漆器とは?英語で「Japan」と呼ばれた日本を代表するうつわ【前編】
《うつわの基礎知識》
独特のつやと質感、口に当てたときの質感の柔らかさなど、魅力の尽きない漆器。木地や下地、塗りの技法によって製品に差が出ます。良質のものは高価ですが、手入れをしながら長く使えるので大事に育てたい逸品です。今回は、漆器の魅力について前後編記事にてご紹介します。
漆器を見るポイント教えます
・内側の塗り
内側は上塗り仕上げが多いが、簡単な加飾のある場合も。外側は木目を生かした槢漆で内側だけ朱塗りのものも。
・表面の塗り
内側より表面のほうが加飾されることが多い。一切の加飾をせず、漆の美しさを存分に見せてくれる漆器も上品。
・高台
底、高台まで丁寧に手塗りされたものはよい漆器。隅々まで塗り、磨きを施すという職人のこだわりが息づく。
そもそも漆って何?
漆の原料はウルシ科ウルシノキの樹液。樹液に含まれるウルシオールという物質が、酸化酵素の働きで皮膜になる。
生漆に鉄を混ぜて黒くする
「黒漆」
生漆に鉄を入れ化学反応させた後、天日の下でゆっくりと混ぜる「なやし」、「くろめ」という精製作業を行い、特有の深みある黒に。
本来の漆は無色透明です
「生漆」
漆本来の色は無色透明。まったく手を加えない生漆は、接着に使われるほか、漆器の光沢を出すろいろ仕上げにも使われる。
その他の色
「白」
漆は顔料で発色させるのが難しい。チタンを使った白(実際には黄土色)は安定した色のひとつ。時間が経つと白味が増す。
「本朱 」
本朱は漆に混ぜる顔料の名前。天然石の辰砂を細かく砕いたもので、朱肉の赤にも使われた。漆の美しさを引き出す色。
上質なものを大事に育てて長く使いたい。
木地の上に漆を塗り重ねて生まれる漆器は、日本を代表する工芸品。日本が誇る漆器を手に入れるなら、上質なものを選びたい。
近年は、下地に合成樹脂や圧縮木材を使用したものも増えてきた。これも漆器には違いないが、強度にも色の深みにも欠け、うつわの厚みが均一に近い。本来の漆器は椀の中心ほど厚みが増すので、よい漆器を選ぶ基準に。
漆には意外な効用もある。漆は一度乾くと酸やアルカリ、塩分やアルコールにも強いことが知られ、古くから漆器に防腐、防虫効果があるといわれていたが、最近の研究では漆の主成分・ウルシオールに抗菌効果があり、漆器に入れた食品は大腸菌類が激減することがわかった。
そんなうれしい効果もあるのだから、ぜひ日常に取り入れたいもの。お手入れも意外に簡単だ。軽い汚れなら人肌ほどのぬるま湯で流す程度で大丈夫。油汚れは薄い中性洗剤をつけたふきんか柔らかいスポンジで優しく洗う。洗ったらすぐにふきんで拭いて水気を取れば水跡も残らない。ただし陶器や金物との混ぜ洗いや食器洗い乾燥機の使用は絶対に避けること。
手入れをしながら長く使えるのも漆器のよさ。大事に育てながら愛用したい。
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edit: Miyo Yoshinaga illustration: Tomoyuki Aida
Discover Japan 2020年12月 特集「うつわ作家50」
≪うつわの基礎知識≫
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2|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「陶器」
3|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「磁器」
4|日々の生活に欠かせない暮らしの道具「漆器」【前編】
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