HOTEL

英虞湾に抱かれた、心安らぐ美味なるリゾート「志摩観光ホテル」

2020.8.6
英虞湾に抱かれた、心安らぐ美味なるリゾート「志摩観光ホテル」

1951年、建築家・村野藤吾の設計で開業したリゾートはリニューアルを経て、ますます輝きを増しています。伊勢志摩の風光明媚な景色の中伝統を受け継ぎながら、穏やかに進化し続ける日本を代表するリゾート。今回の連載「作家・柏井 壽の逸飯逸飯」は、三重県・志摩市にある「志摩観光ホテル」を訪ねました。

柏井 壽(かしわい・ひさし)
1952年、京都府生まれ。1976年大阪歯科大学卒業。京都市北区で歯科医院を開業。生粋の京都人であることから京都関連の書籍を、生来の旅好きから旅紀行のエッセイを執筆。著書に『極みの名旅館』(光文社新書)、『鴨川食堂』(小学館)、『京都の定番』(幻冬舎新書)などがある

テラスから眺めた英虞湾。約60の小島が浮かぶ。あおさの養殖が盛ん

雨後のタケノコのように、と言っては失礼かもしれないが、日本中に次から次へと新しいホテルがオープンしている。それらの多くが期待に応えてくれない中、長い歴史や伝統だけに依存することなく、新鮮な輝きを放ち続けているホテルが、御食(みけ)つ国志摩にある。

海か山かといえば、間違いなく「志摩観光ホテル」は海のリゾートなのだが、多くがイメージするビーチリゾートと違い、このホテルから眺める海は、高原の湖にも似た静けさと、英虞湾を囲むような深い緑が大きな特徴だ。

水平線が広がるわけでもなく、波の音が響くわけでもない。遠くに低い山が連なり、見渡す限り、緑の濃淡が地を埋め尽くす。その合間に浮かぶように、静かな水面が遠慮がちに広がる。

この穏やかな眺めに呼応するかのように、ホテルは落ち着いた佇まいでお客を迎える。はじめてこのホテルを訪れたのは、30年以上も前のこと。その頃とは大きく変わったところもあり、変わらないところもある。

志摩観光ホテルを代表する逸品・伊勢海老クリームスープ。伝統のレシピのスープをベースに、生クリームと牛乳のエスプーマと卵豆腐状にした伊勢海老の卵をのせて

志摩観光ホテルはいま「ザ クラシック」と「ザ ベイスイート」のふたつのホテルに分かれていて、ここに「ザ クラブ」が加わり、広大な敷地に3つの館が建っている。どちらに泊まっても、この3つの館と庭園を、思うがままに渡り歩ける。

30年前の記憶に最も近いのがザ クラブとレストランの「ラ・メール ザ クラシック」。格式を誇りながらも、親しみやすさを併せもち、ゲストを優しく包み込む空気は、往時とまったく変わらない。

このホテルにあって、いまどきのホテルに欠けているもの。それは包容力だろうと思う。そう。志摩観光ホテルをひと言で言い表すなら、母のような“包み込むやさしさ”なのである。

落ち着いた雰囲気の「ザ クラシック」。2016年に往年の雰囲気を生かしつつリニューアル
レストラン「ラ・メール ザ クラシック」では、伝統の「海の幸フランス料理」を提供。英虞湾の風景を描いた大倉陶苑のショープレートは開業当時から使用


モダンな「ザ ベイスイート」は、2008年にオープン。
モダンな「ザ ベイスイート」は、2008年にオープン。全室スイートで100㎡以上あるゆったりとした大人の空間
樋口宏江シェフが腕を振るうレストラン「ラ・メール」
樋口宏江シェフが腕を振るうレストラン「ラ・メール」はこちらに。ザ ベイスイートの最上階にもゲストラウンジが

まずは、このホテルが建っている賢島そのものが、英虞湾に包み込まれているのも、安らぎを得る大きな要因になっている。

そしてホテルの中。案内された客室からの眺めは、あくまでも穏やかで、いつまでも見飽きることがない。加えて、ふたつのホテルに備わるゲストラウンジも、すべてのゲストを優しく包み込んでもてなしてくれる。

