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保存建築に新たな光が降り注ぐ「KITTE」
隈研吾が暮らす神宮の杜

2020.9.6
保存建築に新たな光が降り注ぐ「KITTE」<br>隈研吾が暮らす神宮の杜
吹き抜けが開放的な、KITTEの1階の空間。太陽光の入る設計で陽の移ろいが感じられる。隈氏が立つ石橋タイルに、かつて八角形の柱が立っていた

建築家の隈研吾さんが、自身が携わった建築について語る《隈研吾が暮らす神宮の杜》。今回は、1933年に開局した旧東京中央郵便局の建物を、保存・再生した「KITTE」のデザインについて伺いました。

隈 研吾(くま・けんご)
建築家。東京大学建築学科大学院修了後、1990年、隈研吾
建築都市設計事務所を設立。20カ国を超す国々で建築を設計し、日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞ほか国内外で受賞多数。土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、柔らかなデザインを提案している。主な著書に『点・線・面』、『ひとの住処』など

 

JR東京駅の丸の内南口にそびえる地上38階建ての高層ビル「JPタワー」は、地下1階から地上6階までが商業施設の「KITTE」となっている。2012年5月に竣工したJPタワーは、1933年に開局した旧東京中央郵便局の敷地に建つ。KITTEのある地上6階までの部分は、その旧東京中央郵便局の局舎の一部が保存・再生されて外観として残る。現代的なタワーとレトロなデザインの融合が印象的だ。

旧東京中央郵便局舎の設計は、通信省(電信・電話・郵便を監督していた官庁で、現在の総務省)のの営繕課に所属していた建築家・吉田鐵郎(1894~1956)が手がけた。

「吉田鐵郎先生の建築は、昔の郵便局や電信電話局、官庁といったお堅い感じの建物で『エレガントさ』を追求したことでしょうね。役所といういろんな制限がある建物で、あれだけ知的なエレガントさを追求している。そこがすてきだなと思っています」

旧建物を保存・再生してKITTEへとリノベーションするプロジェクトの内装デザインを担当した建築家の隈研吾氏は、モダニズム建築の始まりとされる吉田鐵郎建築を高く評価する。東京中央郵便局でエレガントさを感じる部分は、写真で隈氏が立つ位置にあった「八角系の柱」だという。「四角ばった構造物の中に、全く形状の違う八角系の柱を配したことで実にエレガントな空間を生み出した。大発明だと思いますね」

KITTEの内部には地上1階から6階までが吹き抜け状のアトリウム空間になっており、現在は1階の石板タイルの上に、その八角系の柱があった部分が示されている。隈氏はその真上にあるガラス天井から、ボールチェーンが八角形状に垂れ下がり、「光の柱」として往時のつくりを思わせるようなにデザインした。

東京駅に隣接した南西の角にある直角二等辺三角形の敷地には、建築家としてはなかなか使いづらかったかもしれない。隈氏は「直角二等辺三角形の直角部分で旧建物を残して、東京駅に『顔を向ける』ようにしたのが、この広場のおもしろさ。吉田鐵郎先生の設計は、その形状を逆手に取り、どちらの方向からも人が入り抜けていくような流動的な空間を生み出しています」と解説する。

KITTEの各フロアは、1階は北海道旭川市のサクラ材を、2階は愛知県西三河地方の三州瓦を、6階は福岡県久留米市のなら材をーーと、各地から集めた素材を使って空間を構成した。東京駅に隣接して、全国から頼りや物品が集まり行き交う日本の中心にある郵便局の跡地だけに、隈氏は「郵便という全国ネットワークが持つ、”つなぐ力”を見せられたらいいなと思いました」と願いを語る。

若い頃に隈氏が学び遊んだ渋谷と青山の中心にある明治神宮は、全国各地から集めた木を植樹し、100年かけて自然の森に近づけた。その「神宮の杜」にある新しい国立競技場にも、全国からネーミングされたKITTEも、隈氏が神宮の杜から受けたインスピレーションが発想の根底に潜んでいるようだ。

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KITTE
住所|東京都千代田区丸の内2-7-2
Tel|03-3216-2811(10:00~19:00)
営業時間|物販11:00~21:00(日曜、祝日~20:00)、飲食11:00~23:00(日曜、祝日~22:00)※一部営業時間が異なる店舗あり
https://marunouchi.jp-kitte.jp

text: Shumon Mikawa photo: BENJAMIN LEE planning & organizer: Noriko Sakayori(L.STUDIO)
2020年10月 特集「新しい日本の旅スタイル」


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