「三三屋」の高山寺の仔犬
京都を代表する“カワイイ”を連れ帰る
買って帰りたい京都
いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら、足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではの”いいもの”を、京都出身の目利き人・内藤恭子さんが厳選して教えてくれた。
選・文=内藤恭子
共著『京都を買って帰りましょう。』をはじめ、ジャンルを問わずつくり手の取材を数多く手掛ける。作家作品などを紹介するショップ「好事家 白月」も主宰する
高山寺で有名なのは鳥獣人物戯画だが、愛らしい動物は絵巻物の外にもいる。「木彫りの狗児」だ。狗児は仔犬のことで、動物好きだった開祖・明恵上人が、愛玩したと伝えられている。
高山寺の仔犬は触れないが、触れる&買えるそっくりの仔犬が、「三三屋」というgroovisionsが主宰する京都土産物のセレクトショップに座っている。「実は陶器製の狗児を仕入れる予定が、生産を終了していたんです。ふと、ソフビでつくったらおもしろいと思って提案すると、ご住職が快諾してくださり製作が実現しました」と、三三屋店主で、清水寺御用達の左官職人でもあり、アーティストの顔ももつ小林常司さん。何でまたソフビ製なのかというと、そこには長いストーリーがあるのだが、ざくっと簡潔に言えば、小林さんの頭の中には、「ソフビでなら、この木彫りを完璧に再現できるアーティスト」が思い浮かんだから。原型は、紙製ロボット「カミロボ」の発表を行うなど多岐にわたり活躍している安居智博さんが担当。制作はプレスポップが手掛け、2年近い試作期間を経て完成した。木彫りは湛慶の作と伝えられており、あの運慶の長男で鎌倉時代を代表する仏師だ。ノミの跡を思わせる独特の凹凸も見事に再現され、くるりと巻いた尾っぽも愛らしい。「原型はさすがに本物から採ることはできないので、レプリカから再現していますが、陶器製では再現できない躍動感が表現できたと思う。ご住職も喜んでくださいました」と、小林さんも出来栄えに満足そう。あの志賀直哉も「時々撫で擦りたいような気持ちのする彫刻」と称したというから、もしこの仕上がりを目していればさぞ驚いたことだろう。
三三屋
住所|京都市中京区東洞院蛸薬師下ル元竹田町639-11
Tel|075-211-7370
営業時間|12:00〜19:00
定休日|土・日曜、祝日のみ営業
http://www.groovisions.com/mimiya/
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photo: Sadaho Naito
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