ。開業の前日には祝宴とともにテープカットが行われた。

その翌日の2019年10月30日、双方が華々しく開業した。パーク ハイアットは日本では25年ぶり、2軒目の誕生となった。ロケーションのよさは前述の通りだ。豊臣秀吉の正室であった北政所(高台院)が秀吉の冥福を祈ろうと建立した高台寺は目と鼻の先にある。八坂神社、祇園など京都屈指の観光名所も徒歩圏内にある。周辺環境は閑静だが、外国人観光客で賑わう二寧坂に面したKYOTO BISTROだけは出入りも多く熱気に包まれている。

このプロジェクトにあたり、料亭はもともと敷地に現存していた歴史的建造物や日本庭園を保存・復元し再開業を果たしている。余談だが、女将の話の中で思わず一緒に笑ったのは、「茶室が空を飛んだ!」というニュース。「江戸時代から続く敷地内最古の建物である茶室『』が、敷地の一段高い場所にクレーンに吊られて移築された様子を見て……」と、多くの人々に注目されていた工事だったと女将談。

こうしていまに残された貴重な料亭の施設や、周囲の神社仏閣などの環境景観に合わせ、ホテルは、日本瓦の美しい邸宅を思わせる低層建築に仕上げられた。9室のスイートを含む客室数70室のラグジュアリーなつくりである。伝統を継承する山荘 京大和とパーク ハイアット 京都は、東山のゲストハウスとして互いの共存・共栄を目指すこととなった。ホテルは京都の魅力をたたえる最高級ホテルとして、広く世界にパーク ハイアットの存在感を発信しはじめたばかりである。

幕末の頃、桂小五郎、井上馨、久坂玄端らが集まり会合を開いた山荘 京大和。京都の保護建造物・送陽亭内の、広間・翠紅館は、日本間の美の粋を極める。背筋の伸びる思い

八坂の塔は目の前。
古都の情景を一望できる類のないロケーション

八坂の塔が真正面に見えるプレミアムスイート「二寧坂ハウス(68㎡)」。リビングとベッドルームは独立。木目のきれいな黄白色系のタモ材が多く使われる室内は落ち着きのある趣
正面の門をくぐるとエントランスへと誘われるアプローチがあり、高台寺専属の庭師によって作庭された庭がゲストを出迎える
“老舗料亭の玄関"では、女将・阪口順子さんのお出迎えも。山荘 京大和の保護建造物である翠紅館の入り口で

ホテルの建つ東山の丘陵地は、京都屈指の観光名所が近いとは思えないほど閑静な環境にある。名刹に隣接し、山荘 京大和が創業以来、守り続けている由緒ある敷地である。

パーク ハイアット 京都は、共存する料亭や周囲の環境に配慮し、整然と京風なデザインをちりばめ、低層階にこだわった。これまで世界各国で展開されているウルトラモダンな最高級クラスのパーク ハイアット・ブランドとは一線を画し、高級感漂うゲストハウスとして瀟洒な邸宅感を漂わせている。和の外観、館内、客室内にも京都らしさが繊細にデザインされている。

客室内はタモ材や地元の素材による温かみのある木が使われ、柔らかな印象と寛ぎ感のあるアースカラーが居心地のよさを演出。客室・スイートの広さは45㎡から90㎡、1室だけのシグネチャースイート「パゴダハウス」は135㎡の広さがあり、最上階のこの客室からは京都市街を一望できる。

ホテルの設備は料飲施設、スパ、ウェルネスセンター、ライブラリーなどが揃う。隣接の山荘 京大和では昼食、夕食も楽しめる。またホテル内のシグネチャーレストラン「八坂」も革新的だ。日本各地の旬の食材を仕入れ、独創的な鉄板焼を提供する。パティオを挟んで隣接するバー「琥珀」では、女性バーテンダー中村晃子さんが活躍中だ。レストランでもバーでも、スタッフや料理長の気取らぬ対応に会話が盛り上がり、海外経験の豊富なスタッフも多いことで、食への話題は尽きない。そんなレストランやバーの窓には、夜になるとライトアップされた八坂の塔や街の夜景が映り込み、見慣れた京都がはじめての街のように旅の情緒に包まれる。「旅先でも自宅のように、パーソナライズされたサービスを」とうたうパーク ハイアット。京都では老舗料亭の流儀に寄り添い新たなもてなしに挑戦中だ。

バー「琥珀」から見る夕景は八坂の塔を中心に絵のように美しい。実力派女性バーテンダーの中村晃子さんは世界的なカクテルコンペで優勝の経験も。琥珀では自慢のカクテルを披露
京都の街並みを一望する「八坂」では、フランス料理の技術と鉄板焼を組み合わせた、新しい世界観の料理を味わうことができる
一段と高い位置にある送陽亭。見晴らしは最高、京都の街が一望できる

