京都《飯尾醸造》
一本の最高級の酢から広がる
美食のまちづくり
京都北部の7市町で構成される「海の京都」。和の源流を感じながら、冬の味覚をキーワードに“もうひとつの京都”の魅力を発見する旅へ――。今回は、明治時代より続く伝統に革新を取り入れる「飯尾醸造」。5代目当主・飯尾彰浩さんに酢を通じた美食のまちづくりの可能性を教えていただいた。
「丹後のまちを、
美食の観光都市にしたい」

飯尾醸造ほど伝統と革新という言葉が似合う酢屋はないだろう。1893年に創業し、まだ「オーガニック」という概念がなかった1960年代に3代目が無農薬米を原料に取り入れた。そして4代目は契約農家から農協の3倍の価格で米を買い取り、耕作放棄地を借り受けて米づくりをスタート。地域農業の持続可能性や里山の景観保全に取り組みながら、看板商品「純米富士酢」を生み出した。

飯尾醸造5代目当主。東京農業大学大学院修了後、大手飲料メーカーにてマーケティングや営業教育として勤務後、家業を継ぎ2012年より現職。レストラン経営など独自の戦略で地域活性化にも尽力する
その伝統製法は5代目当主・飯尾彰浩さんがいまも守り続けている。「世に出回っているお酢のほとんどは醸造アルコールを添加してつくられますが、弊社は無農薬の新米を精米から自社で手掛け、麹から清酒を造ります。そこから1~2日で発酵させる速醸法ではなく、100日かけて自然にお酢に変える静置発酵を経て、長期熟成させる期間を合わせて、2年かけてお酢をつくります」
期間だけでなく、純米富士酢は、原料米を米酢と表示できる5倍量、彰浩さんが開発した“お酢の大吟醸”と称される「富士酢プレミアム」は8倍量を使用している。

飯尾さんは、単に酢を営業するのではなく、「手巻キング」と名乗り、手巻き寿司パーティで全国行脚することで飯尾醸造の酢を発信している
そう話す彰浩さんは稼業に入る前、国内大手の飲料メーカーでマーケティングに携わった経験から「強者である大手メーカーの真逆である弱者の“競わない”戦略」を取り入れている。たとえば、いまでは多くのメーカーが出しているピクルス専用酢の開発や、丹後を「シャリの聖地」にするため、「江戸前シャリ研究所」を立ち上げ、約2年に一度、国内外のトップクラスの鮨職人が集う「世界シャリサミット」を開催。さらに丹後を美食の観光都市にするべく、2017年にイタリアンレストラン「aceto」をオープンさせた。

「モデルにしたのは、世界屈指の美食の街、サン・セバスチャンの近隣の漁村ゲタリア。人口2000人ほどの村ですが、世界一美味しい魚の炭火焼きが味わえるレストランに世界中から人が訪れます。そういったニッチなジャンルの一点突破は、丹後エリアの活性化につながると確信しています」
その活動に呼応するように、この10年で海の京都に世界で評価される名店や宿泊施設が増え、美食の街として多くのメディアで取り上げられるようになった。
「まだまだ可能性を秘めた海の京都を食で発信していきたいです」
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飯尾醸造
住所|京都府宮津市小田宿野373
Tel|0772-25-0015
営業時間|9:00~12:00、13:00~17:00
定休日|土・日曜、祝日
蔵見学|可(要事前問い合わせ)
https://iio-jozo.co.jp
text: Ryosuke Fujitani photo: Kousaku Kitajima
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」



































