《東京農業大学》研究の最前線
食と農を守り紡ぐ理由。
|世田谷キャンパス【前編】
東京農業大学は「東京・世田谷」、「神奈川・厚木」、「北海道オホーツク」と3つのキャンパスを展開している。今回は、各キャンパスで注目したい研究や学生活動の最前線をピックアップしてご紹介!先端科学をリードする世田谷キャンパスの魅力とは?
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ユネスコ無形文化遺産
「伝統的酒造り」の礎を
築いたのは、東京農大だった!?

世田谷キャンパスは、東京農業大学の伝統と革新が融合する基幹施設だ。4つの学部では、農学の知識を食品、環境、健康、エネルギーなどの分野に応用し、国際的な視点で活躍できる人材を育成している。多岐にわたる研究の中で、特に注目したいのが醸造を通じた独自の研究活動だ。
日本酒や味噌、醤油など伝統的な醸造産業の後継者育成を目的にはじまり、現在は1000を超える酒蔵の経営者の約半数を輩出している応用生物科学部醸造科学科は、日本における醸造学の教育と研究をリードする存在だ。その中で清酒酵母の特性解析と育種に関する研究で名高い數岡孝幸教授は、花や樹木など自然界からこれまでなかった清酒酵母を見つけ出す技術を確立。令和改元を祝う日本酒を醸した「プリンセスミチコ」をはじめ、厳選した20種類の花酵母は日本酒の歴史に新たな個性と多様性を生み出している。

2024年12月、日本酒を含む日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産として登録された。その登録に向けた取り組みに貢献したのが、新規微生物群の探索や微生物を活用した物質・燃料生産、環境技術を研究する大西章博教授だ。
大西教授は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された、ジョージアの伝統的なクヴェヴリ・ワイン製造法に関連する微生物生態系と価値について研究。その知見と人脈が今回のユネスコ無形文化遺産登録に寄与した。
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酵母は花、樹液、ハチミツなど
至るところに存在!?
新しい酵母を探して自然界を日々観察

1998年に中田久保名誉教授が花から酒造に適した酵母の分離に成功したことから本格的に研究がはじまった。
「毎年数百種類以上の花や木から酵母を分離しますが、美味しい酒を醸せる酵母のみを厳選し商品化しています。この研究を絶やさず、日本酒文化を次世代に紡いでいくのが私の役割です」と數岡教授。

微生物工学研究室・教授 數岡孝幸さん
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酒、味噌、醤油以外の発酵も研究中
微生物は社会も食も変えていくカギ!?

社会実装されれば世界初となる糖や乳酸から微生物の働きで水素をつくる研究やカカオ豆の発酵に関する微生物など、大西教授の研究は多岐にわたる。「新しい醸造産業を生み出し、第一次産業を支えるのが私のミッションです」と大西教授。

醸造環境科学研究室・教授 大西章博さん
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農を通じた地方創生活動とは?
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(写真右から)
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text: Ryosuke Fujitani photo: Atsushi Yamahira
2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」


































