富山県・砺波市《楽土庵/らくどあん》
民藝ゆかりの地を体験するアートホテル
|北陸の名宿④
北陸新幹線の延伸によって、さらにアクセスがよくなった北陸エリア。老舗温泉旅館から注目のオーベルジュまで名宿を紹介するとともに、地元を知り尽くした主人や女将たちに、ローカルの魅力を教えていただきました!
今回は富山県・砺波市の古民家を改装した「楽土庵(らくどあん)」を紹介。民藝作品や現代作家の工芸品などに囲まれたアートホテルでさまざまな伝統や文化に触れよう。
のどかな田園風景の中で民藝の本質に触れる
民藝運動の創始者・柳宗悦の残した言葉に、「土徳」という言葉がある。富山県・南砺地方一帯にある精神風土を表した造語だ。富山では阿弥陀信仰がいまも篤く、目に見えない神仏や自然に対して感謝する精神が人々に根づいている。この精神は民藝の思想にも大きく影響を与え、結果として柳は、論考『美の法門』を富山で書き上げた。つまりここは、民藝思想が完成した地といえるだろう。
富山県・砺波市で、古民家を改装して誕生した「楽土庵」は、民藝を中心に地域で育まれてきた文化を体感できるアートホテルだ。客室は、左官職人が仕上げた土壁の空間に現代作家・林友子さんによる土のアートワークを配した「土 do」や、富山県で伝統ある城端絹を唯一生産する松井機業のしけ絹を使った「絹 ken」、和紙職人・ハタノワタルさんの手漉き和紙が壁や天井の全面に貼られた「紙 shi」の3つを用意。日本の民藝品や現代作家の工芸品に加え、北欧の家具やアジアのラグなど国境を越えた作品が自然とひとつの空間で調和し、まるで美術館に泊まっているかのよう。
楽土庵での滞在の楽しみは、館内だけではない。宿泊者全員が参加できる「散居村ウォーク」をはじめ、地域で親しまれる和太鼓芸能「越中いさみ太鼓」など、体験プログラムを種類豊富に用意。滞在を通じて富山の人々の営みを知ることができ、リピーターとなる宿泊客も多いそうだ。
「楽土庵」の旅案内
富山・砺波地方ならではの土徳に触れてほしいと思い、楽土庵では宿泊客に合わせてさまざまな周辺観光をご提案しています。中でも定番としてご案内しているのが「農家レストラン大門」です。浄土真宗の法要の際に提供される伝承料理「報恩講料理」や、手延べ製法の大門素麺などが味わえます。
お菓子なら270年余りの歴史をもつ「薄氷本舗 五郎丸屋」がおすすめ。和洋が融合したお菓子づくりなど挑戦を続ける和菓子店で、代表銘菓の「薄氷」は民藝の創始者である柳宗悦も高く評価しました。
楽土庵は民藝やものづくりに興味をもつ宿泊客も多いため、客室「絹 ken」の空間づくりにご協力いただいた「松井機業」の見学も人気ですね。絹織物で栄えた城端の町で残る唯一の工房で、2頭の蚕がつくった繭から糸を紡ぐ「しけ絹」の製造過程が見学できます。
最後に必ず訪れてほしいのが、「散居村展望広場」。高い位置から俯瞰して見ることで、屋敷林に囲まれた家屋が田園に分散している散居村の形態がよくわかります。どの季節も魅力がありますが、5〜6月の田植えの季節は水鏡のように水田に家屋や屋敷林が反射する姿が特に美しく、楽土庵スタッフも皆、見るたびに感動しています。
line
「SAYS FARM」
≫次の記事を読む
楽土庵
住所|富山県砺波市野村島645
Tel|0763-77-3315
客室数|3室
料金|1泊2食付4万4000円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、VISA、Masterなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食|イタリアン(レストラン)
朝食|洋食(レストラン)
アクセス|車/北陸自動車道砺波ICから約6分 電車/JR高儀駅から徒歩約10分
施設|レストラン、ラウンジ、ライブラリー、ブティック
www.rakudoan.jp
農家レストラン大門
住所|富山県砺波市大門165
Tel|0763-33-0088
営業時間|11:00〜14:00、17:00〜22:00
定休日|なし
薄氷本舗 五郎丸屋
住所|富山県小矢部市中央町5-5
Tel|0766-67-0039
営業時間|9:00〜18:00(日曜のみ〜17:00)
定休日|月曜
松井機業
住所|富山県南砺市城端3393
Tel|0763-62-1230
営業時間|9:00〜17:00
見学料|1組5000円(5名まで、6名以上は1名1000円) ※前日までに要予約
散居村展望広場
住所|富山県砺波市五谷160
Tel|0763-33-1111(砺波市商工観光課)
01|石川県・加賀市「あらや滔々庵」
02|石川県・加賀市「べにや無何有」
03|石川県・小松市「Auberge“eaufeu”」
04|富山県・砺波市「楽土庵」
05|富山県・氷見市「SAYS FARM」
06|福井県・坂井市「オーベルジュほまち 三國湊」
07|新潟県・阿賀野市「角屋旅館」
text: Akane Sato
Discover Japan 2024年5月号「進化するホテル」