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「一澤信三郎帆布」の麻かばん
自分好みに育てる京土産
買って帰りたい京都

2020.10.28
「一澤信三郎帆布」の麻かばん<br>自分好みに育てる京土産<br><small>買って帰りたい京都</small>
写真は青のI-06(03)1万500円(税別)

いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら、足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではの”いいもの”を、京都出身の目利き人・内藤恭子さんが厳選して教えてくれた。

選・文=内藤恭子
共著『京都を買って帰りましょう。』をはじめ、ジャンルを問わずつくり手の取材を数多く手掛ける。作家作品などを紹介するショップ「好事家 白月」も主宰する

裁断から縫製まで、工房で職人が手作業で行う。麻帆布は黒や緑、ワインなど6色

私は祖母が住んでいた町家を事務所にしている。セルフリノベしたのだが、祖父も大工仕事が好きで、棚奥から道具入れが出てきた。帆布製で、タグには「一澤帆布製」とある。いまでは「一澤信三郎帆布」として親しまれている、あの名店のものだ。

古くから店を知る人たちにとってこの店のかばんは、丈夫な道具のイメージが強い。京都の牛乳店では配達に牛乳入れを使うのがツウで、いまもアレンジしてつくり続けられている。一度、取材の際、過去の製作物を見せていただいた。登山用リュックに楽器ケースなど、「つくれないものはないんじゃないか?」と思うほどあれこれ出てきたが、その中に麻の生地があった。ご主人の一澤信三郎さんによると、第二次大戦中の兵器のカバー用の生地だという。これを気に入った奥さんが、麻帆布のかばんを復刻させた。シャキッとなめらかな手触りは、綿帆布とまた違う質感で、使い込むとクタッと柔らかくなる。ヨーロッパから生地を取り寄せたこともあったが、内戦でスエズ運河が通れず届かなくなったことも。生地の品質と供給を安定させるべく、麻糸を輸入し、日本で織って特別に染め、オリジナルの麻帆布生地を仕立てた。「麻だけやないで、綿帆布も特注品。効率化や合理化のせいで、どんどん使いたいもんがなくなっていく」。そのため、あらゆるものを特注せざるを得ず、小さな金具にまでICHIZAWAの刻印が入ったオリジナルだ。「かばんはあくまで道具。丈夫で使いやすく、修理して長く使えるもんやないとあかん。それがつくる側の責任」と言い切る。だからこのかばんを持つたび、その実直さを思い出し、大切な何かを思い出すのだ。

一澤信三郎帆布
住所|京都市東山区東大路通古門前上ル高畑町602
Tel|075-541-0436
営業時間|10:00〜18:00
定休日|火曜
https://www.ichizawa.co.jp/

 

《買って帰りたい京都》

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《買って帰りたい京都》
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photo: Sadaho Naito
Discover Japan TRAVEL 2019年号 特集「プレミアム京都2019」


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