だが、このホテルに滞在して、最も強く包容力を感じるのは、フレンチレストランでの食事だ。

アワビを2種の調理法で味わえる贅沢なひと皿。低温調理のアワビに、アワビの煮汁で炊いたもち麦リゾットを添えて。伝統のステーキにはショウガ風味のソースを


やたらと挑んでくる、疲れるだけの料理や、腕自慢を見せつけられてする料理とは、まったく無縁な料理がうれしい。

フレンチに限ったことではなく、最近の料理人たちは、とかく鋭い切っ先をお客に向けるが、このホテルの料理は、それと対極にある。

胎内に抱かれるような安らぎ、とでも表現すればいいだろうか。このホテルの歴史を受け継ぐ“海の幸フランス料理”は、伝統を守りながら、ガストロノミーの先端を行く料理。胸躍らせないお客など一人としていないだろう。

“大地の恵み”と名づけられたひと皿。鹿バラ肉の煮込み、牛肉のパイ包み、松阪産エスカルゴのブルギニヨン、地味噌が隠し味の牛タン、酒粕でマリネした熊野地鶏など地元の素材が並ぶ


御食つ国ならではの、地の食材をふんだんに取り入れ、洗練を究めた料理は、浅薄なグルメブームとは一線を画し、凡百の美辞麗句を尽くすことの、無意味さを教えてくれる。料理は語るものではなく、愉しんで食べるものだと。

それはきっと、海の幸フランス料理の礎を築いた高橋忠之氏へのオマージュだ。基本理念を正しく受け継ぎつつ、進化を遂げている料理に、はじめてこのホテルで食事をしたときの感動がよみがえる。そしてその上に、幾重にも紡がれた糸が絡み合う。

絹のようなはかなさと、真綿のような強さを合わせた布に、ふわりと包まれながらのディナーは、心地よい安眠を約束してくれる。リゾートホテルとは何か。人は何をリゾートホテルに求めるのか。本当の“おもてなし”とは何か。

豪快な伊勢海老のソテー。三重県産のセミノールオレンジとニンジンを使ったすっきりとした酸味のソースで、爽やかに


ゲストラウンジでアペリティフを愉しみ、フレンチディナーを堪能した後、カフェ&ワインバー「リアン」でモルトウイスキーのグラスを傾けていると、その答えが琥珀色に浮かんだ。

日中はカフェやランチ利用ができ、夜はシックなバーになる「リアン」


格付けとは無縁の、継承される技や心に抱かれ、ふわりと身をゆだね、安らかな眠りに就く。志摩観光ホテルに泊まるというのは、そういうことなのである。

名宿の美食をお取り寄せ!

「志摩観光ホテル」で振る舞われる料理の一部を、Discover Japan公式オンラインショップにて販売中! 気軽に自宅にいながら、ちょっとした贅沢と旅気分が味わえます。


各国首脳も夢中にさせた、濃厚な伊勢海老の香り
≫伊勢海老のクリームスープ(2缶)


まろやかな口当たりにアワビの余韻が広がる
≫あわびのクリームスープ(2缶)


伊勢志摩産のアワビと国産素材にこだわった究極のカレー
≫志摩産 鮑カレー(2名分)


伊勢海老の旨みを最大限に活かした
≫伊勢海老のブイヤベース(2名様分)


モチモチ、プリプリな食感を楽しむ
≫イセエビのトマトクリームソースパスタ(3名様分)

「ザ クラシック」のアンバサダースイート(65㎡)


志摩観光ホテル
住所|三重県志摩市阿児町神明731
Tel|0599-43-1211
客室数|114室
料金|1泊2食付3万1800円〜(税・サ込)
カード|AMEX、Diners、DC、JCB、VISAなど
IN|14:00 OUT:11:00
夕食|各レストラン 朝食:ブッフェまたは和食(レストラン)
アクセス|車/東名阪・伊勢自動車道伊勢西ICから約40分
電車/近鉄賢島駅から無料送迎バスで約2分
施設|レストラン、ラウンジ、バー、スパ、ギャラリー、ショップ、茶室、プール
ネット|Wi-Fi
www.miyakohotels.ne.jp/shima

text: Hisashi Kashiwai photo: Ko Miyaji
2019年10月号「京都 令和の古都を上ル下ル。」

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