松本幸四郎×中村勘九郎が熱演!英雄ふたりの絆と戦い
シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』
歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。毎月、バラエティに富んだラインナップで全国34の映画館で上映中。
2024年2月の上映作品『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』は、歴史上実在した人物・阿弖流為と坂上田村麻呂、ふたりの英雄の絆と戦いを描いた人気作だ。2月9日(金)~15日(木)にかけて上映される本作を見に行く前に、あらすじや作品背景を予習しておこう。
互いに認め合うふたりの英傑に待っていた、
抗えぬ運命
この男、義か悪か。朝廷に抗い続ける蝦夷(えみし)の長・阿弖流為は悪か、それとも民を護る正義か?
古き時代、日の国。大和朝廷は帝による国家統一のため、帝人軍を北の地に送り、そこに住む、まつろわぬ民である蝦夷に戦を仕掛けていた。その頃、都では、蝦夷の“立烏帽子(たてえぼし)党”と名乗る盗賊一味が人々を襲っていた。それを止めるひとりの踊り女、彼女こそが立烏帽子。女だてらの立烏帽子党の頭目だった。町を襲う盗賊が自分たちの名を騙る偽物であることを暴くため変装していたのだ。そこに都の若き役人、坂上田村麻呂もかけつける。さらに“北の狼”と名乗る男も現れ、偽立烏帽子党を捕える。
この事件をきっかけに北の狼と田村麻呂は、互いに相手に一目置くようになる。だが、北の狼と立烏帽子は、蝦夷が信じる荒覇吐(あらはばき)神の怒りを買い、故郷を追放された男女だった。北の狼の本当の名前は、阿弖流為。故郷を守り帝人軍と戦うため、立烏帽子と二人、蝦夷の里に戻ることにする。
荒覇吐神の怒りをおさめた阿弖流為は、蝦夷の兵を率い、帝人軍と戦う。彼の帰還を快く思わぬ蝦夷の男、蛮甲の裏切りにあいながらも、胆沢の砦を取り戻した彼は、いつしか蝦夷の新しい長として一族を率いていく。
一方、田村麻呂も、帝の巫女である姉、御霊御前や右大臣藤原稀継らの推挙により、征夷大将軍として、蝦夷との戦いに赴くことになってしまう。
阿弖流為と田村麻呂、互いに認め合うふたりの英傑が、抗えぬ運命によって、雌雄を決する時が来ようとしていた…。
実在する歴史上人物・阿弖流為(アテルイ)とは?
8世紀終わり~9世紀のはじめ、桓武天皇の時代に、東北を征討しようとした大和朝廷は東北地方の民族・蝦夷と戦いになる。阿弖流為は、蝦夷の指導者として、現在の岩手県奥州市に迫った朝廷軍を退けたが、征夷大将軍に任ぜられた坂上田村麻呂の攻撃に降伏し、やがて京で処刑されたとされている(802年)。
阿弖流為没後1200年にあたる2002年、劇団☆新感線によって『アテルイ』が初演されるなど、数々の催しが行われた。小説『火怨』やそれをベースとしたNHKテレビドラマ『火怨・北の英雄 アテルイ伝』などにも阿弖流為が描かれている。
歌舞伎NEXTとは?
400年の歴史を持つ歌舞伎は、時代時代の最先端の流行を吸収し、常に革新してきた。
劇団☆新感線で数々の傑作を世に送ってきた、ふたりの劇作家、いのうえひでのりと中島かずきが満を持して歌舞伎に挑んだ作品が、歌舞伎NEXT『阿弖流為』だ。
本作は心揺さぶる壮大なドラマや勢い溢れるアクションと共に、連綿と受け継がれてきた歌舞伎の様式美が、幸四郎をはじめとする歌舞伎俳優によって体現され、かつてない新感覚のエンターテインメントを繰り広げている。
本作の映画化にあたり松本幸四郎(当時・市川染五郎)はコメントを寄せている。
「すべてが新しい歌舞伎、歌舞伎NEXT『阿弖流為』が、シネマ歌舞伎として、舞台では表現できない編集によって生まれ変わりました。自分の夢でもある歌舞伎と映像の融合の第一歩になる、更なる可能性を感じる作品です。映像ならではの魅力が詰まった、歌舞伎NEXT『阿弖流為』を多くの方に御覧いただくことをこころより願っています。」
二度と観られない?豪華顔合わせ
苦悩しながらも蝦夷(えみし)を率いる若きリーダー阿弖流為を演じるのは、古典から復活狂言、新作歌舞伎まで、幅広い役柄を勤め歌舞伎舞台に邁進する、松本幸四郎。
坂上田村麻呂は、父・勘三郎から受け継いだものを形にしながら、NHK大河ドラマ『いだてん~オリムピック噺~』で主演を務めるなど、映像分野でも活躍中の中村勘九郎。
そして阿弖流為を導く謎の女・立烏帽子には、女方として目覚ましい活躍を続ける中村七之助。さらに坂東彌十郎、市村萬次郎、片岡亀蔵といった豪華歌舞伎俳優陣が出演している。
シネマ歌舞伎15周年の上映リクエスト企画では、見事1位の座に輝いた人気作。ぜひこの機会に映画館へ観に行こう。
読了ライン
月イチ歌舞伎 2023年度 上映作品
『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』
公開日|2024年2月9日(金)~15日(木)※東劇のみ延長予定
上映館|東劇ほか全国の映画館にて
https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/1779/#joei
料金|一般2200円、学生・小人1500円
出演|松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東新悟、大谷廣太郎、中村鶴松、市村橘太郎、澤村宗之助、片岡亀蔵、市村萬次郎、坂東彌十郎ほか(平成27年7月 新橋演舞場公演)
※同時音声解説のイヤホンガイドアプリ