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岐阜県美濃市「WASITA MINO」に学ぶ
第2の拠点づくりにつながる
ワーケーション最新事例【前編】

2022.4.1
<small>岐阜県美濃市「WASITA MINO」に学ぶ</small><br>第2の拠点づくりにつながる<br>ワーケーション最新事例【前編】

ワーケーション(Workcation)とは仕事(Work)と休暇(Vacation)を兼ねた過ごし方。移住よりも気軽に地域との接点をもつことができ、自分の生き方や、地域の在り方を変える可能性を秘めた新時代の働き方ともいえる。そのことをより実感させてくれるのが、2021年7月、岐阜県美濃市に誕生した「WASITA MINO」だ。そのコンセプトは“まちごとシェアオフィス”。美濃和紙の産地として知られ、文化と歴史がいまに伝わるこの町で、第2の拠点づくりのヒントになり得る最新事例をひも解いていみたい。

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みのシェアリング 社長 辻晃一さん
岐阜県美濃市出身。早稲田大学卒業後、ベンチャー企業勤務を経て2009年に実家が営む丸重製紙企業組合へ入社。’17年、みの市民エネルギーを設立し代表取締役就任。’18年に町づくり会社・みのまちやを立ち上げ、’19年、「NIPPONIA 美濃商家町」を開業。’21年、シェアオフィス「WASITA MINO」をスタート

町で働くことを目指した
地域分散型シェアオフィス

かつて「相生町長屋(あいおいちょうながや)」と呼ばれた明治初期築の長屋をリノベーションしたシェアオフィス「WASITA MINO」。こちらを運営する「みのシェアリング」の社長・辻晃一さんは地元美濃和紙メーカー・丸重製紙企業組合の理事長でもある。辻さんは、全国の古民家などの再生マネジメントを行う企業とタッグを組み、近年2棟の分散型宿泊施設を開業した、美濃市の活性化を担うキーマン的存在だ。

もともと東京で働きながら、いつか起業したいと考えていた辻さん。「美濃に帰ってこないか」という父親の誘いに「家業の和紙メーカーだけでなく、和紙の町である美濃の町づくり自体を事業にすれば起業につながる」と発想を転換。2009年に東京からのUターンを決めた。

少子高齢化と空き家の増加という、全国各地の地域が抱える問題は美濃市でも大きな課題だった。「うだつの上がる町並みと豊かな自然、都会へのアクセスのよさは美濃の強み」と感じていた辻さんは、活用されずにいた町並みにある豪商屋敷の再生事業者として名乗りをあげる。全国の歴史的建築物のホテル再生を手掛ける専門事業者との共同運営により、’19年に宿泊施設「NIPPONIA 美濃商家町 YAMAJOU棟」を開業。翌年には「YAMASITI棟」もオープン。立て続けに古民家再生を手掛けた辻さんの元に寄せられた相談が、長年空き家となっていた「相生町長屋」の活用策だった。

「ホテルの次につくるならシェアオフィス」とひらめいた辻さん。できる限り既存の建物を生かしながら改装した、「WASITA MINO」は’21年7月に完成。「ゆたかな暮らしの中で働く」を指針に掲げ、リモート会議も問題なく行えるインターネット環境を備え、入退室はカードキーで行うなどセキュリティ面も重視。常駐するコミュニティーマネージャーが地元との橋渡し役を担う。

個人利用者は現在、美濃に地縁のあるビジネスマンが中心。一方で、大学がない美濃市にあって、地方再生に興味をもつ大学生や、デザイナー志望の地元出身学生など、若年層が集うコミュニティとなりつつある。

住民向けのお茶会をはじめ、町の人と利用者が共にある暮らしの実現に向け「WASITA MINO」は力を注ぐ。

もう一歩深く町にかかわれる
シェアオフィス

コワーキングスペース
1階は個人&法人会員の共用スペース。中心にミニキッチンを配して区切られたワンフロアで、大テーブル、小テーブル、個室ブースが設けられシーンによって使い分けが可能
会議室
1時間単位で貸し出し可能な会議室には、会議用ディスプレイも完備
共用通路
往時の日本家屋の趣が感じられる2階通路。長屋の一部を吹き抜けとし、脇にはバルコニーを設ける
プライベートオフィス
法人会員のプライベートオフィスが並ぶ2階。IT関連企業のサテライトオフィスなどとして6室中4室が稼働中。昨秋には入居するIT関連企業の採用説明会会場にもなった
チームルーム
勾配天井が印象的な大人数向けの部屋は、ミーティングやオンライン会議などにも使える
集中ルーム
個室で仕事に没頭したいときのために設けられた集中スペース。小窓の外には芝生の裏庭が広がる
WASITA HOUSE客室
オフィス別棟には宿泊施設(全3室)も。ミニキッチンがあり自炊も可能

WASITA MINO
住所|岐阜県美濃市相生町2240-2
営業時間|8:00〜22:00
定休日|祝日・年末年始・不定休あり
料金|個人お試し利用3000円(2日)、法人会員まちワークプラン8万円〜(3名・1カ月)ほか
設備|コワーキングスペース、ソロワークブース、プライベートオフィス(法人会員のみ) 、集中ルーム(300円/時)、会議室(800円/時)、レンタルサイクル(1000円/日)、Wi-Fi、モバイルWi-Fi、プリンター複合機、給湯室、ミニキッチン、会議用ディスプレイ、ホワイトボード
https://wasita.co.jp

WASITA HOUSE
住所|岐阜県美濃市相生町2240-2
客室数|3室
料金|素泊まりプラン/1泊1室6600円~、
ワーケーションプラン/1泊1室8800円~(WASITA MINO 2日間利用可+まちごとワークタンブラー付)
IN|12:00~17:00
OUT|10:00
夕・朝食|なし
施設|共有ダイニングスペース、キッチン、
シャワールーム、プライベート寝室
※正式販売は3月以降を予定
https://wasita.co.jp

 

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text: Makiko Shiraki(Arika.Inc) photo: Kazuya Hayashi
Discover Japan 2022年3月号「第2の地元のつくり方」

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