「うね乃」無精者も虜にする簡単出汁
買って帰りたい京都
いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら、足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではの”いいもの”を、京都出身の目利き人・内藤恭子さんが厳選して教えてくれた。
選・文=内藤恭子
共著『京都を買って帰りましょう。』をはじめ、ジャンルを問わずつくり手の取材を数多く手掛ける。作家作品などを紹介するショップ「好事家 白月」も主宰する
私は面倒臭がりで料理も頑張らない派だが、出汁はとる。そう言うと人に感心されるけれど、いろいろなうね乃の出汁を使っているだけだ。ここは名だたる名店に昆布やカツオ節といった出汁の材料を卸していて、料理人の間では知られた存在。たとえば、一般的な出汁パックには無添加と表記されていても、たんぱく加水分解物(食品添加物に指定されてない)が入っていないものが意外と少ないのだが、うね乃のものは一切余計なものは入っていない。曲がったことが大嫌いなご主人が、頑なに天然素材の組み合わせだけにこだわっていて、直営店の「仁王門うね乃」のうどんや、「麸屋町うね乃」のおでんでも、自然な出汁の味を伝えている。
出汁とひと口に言っても、材料は本枯れの鰹節や鯖節、昆布など素材の組み合わせで味が変化する。京都の料亭の澄んだ繊細な味を家庭で毎食再現するのは難しいが、「だし屋の白だし」を使えば簡単だし、出汁を取るならパックでも十分美味しい。「追い鰹なんて、家庭ではコストもかかるし無理にする必要はないです。味を濃厚にしたければ、うるめ鰯や鯖、あっさり仕上げたいなら、『極上けづり』を加えてみて下さい」と、副社長の釆野佳子さんは簡単な出汁のとり方も伝授してくれる。私はすっきりとした上品系の「おだしのパックじん(黄)」を愛用していて、煮物などには濃いめの出汁なら「職人だし」を足して使っている。より本格的に自分の好みを追求したいなら、本店で素材の味を体験してみるのもいい。私が体験して虜になったのは、削りたての鰹節。オリジナル削り器を手に入れて、自宅でも削ってみたくてウズウズしている。
うね乃
住所|京都市南区唐橋門脇町4-3
Tel|075-671-2121
営業時間|平日 10:00~18:00、土曜 10:00~17:00
定休日|第2土曜・日曜・祝祭日休み
https://odashi.com/
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photo: Sadaho Naito
Discover Japan TRAVEL 2019年号 特集「プレミアム京都2019」