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木の柔らかなぬくもりと街並み表現した「ONE表参道」
隈研吾が暮らす神宮の杜

2020.10.10
木の柔らかなぬくもりと街並み表現した「ONE表参道」<br><small>隈研吾が暮らす神宮の杜</small>
有名ブランドショップが軒を連ねる表参道エリアで、ひと際目を引くのがONE表参道のビル。地上7階・地下2階建て。表参道駅A3出口を出てすぐの立地

建築家の隈研吾さんが、自身が携わった建築について語る《隈研吾が暮らす神宮の杜》。今回は、日本の建築物が連綿と継承してきた「木の伝統」を取り入れて、デザインした「ONE表参道」について話を伺った。

隈研吾(くま・けんご)
建築家。東京大学建築学科大学院修了後、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。20カ国を超す国々で建築を設計し、日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞ほか国内外で受賞多数。土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、柔らかなデザインを提案している。主な著書に『点・線・面』、『ひとの住処』など

 

整然と立ち並ぶケヤキの並木が美しい表参道。「そのケヤキが並ぶ間隔のリズムを、外壁に並べたアカマツのルーバー(日光などを遮る羽板)で表現できると思いました」と語るのは、表参道の「入り口」に2003年に完成した地上8階建てのファッションビル「ONE表参道」を設計した隈研吾氏だ。

表参道に面した幅50mのファザードの上部は、壁から外側に45㎝突き出したアカマツのルーバーが、幅60㎝間隔で整然と並ぶ。元は赤みの強いアカマツの木目が、17年間の風雨に耐えて、いまでは落ち着いた色調になった。下から見上げると何枚もの木の羽板が外壁を覆うが、表参道の通りを渡って反対側の正面から見ると、ガラスの壁からビルの内部が見通せる。成熟した木調とガラスの透明感が一体となっているのだ。

このビルは、世界一流のトップブランドを多数抱えるLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)ファッショングループジャパンが1棟まるごと借り上げてテナントとして入る(竣工当初。現在はほか2社が入居)。ビルのオーナーは「プリントゴッコ」で一世を風靡した印刷機器大手の理想科学工業だ。隈氏は設計をLVMHから持ち掛けられたが、そのテナントとオーナーの双方が、隈氏が「都会の建物に木を使うことに挑戦したい」と提案した、いまのデザインを気に入ったという。

建築基準法では都心部の建物では防火・耐震の観点から、外壁に木製の材料を使うことが禁じられてきた。そこで、火災が起きても延焼を防ぐための散水装置(ドレンチャー)を上部に設けたことで、建築法上の基準をクリアした。
「東京という街は昔、ヒューマンスケール(人が活動しやすい大きさ)の木でできた建築があふれた“柔らかい街並み”でした。表参道も僕がよく通っていた小学生の頃はケヤキ並木しかなく、店舗なんてほとんどなかった。その“柔らかさ”を取り戻したいという気もありました」

ビルの立地は、首都・東京から南西に延びる国道246号の千代田区永田町〜渋谷区渋谷間の「青山通り」と表参道が交わる、ちょうど角地に近い。その表参道界隈の「一丁目一番地」という意味も込めて「ONE表参道」というビル名になった。そしてこの地は、ビル所有者である理想科学工業の創業者、故・羽山昇氏(1924〜2012)が幼年期、毎日の通学時に表参道から明治神宮に向かって最敬礼していたという、思い出の地でもある。後に羽山氏は謄写版(ガリ版)印刷業をはじめ、これが理想科学工業の創業期となる。「どんな苦しいときにも理想を忘れないように」との願いを、社名にも入れた。隈氏は「だから、創業者である羽山昇さんは、ぜひともこの土地を手に入れたいと思ったそうです。木のルーバーは明治神宮の木造とも共鳴する意味を込めました」と話す。

神宮の杜をめぐる悲喜こもごものストーリーの中に、日本の建築物が連綿と継承してきた「木の伝統」をよみがえらせるきっかけとなった「ONE表参道」。隈氏が東京という大都市の中にさまざまな木製の構造物を生み出していく起点となったという意味で、特別な「ONE」なのかもしれない。

ONE 表参道
住所|東京都港区北青山3-5-29
Tel|店舗により異なる
営業時間|11:00〜20:00
休業日|なし

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text: Shumon Mikawa photo: BENJAMIN LEE planning & organizer: Noriko Sakayori(L.STUDIO)
2020年11月号 特集「あたらしい京都の定番か、奈良のはじまりをめぐる旅か」


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