フレンドリーなカフェと絶景を愉しむおまかせコース

真蛸の炭焼き野菜サラダ(1600円)
茶の湯からはじまった歴史ある朝日焼の食器類

入り口が二寧坂に面したホームスタイルカフェ「KYOTO BISTRO」では、こだわりの食材による独創的で斬新な料理が提供されている。また、京都宇治で400年続く陶磁器の窯元、小堀遠州ゆかりの茶陶「朝日焼」のうつわが使われているのも贅沢なホテルらしい。雰囲気はカジュアル、料理は美味しいオールデイダイニングだ。ホテル内すべてのレストランで総料理長を務める井料剛さんは、ビストロについて、「外からのお客さまも大歓迎。料理をお待たせしないのも自慢のひとつ」と語る。ショーキッチンからスピーディに運ばれる熱々の料理は、目にも楽しく斬新で美味しい。

 一方、ホテルのシグネチャーレストラン「八坂」では、“革新的な鉄板焼き”が供される。ディナータイムともなれば、ソムリエ厳選の上質なワインペアリングで大いに盛り上がる。八坂の料理長・久岡寛平さんとのカウンター越しの会話はおもしろい。奈良で工芸美術を家業とする家に生まれ、一度は陶芸の道に進むものの、初のフランス旅行でガストロノミーの世界に魅了され料理人を志したという。料理長の繊細な感性が放つ料理は、スタートからメインの伊賀牛など極上のハイライトまで、次々と驚かせてくれる。

「八坂」の目が離せない鉄板フレンチ

シグネチャーレストラン八坂の料理のコンセプトは“革新的な鉄板焼き”だが、料理長は16年もフランスで修業、本場でミシュランの星を取得した気鋭の料理人。ひと皿ごとに想像を超えた斬新な料理が供される
ウニ、天使の海老、キャビアをのせたパンケーキからはじまる贅沢なコース料理

目の前で炊きたてご飯!京大和の和朝食。

料亭の和朝食は期待以上。一人用の釜で目の前で炊き上げる白飯(丹後のコシヒカリ)は絶品。国産切り干し大根、美山卵、京芋、京人参、ジャコと伏見唐辛子など京食材を豊富に使用。美味しい出汁の味噌汁など幸せな朝食

バー「琥珀」ではホテルオリジナル日本酒やジンを!

右)京都のクラフトジン「季の美」のBLUE DRAGON。 左)ホテルオリジナルの「澤屋まつもと」各2000円

ここでしか飲めないクラフトジン「BLUE DRAGON」でつくられた琥珀ジントニックと日本酒「澤屋まつもと」と抹茶、グレープフルーツの守破離カクテル。

スイート含めて客室は70室のみ。ゆったりとした滞在がかなう

写真はパゴダスイート「パゴダハウス」(135㎡)のリビングルーム。ほかにプレミアムスイート「東山ハウス」(90㎡)や「二寧坂ハウス」(68㎡)、パークスイート(68㎡)など、スイートはリビングと寝室に分かれた贅沢な部屋

お茶のオイルを使った宿泊者限定SPA

ウェルネスセンターの「The SPA」。施術前にスチームサウナ、ドライサウナのあるバスハウスを利用し身体を温める。フィットネスも。
施術用オイルは宇治の茶木から採る茶の実オイル。オレイン酸を含み保湿・美肌効果が。術後は「KOTOSHINA」のほうじ茶を

細部にこだわったアメニティ

タオルは3種、今治タオルを使用。肌触り、水切れのよさ、軽さは抜群
胸にロゴマーク、襟もとにパイピングを施したタオル地は軽くてソフト
外国人にも人気の浴衣はブルーのオリジナル柄。コットン100%
バスアメニティのひとつ「京都ちどりや」の酒粕ミルクバスほか
ホテルオリジナルのスイートルーム限定バスアメニティ「EDIT(h)」
ルームスリッパは型崩れせず軽くて履きやすい。持ち帰る人も多い

パークハイアット京都
住所|京都府京都市東山区高台寺桝屋町360
Tel|075-531-1234
客室数|70室
料金|1室11万円〜(税別・サ込)
カード|AMEX、Diners、DC、JCB、VISAなど
IN|15:00 OUT|12:00
アクセス|車/名神高速道路京都東ICから約50分、電車/JR京都駅からタクシーで約15分
www.parkhyattkyoto.jp

文=せきねきょうこ 写真=たやまりこ
Discover Japan 2020年2月号「世界に愛されるニッポンのホテル&名旅館」


 

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