京都《ワインとお宿 千歳 chitose》
天橋立の風土を味わう
至高のオーベルジュへ
京都北部の7市町で構成される「海の京都」。和の源流を感じながら、冬の味覚をキーワードに“もうひとつの京都”の魅力を発見する旅へ――。今回は、文珠と対岸の府中を結ぶ天橋立の対岸に建つオーベルジュ「ワインとお宿 千歳 chitose」をご紹介。心身を癒す上質な寛ぎと感性を刺激する食文化体験を約束してくれる。
海の京都をめぐる
旅の拠点にふさわしい名宿

丹後半島の付け根に位置する宮津市は、豊かな自然と歴史文化が交差する海の京都の中心地だ。穏やかな宮津湾と阿蘇海を東西に隔てる天橋立は、国生みの神・伊弉諾尊が伊弉冉尊の住む地に通うために天上から架けた梯が倒れて形成されたと伝わる。

神話における聖地のほとりに佇む「ワインとお宿 千歳 chitose」は、海の京都をめぐる旅の拠点にふさわしい名宿だ。江戸時代中期から続く「千歳旅館」を、現オーナーの山崎浩孝さんがリノベーション。ドイツと北海道でワイン醸造を学んだ後、宮津に戻りブドウの苗木を植えはじめ、1999年に「天橋立ワイナリー」を設立した。宿のセラーに有する自ら現地で買い付けた約5万本のワインは、ワインフリークも舌を巻く国内屈指の品質を誇る。

旅人で賑わう智恩寺門前町の喧騒から離れ、ウェルカムドリンクのロゼワインのグラスを掲げると至極の滞在がはじまる。本館の客室は2組限定で、それぞれワンフロア貸切。クラシカルな調度品と独創的なデザインが融合した空間で、目の前に広がる運河を眺めていると、廻旋橋がダイナミックに90度旋回する光景に目を奪われた。

ワインの名宿で
冬の味覚のマリアージュを堪能

しっとりとした肌触りで湯冷めしにくい天橋立温泉は、岩風呂(上)と檜風呂(下)で好きなだけ入浴できる。ともに露天風呂付き
ひと息ついた後は、2階の温泉へ。地下1500mより湧出する天橋立温泉は美肌の湯として名高く、浴室は趣の異なる2種類。翌朝に入れ替わる部屋ごとの貸し切りなので、誰にも気兼ねなく思う存分湯浴みできるのがうれしい。

水面が藍色に染まり、山影が柔らかく溶け合いはじめた頃、待ちわびた夕餉が幕を開ける。国内外から訪れる美食家を魅了するのは、地場産の野菜や宮津、伊根で水揚げされた魚介など風土を感じる旬の素材で仕立てた美食だ。

ひと口いただくと心が落ち着くかぼちゃのポタージュ、ルネサンス期の祭壇画のように美しいお造り、クリーミーなソースが引き立てる鯛のポワレ、噛むほどに旨みがほとばしる但馬牛のフィレ肉、そして香り高い伊根産筒川そばののど越し……。その和洋折衷の美味物語にソムリエがセレクトしたワインが花を添える。一皿ひと皿に寄り添いながら、味わいに深みや豊かな余韻、軽やかさを演出するマリアージュは、記憶に刻まれる食体験だ。冬には贅を極めた間人ガニのコースも用意されている。

旬の食材との ペアリングも自由自在
セラーに収蔵されたワインは99%がブルゴーニュワイン。稀少なワインもあり、国内外からワインフリークが訪れる。ディナーのペアリングは予算や好み、おまかせなど柔軟に対応してくれる
「海の京都は、固有の歴史と文化が受け継がれ、暮らしと共存しています。市街地だけではなく、自分だけの悦びを発見できる“余白”を楽しんでください」
口福の残響とともに、この地のまちづくりに深く携わってきた山崎さんの言葉が心に残った。
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テロワールを満喫
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ワインとお宿 千歳 chitose
住所|京都府宮津市文珠472
Tel|0772-22-3268
客室数|2室
料金|1泊2食付3万8500円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00
OUT|10:30
夕食|和洋折衷(レストラン)
朝食|和食(レストラン)
アクセス|車/京都縦貫自動車道宮津天橋立ICから約10分 電車/京都丹後鉄道天橋立駅から徒歩約3分
施設|ワインセラー、カフェラウンジ、露天風呂付き大浴場など
www.amanohashidate.org/chitose
text: Ryosuke Fujitani photo: Kousaku Kitajima
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」



































