石川県・加賀市《あらや滔々庵》
前田家藩主ゆかりの18代続く名温泉宿
|北陸の名宿①
北陸新幹線の延伸によって、さらにアクセスがよくなった北陸エリア。老舗温泉旅館から注目のオーベルジュまで名宿を紹介するとともに、地元を知り尽くした主人や女将たちに、ローカルの魅力を教えていただきました!
今回は加賀温泉郷の山代温泉で18代続く「あらや滔々庵」を紹介。加賀らしい贅沢な建築など、随所に伝統を感じさせる老舗温泉宿だ。
多くの人を魅了し続ける温泉ともてなし
約1300年前、霊峰白山へ修行に向かう途中だった高僧·行基によって、一羽のカラスが水たまりで傷を癒していたことがきっかけで発見された加賀温泉郷の山代温泉。明治時代以降、与謝野晶子をはじめとする多くの文化人が好んで滞在したとされる北陸屈指の名湯だ。
山代温泉で18代続く「あらや滔々庵」は、前田家歴代藩主の命を受け、湯番頭として山代の湯を代々守ってきた旅館。わずか数十mの地下から湧く温泉は、この宿だけで1日約10万ℓの湯量を誇る。この豊富な温泉を存分に楽しんでもらうべく、木の香りに癒される露天風呂からミストが立ち込める浴場など、趣の異なる3つの浴場を用意。宿の目の前には共同浴場「古総湯」もあるため、併せて訪れてもいいだろう。
湯上がり後の夕食では、地元の橋立港で水揚げされた魚や北陸名物のカニ、加賀野菜などを使った懐石コースを用意。近隣で活動する九谷焼・山中塗作家のうつわや、宿ゆかりの芸術家・北大路魯山人の作品を用い、加賀ならではの美食が目でも味わえる。
さらに館内には、代々受け継がれてきた美術品や現代アートも多数。老舗温泉宿としての伝統を守りながら進化を続け、いまも多くの宿泊客を魅了し続けている。
「あらや滔々庵」の旅案内
山代温泉は、温泉好きはもちろん、工芸が好きな方にも旅してほしい場所。石川を代表する伝統工芸・九谷焼の産地でもあり、宿からわずか徒歩3分の距離に4代続く「九谷焼窯元須田菁華」があります。多くの陶芸作品を残した北大路魯山人は、初代須田菁華との出会いによって陶芸に開眼したといわれています。うつわといえば、昼食には「そば山背」もぜひ。ご主人は陶芸家でもあり、自作のうつわで料理を提供。大根の辛みが蕎麦の味を引き立てる「おろし蕎麦」などのメニューがあり、素朴ながら繊細な味わいで地元にも愛されている名店です。
時間があれば「魯山人寓居跡 いろは草庵」へ。福田大観と名乗っていた若き頃の魯山人が約半年暮らした別荘で、山代温泉で制作した作品や逗留時の様子を伝える資料を見ることができます。美しい庭を眺めながら、ゆっくり過ごすのもいいですね。
街歩き途中の休憩には、あらや滔々庵が運営する芋スイーツのテイクアウト専門店「Monta-Yu 加賀」がおすすめ。加賀野菜の五郎島金時を使った「モンブラン」が名物です。加賀温泉駅まで新幹線が直通になったタイミングですので、ぜひゆっくり山代温泉を楽しんでいただきたいと思います。
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「べにや無何有」
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あらや滔々庵
住所|石川県加賀市山代温泉18-119
Tel|0761-77-0010
客室数|17室
料金|1泊2食付4万6200円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、VISA、Masterなど
IN|14:00
OUT|11:00
夕食|会席料理(個室食事処)
朝食|和食(個室食事処)
アクセス|車/北陸自動車道加賀ICから約15分 電車/JR加賀温泉駅から車で約10分
施設|食事処、大浴場、茶室ギャラリー、ショップ
www.araya-totoan.com
九谷焼窯元 須田菁華
住所|石川県加賀市山代温泉東山町4
Tel|0761-76-0008
営業時間|9:00〜17:00
定休日|不定休
そば山背
住所|石川県加賀市山代温泉18-50
Tel|0761-76-0357
営業時間|11:30〜14:00
定休日|月・火曜(祝日の場合は営業)
魯山人寓居跡 いろは草庵
住所|石川県加賀市山代温泉18-5
Tel|0761-77-7111
開館時間|9:00〜17:00
休館日|水曜(祝日の場合は開館)
Monta-Yu 加賀
住所|石川県加賀市山代温泉18-108-2
Tel|0761-71-0257
営業時間|9:30〜17:00
定休日|木曜
01|石川県・加賀市「あらや滔々庵」
02|石川県・加賀市「べにや無何有」
03|石川県・小松市「Auberge“eaufeu”」
04|富山県・砺波市「楽土庵」
05|富山県・氷見市「SAYS FARM」
06|福井県・坂井市「オーベルジュほまち 三國湊」
07|新潟県・阿賀野市「角屋旅館」
text: Akane Sato
Discover Japan 2024年5月号「進化するホテル」