TRADITION

仏ならではの智慧を表す「五智如来」
空海が三次元化した密教の世界

2020.9.14
仏ならではの智慧を表す「五智如来」<br>空海が三次元化した密教の世界

京都・東寺の講堂にある立体曼荼羅。密教の教えを視覚化した曼荼羅を、空海がさらに3D化したものです。《空海が三次元化した密教の世界》では、立体曼荼羅を構成する21体の仏像を解説。空海が見せたかった密教の世界を体感してみてください。

大日如来の智慧を象徴する
金剛界の五仏

密教の世界観には、教主である大日如来の理を表す胎蔵界と、智を表す金剛界というふたつの世界がある。大日如来が備える5種類の智慧を五智(法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智)といい、五智を象徴する金剛界の五如来を五智如来という。

五智如来の中尊(中央)は、法界(全宇宙)の普遍の智慧である法界体性智を象徴する大日如来。東方の阿閦如来は、鏡ですべてを映すようにあらゆるものを見極める大円鏡智、南方の宝生如来は、すべてのものとの一体化を悟る平等性智、西方の阿弥陀如来は、あらゆる智慧を観察して人々を導く妙観察智、北方の不空成就如来は、なすべきことを成就させる成所作智を表している。

如来を表す尊像の服装は通常、粗末な袈裟を表す衲衣のみを身につけた質素な姿で表される。これは、王族という身分を捨てて出家し、悟りを開いた釈迦の姿にちなんだもの。ところが大日如来像は、宝冠をつけ、首や腕などに飾りをつけている。

密教では、大日如来は宇宙そのものであり、真理そのもの。別格の存在ゆえ、如来としては例外的に華々しい姿をしていると考えられる。また、胎蔵界大日如来は法界定印を、金剛界大日如来は智拳印を結ぶ、異なる姿で表されるのも特徴だ。

そもそも如来とは?
悟りを開き、人々を救済する仏のこと。仏教成立当初は、釈迦如来のみだったが、その後、阿弥陀如来や薬師如来、大日如来などが加えられた。

あらゆるものを正しく見極める
阿閦如来坐像
五智のうち大円鏡智を表す。左手で衣の端を握り、右手で釈迦が悟りを開いた後、惑わそうとする魔物を退けた際の触地(そくじ)印(降魔(ごうま)印ともいう)を結ぶ。

重要文化財
木造漆箔
像高|139.4㎝
造立時期|江戸時代1834(天保5)年
配置場所|東北方

すべてのものとの一体化を悟る
宝生如来坐像
五智のうち平等性智を表す。左手で衣の端を握り、右手で人々の願いを聞き入れ、成就させることを示す与願(よがん)印を結ぶ。宝生如来は福徳を授ける仏とされる。

重要文化財
木造漆箔
像高|143.6㎝
造立時期|江戸時代1834(天保5)年
配置場所|東南方

あらゆる事実を観察し、導く
阿弥陀如来坐像
五智のうち妙観察智を表す。大日如来像以外の4体は、江戸時代に新造されたものだが、阿弥陀如来像のみ、頭部は平安後期の古像のものを転用したと考えられている。

重要文化財
木造漆箔
像高|138.8㎝
造立時期|江戸時代1834(天保5)年
配置場所|西南方

なすべきことを成就させる
不空成就如来坐像
五智のうち成所作智を表す。左手で衣の端を握り、右手で仏教の力によって人々の恐れを取り払うことを示す施無畏(せむい)印を結ぶ。不空成就如来は釈迦如来と同体とされる。

重要文化財
木造漆箔
像高|134.2㎝
造立時期|江戸時代1834(天保5)年
配置場所|西北方

宇宙そのものである密教の教祖
大日如来坐像
講堂の本尊。五智如来の5体はいずれも1486(文明18)年の土一揆による火災で失われたが、大日如来像のみ1497(明応6)年に再興された。仏の智慧を表す智拳印を結ぶ。

重要文化財
木造漆箔
像高|284.0㎝
造立時期|室町時代1497(明応6)年
配置場所|中央

text: Miyu Narita special thanks: Benrido
参考文献:『イラストでわかる 密教 印のすべて』(藤巻一保著・PHP研究所)、『空海辞典』(金岡秀友編・東京堂出版)、『KOYASAN Insight Guide 高野山を知る一〇八のキーワード』(高野山インサイトガイド制作委員会・講談社)、『国宝・重要文化財大全 4 彫刻(下巻)』(文化庁監修・毎日新聞社)、『仏像図典』(佐和隆研編・吉川弘文館)、『マンダラの仏たち』(頼富本宏著・東京美術)

2019年5月号 特集「はじめての空海と曼荼羅」


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《空海が三次元化した密教の世界》
1|仏ならではの智慧を表す「五智如来」
2|五智如来の化身「五大菩薩」
3|密教の敵、許すまじ 「五大明王」
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