TRAVEL

世界でも希少な原始的な生物たち【前編】
《まだまだいます!個性的ないきものたち》

2021.8.28
世界でも希少な原始的な生物たち【前編】<br><small>《まだまだいます!個性的ないきものたち》</small>

日本の国土のたった0.5%でしかない候補地は、ほかに飛び抜けて固有性が高いエリア。天然記念物や絶滅危惧種に指定されている種も多く、個性派が揃っています。彼らの生息地や特異な生態を前編・後編でご紹介!

ほ乳類(陸生)

日本の在来種のうち19%にあたる21種が生息。多くは雑食性で、肉食性はイリオモテヤマネコだけ。原始的なアマミノクロウサギや、いくつかの島に亜種がいるトゲネズミなど、世界でもまれな原始的ないきものが多く見られる。

愛らしい顔をした大型のコウモリ
ヤエヤマオオコウモリ

クビワオオコウモリの亜種で八重山列島に分布。夕方から夜にかけて森や町を飛び回る。糞をするときは身体を反転させて前足でぶら下がる。

Data
生息地|西表島
平均的大きさ|頭胴長約20㎝
見た目の特徴|首の回りの毛だけ淡黄色のため首輪をしているように見える
好きな食べ物|オオバイヌビワ、フクギなどの実

いままさに絶滅が心配な原始的なネズミ
オキナワトゲネズミ

トゲのような毛で覆われたずんぐりとした体で、夜間にぴょんぴょんと跳ねながら森を移動する。奄美大島、徳之島に近縁種が生息する。

Data
生息地|沖縄島北部
平均的大きさ|頭胴長11〜17㎝(尾長9〜13㎝)
見た目の特徴|背中を中心にトゲ状の毛が生えている
好きな食べ物|シイやマツの実、昆虫など

爬虫類(陸生)

日本全土の50%にあたる36種が生息する中で23種が固有種と、固有性が高い。ヤエヤマセマルハコガメ、オビトカゲモドキ、キシノウエトカゲなど、肉食のほ乳類など天敵が少ないために生き残った原始的ないきものが多い。

丸い甲に脚や頭がすっぽり入る!
ヤエヤマセマルハコガメ

森林周辺に生息する陸生種。腹甲の中央に蝶番があり、体を引っ込めて甲羅をほぼ完全に閉じることができるため、「箱ガメ」の愛称がある。

Data
生息地|西表島
平均的大きさ|約17㎝
見た目の特徴|甲羅がドーム状に盛り上がり、頭部の側面は鮮やかな黄色
好きな食べ物|シイやカシの実、陸産貝類、ミミズや昆虫

徳之島のみに分布するヤモリの仲間
オビトカゲモドキ

ヤモリの仲間だが、指の裏に吸着力のある細い毛はなく、指先に小さな爪がある。冬は落ち葉の下などで越冬し、初夏から活動をはじめる。

Data
生息地|徳之島
平均的大きさ|10〜15㎝
見た目の特徴|首から背中に4本の桃色の横帯模様がある。闘争で尾が切れ、再生した個体が多い
好きな食べ物|クモやミミズ

日本産トカゲ類の中で最もビッグ!
キシノウエトカゲ

八重山諸島と宮古諸島のみという特殊な分布をはじめ、その生態は謎に包まれた部分が多い。すばしっこいが、ヤマネコの獲物になることも。

Data
生息地|西表島
平均的大きさ|30〜40㎝
見た目の特徴|貫禄のある大きさ。背面は青味を帯びた褐色
好きな食べ物|昆虫、ミミズ、小さなトカゲやヘビ

昆虫 ほか

候補地の在来種数は6153種で、この数はまだ増えると推測される。特徴的なのはヤンバルテナガコガネをはじめとするコウチュウ目、オキナワカラスアゲハなどチョウ目で約半数を占めること。日本ではめずらしくサソリも生息。

鮮やかな青い羽を持つ大型のカワトンボ
リュウキュウハグロトンボ

西表島以外の候補地に分布し、山間の森林に囲まれた渓流などに生息。1月を除いてほぼ一年中見られる。雌は水中で卵を産むことも。

Data
生息地|沖縄県北部、徳之島、奄美大島
平均的大きさ|約6㎝
見た目の特徴|メタリックブルーに輝く腹部に、根元の深い青から黒へと続く美しい羽をもつ
好きな食べ物|小さな昆虫

サソリでありながら人にはほぼ無害
ヤエヤマサソリ

日本に2種類のみ存在するサソリのひとつ。毒は獲物となる小昆虫を捕らえるためで、人間に対する毒性は弱い。雌だけで子孫を残せる。

Data
生息地|西表島
平均的大きさ|約3㎝
見た目の特徴|小さいながらもハサミや針をもつサソリらしさがある
好きな食べ物|シロアリなど、ごく小さな昆虫

1984年に新種登録された日本最大の甲虫
ヤンバルテナガコガネ

大陸と離れた後も沖縄島北部でのみ生き残った遺存固有種。スダジイやオキナワウラジロガシといった大径木のうろの中で暮らしている。

Data
生息地|沖縄県北部
平均的大きさ|5〜6㎝
見た目の特徴|前足の長さは約9㎝と長い
好きな食べ物|幼虫は大木の樹洞にあるフレーク状の腐植、成虫はシイやカシの樹液

両生類

ほとんどがカエルの仲間で、候補地に生息する21種のうち18種が固有種と、極めて固有性が高い。台風や海流などの影響で亜熱帯多雨林が形成される南西諸島は、両生類にとって好環境。冬眠しないばかりか冬に産卵する種も。

日本一美しいといわれる大型のカエル
オキナワイシカワガエル

森の奥の渓流域で岩の多い場所を好む。苔むしたような模様がカモフラージュに。夜間は岩の上に現れ、木にも登る。奄美大島に亜種が生息。

Data
生息地|沖縄県北部
平均的大きさ|約10㎝
見た目の特徴|草緑色の地に褐色のまだら模様。眼が大きく、吸盤や後肢の水かきが発達
好きな食べ物|ヤスデやサワガニ

島ごとに種分化が進み沖縄島の固有種に
ハナサキガエル

沖縄島北部の森林の渓流周辺で暮らす。夜行性。手足が長く、ジャンプが得意。冬になると滝壺や渓流の岩場に集まり、集団で産卵する。

Data
生息地|沖縄県北部
平均的大きさ|雄約5㎝、雌約6㎝
見た目の特徴|全体的に褐色で、スマート。目が大きく鼻先がとがっている
好きな食べ物|ムカデや昆虫

ウォン! とイヌのような鳴き声が特徴
ホルストガエル

沖縄島北部と渡嘉敷島のみに生息。渓流周辺で暮らす。わずかな流れがある沢に自ら30㎝ほどの窪みを掘り、800〜1000個の卵を産む。

Data
生息地|沖縄県北部
平均的大きさ|約11㎝
見た目の特徴|頑丈な体格で頭部が広い。吸盤はもたず、水かきも発達していない
好きな食べ物|大型の昆虫やムカデ、小さなヘビ

≫次の記事を読む

supervisor:Tadaaki Imaizumi text: Yukie Masumoto
写真提供=環境省、興 克樹(アマミホシゾラフグ)、PIXTA(ヤエヤマオオコウモリ、リュウキュウサンコウチョウ)
Discover Japan 2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」

沖縄のオススメ記事

関連するテーマの人気記事