漆器とは?英語で「Japan」と呼ばれた日本を代表するうつわ【後編】
《うつわの基礎知識》
独特のつやと質感、口に当てたときの質感の柔らかさなど、魅力の尽きない漆器。木地や下地、塗りの技法によって製品に差が出ます。良質のものは高価ですが、手入れをしながら長く使えるので大事に育てたい逸品です。今回は、漆器の魅力について前後編記事にてご紹介します。
全国各地でつくられています!
大名や領主が職人を呼び寄せ技法の普及に努めたり、各藩が保護や奨励を与えたこともあって、日本各地でつくられるようになった漆工芸。地域によって特徴もさまざま。
信越地方
新潟漆器・村上木彫堆朱(新潟県)
新潟漆器は江戸期に技術が伝わり製造を開始。村上木彫堆朱は15世紀に京都の職人が中国の堆朱をまねた技法が伝わり栄えた。
東北地方
津軽塗(青森県)、川連漆器(秋田県)、浄法塗・秀衡塗(岩手県)、鳴子漆器(宮城県)、会津塗(福島県)
東北のほぼ全藩で漆塗りを奨励。蒔絵技術で美術的価値を高めた会津塗、奈良時代にルーツをもつ浄法寺塗など、全国的に有名。
関東地方
小田原漆器・鎌倉彫(神奈川県)
室町時代に箱根の豊富な木材でつくられた挽物に漆を塗ったのが起源。優れた挽物技術により、木目が生かされた製品が多い。
東海地方
飛騨春慶(岐阜県)
江戸初期に高山城下で大工棟梁が木目の美しさを発見し生まれた。名称は色調が茶器の名品、飛春慶に似ているところから。
北陸地方
高岡漆器(富山県)、金沢漆器・山中漆器・輪島塗(石川県)、越前漆器・岩狭塗(福井県)
華麗な技を駆使した輪島塗、加飾ひきが特徴の山中塗、塗り重ねた漆を研ぎ出す模様づけが特徴の若狭塗など優れた漆器が多い。
近畿地方
京漆器(京都府)、紀州漆器(和歌山県)
平安以来の歴史をもつ京漆器。工程も複雑で、歴史と伝統が上品な美を形成。紀州漆器は僧兵で有名な根来寺を中心に栄えた。
中国四国地方
大内塗(山口県)、香川漆器(香川県)
江戸末期に玉楮象谷(たまかじぞうこく)が中国の技法から独自技法を生み出した香川漆器、室町時代に大内氏が奨励し現代に伝わる大内塗が有名。
塗りの種類は大きくふたつ
漆器の仕上げ塗りは、研磨後に摺漆を行う「ろいろ仕上げ法」と、刷毛で塗って仕上げる「塗り立て法」の2種類に大別される。
黒ろいろ塗
油を含まない黒漆を塗り、炭で研いでから摺り漆と磨きを繰り返してつやを出す。
朱ろいろ塗
朱の漆を使って、黒ろいろ塗と同工程で仕上げられる。朱漆は漆ならではの美しさが引き立つ。
摺漆(すりうるし)
生漆を生地にすり込み余分な漆を拭き取り乾燥させる作業を繰り返す。木目の美しさが魅力。
唐塗
津軽塗の伝統技法。仕上げの上塗り前の妻塗の工程で鈴分・梨地粉をまき文様を際立たせる。
“粋”な加飾技法もある
塗りに絵や装飾を加えるものも多い。さまざまな技法があるが、代表的なものが漆で絵を画いた上に金・銀の粉をまく「蒔絵(まきえ)」や、漆器面を彫った溝の部分に金箔を貼り付ける「沈金(ちんきん)」。夜光貝、アワビ貝などを薄い板状にしたものを使って文様をつくる「螺鈿(らでん)」も。職人の腕の見せどころだ。
漆絵
透漆に、顔料を加えた色漆で絵を描く、最も古くからある技法のひとつ。法隆寺にある玉虫厨子の漆絵が最古とされる。
蒔絵
漆を蒔絵筆につけて文様を描き、乾燥する前に蒔絵粉という金・銀の粉をまく。平蒔絵、高蒔絵などいくつか種類がある。
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photo:Norihito Suzuki edit: Miyo Yoshinaga illustration: Tomoyuki Aida
Discover Japan 2020年12月 特集「うつわ作家50」
≪うつわの基礎知識≫
1|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「焼物」
2|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「陶器」
3|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「磁器」
4|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「漆器」【前編】
5|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「漆器」【後編】
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7|1分でわかる焼物のルーツと見分け方