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オーダーメイドの革靴ブランド「nakamura」
大熊健郎の東京名店探訪

2021.2.21
オーダーメイドの革靴ブランド「nakamura」<br><small>大熊健郎の東京名店探訪</small>
人気のショートブーツ「PB02」(3万1900円)。シンプルなデザインはデイリーにも使いやすい。革靴とスニーカーの中間を目指した靴づくりで、年間に約1000足を製造。修理も丁寧に対応してくれる。ソールなど好みでいろいろオーダーも可

「CLASKA Gallery & Shop “DO”」の大熊健郎さんが東京にある名店を訪ねる《東京名店探訪》。今回は、リーズナブルな価格ながら半永久的に履き続けられるオーダーメイド革靴で多くの支持を受ける人気ブランド「nakamura」を訪れました。

大熊健郎(おおくま・たけお)
「CLASKA Gallery&Shop “Do”」ディレクター。国内外、有名無名問わずのもの好き、店好き、買い物好き。インテリアショップ「イデー」のバイヤー&商品企画、「翼の王国」編集部を経て現職
www.claska.com

中村隆司さん
桑沢デザイン研究所卒業後、登山靴メーカー・ゴローに5年半勤務して靴づくりを学ぶ。その後職業訓練校を経て独立。nakamuraをオープン

nakamuraの靴は基本オーダーメイド。約20型あるデザインから気に入ったタイプを選ぶ

「靴好き」という人種は厄介だ。ただ生活するだけなら2、3足あれば事足りるはずだが、欲しい靴が目の前に現れるともうどうにもならない。「もう靴は捨てるほどあるじゃない」、「僕なんか全然少ないほうだよ」という夫婦の会話の後、あらためて家にある靴を数えると24足あった……。しかもその大半がほとんど出番の機会がないものばかり。やはり靴には実用を超えたフェティッシュな魔力があるゆえ……。

逆に言えば数ある中で「つい足を入れてしまう靴」がある。気兼ねなく履けて快適で見栄えもいい三拍子揃った靴。わたくしにもそんな靴がある。数年前、地方のとある店で出合い、いまや相棒的存在となったのが中村隆司さん、民さん夫婦がつくる靴だ。

日暮里駅から無人鉄道、日暮里・舎人ライナーに乗って11分。江北駅を降りて2、3分歩くとクリーミーなレンガ色をしたしゃれた色のガラスドアと鉄扉が印象的な建物がnakamuraの本拠地。一階は工房、二階がショップである。

隆司さん、民さん夫婦と大熊さん

中村さん夫妻がブランドを立ち上げたのは1998年のこと。それまで隆司さんは登山靴専門店のGOROで靴づくりを、民さんは靴の商社でデザイナーとして働いていた。その二人がスキルアップのために通ったという職業訓練校で出会い、結婚。二人の靴づくりがはじまった。2005年には谷中にショップをオープン。’11年にもともと工房のあった現在の江北の地に移転し、新たなスタッフも加わり、現在は3人で靴製造の全工程と店舗運営を行っている。

nakamuraの靴は基本オーダーメイド。約20型あるデザインから気に入ったタイプを選び、足のサイズはもちろん、足のかたちや癖など、ショップ担当の民さんに丁寧にカウンセリングしてもらいながら決めていく。オーダーしてから靴が出来上がるまで約4カ月。この「待つ時間」がまたいい。

nakamuraの靴は接着材も使用する。なるべく手頃になるよう作業工程を考える

そしてもうひとつnakamuraの靴を特徴づけているのが修理ができ、半永久的に履き続けられること。それはブランドとして大切にしている理念でもある。オーダーメイドの革靴で修理もでき、しかもリーズナブルな価格。とにかくバランスのいい靴なのだ。

「見た目だけじゃなく、履き心地や修理できること、そして値段や売り方も含めてそのすべてがnakamuraのデザインだと思っています」とは隆司さんの言葉。どこまでも靴を選ぶ人の立場で靴づくりをしてきた人、だからこその言葉だろう。

日暮里駅から日暮里・舎人ライナーで7駅、江北駅近くに工房兼店舗がある

nakamura
住所|東京都足立区江北4-5-4 2F
Tel|03-3898-1581
営業時間|10:00〜18:00
定休日|水、木曜
www.nakamurashoes.com

photo: Atsushi Yamahira
Discover Japan 2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」

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