モネが愛した芸術品を普段使いする贅沢
「竹中木版竹笹堂」の木版手摺和紙
買って帰りたい京都
いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら、足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではの”いいもの”を、京都出身の目利き人・内藤恭子さんが厳選して教えてくれた。
選・文=内藤恭子
共著『京都を買って帰りましょう。』をはじめ、ジャンルを問わずつくり手の取材を数多く手掛ける。作家作品などを紹介するショップ「好事家 白月」も主宰する
西洋絵画の巨匠たちを虜にした日本の浮世絵。クロード・モネは晩年を過ごしたジヴェルニーの家に200点以上の浮世絵をコレクションしていたという。江戸時代には庶民の娯楽として親しまれた浮世絵だが、色ごとに何枚も版木を彫り、色を重ねて手摺りする木版印刷のため手間とコストがかかり、時代とともに機械印刷へと取って代わられた。でも、私はあの和紙独特の手触りや、絶妙なグラデーションで摺られたぼかしの色合いなど、職人の仕事ぶりに見惚れる木版手摺和紙が好きなのだ。
そんな紙フェチである私が、探し求めて出合ったのが「竹笹堂」だった。「このままでは木版印刷は技術継承もできなくなり、周辺産業も衰退する」と、竹中木版の5代目である竹中健司さんは、木版手摺和紙を使ったブランドを立ち上げた。それが竹笹堂だ。本来、浮世絵は図案をつくる人、版木を彫る人、摺る人と分業制だったが、竹中さんは年月をかけ職人を育成し、すべての工程を工房で行えるように整えたのが革新的だった。その技術は国内外から高く評価されており、JR西日本の寝台列車TWILIGHT EXPRESS 瑞風のポスターや、ルパン三世の木版画を制作するなど、知らぬ間に彼らの作品を目にしている人も多いはず。
普段は封筒代わりにポチ袋やメッセージカードを愛用しているが、気軽な手土産にはブックカバーを選ぶ。男女問わず喜ばれるうえ、京都や日本の風景、伝統をモチーフにしたオリジナルの図柄が楽しい。もう少し改まった贈り物にしたいときは、好みの木版手摺和紙を選んで、京扇子やうちわに仕立ててもらう。日本の伝統を継承した芸術をそばに置けるという至福感が、もれなくついてくる。
竹中木版竹笹堂
住所|京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町737
Tel|075-353-8585
営業時間|11:00〜18:00
定休日|水曜
https://www.takezasa.co.jp/
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photo: Sadaho Naito
Discover Japan TRAVEL 2019年号 特集「プレミアム京都2019」