FOOD

奈良・角振町《LAMP BAR》
世界を魅了する酒の聖地・奈良を味わう
|いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー③

2024.1.29
奈良・角振町《LAMP BAR》<br><small>世界を魅了する酒の聖地・奈良を味わう<br>|いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー③</small>

バーは未知の酒と出合える最前線の現場であり、バーテンダーとの会話を通して、酒の文化や歴史に触れられる場所でもある。近年多様化・進化する國酒の現在地をキャッチするべく、日本を代表する4軒のバーを訪れた。
 
今回訪れたのは国内外のお客で賑わう奈良市・ならまちにある「LAMP BAR」。そこには、世界を魅了している「本当に美味しい酒」があった。世界一の称号をもつバーテンダー・金子道人さんの創造表現とは?

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驚いていただけるよう
さまざまなカクテルを創作しています

金子道人(かねこ ・みちと)さん
1981年、奈良県生まれ。和歌山の「BAR TENDER」、奈良の「Bar OLD TIME」で修業を積み、2011年に「LAMP BAR」をオープン。バーテンダーの世界大会「WORLD CLASS 2015」でBARTENDER OF THE YEAR優勝

クリエイティブで自由な発想をもつ、世界一の称号をつかんだバーテンダー。それが、バー「LAMP BAR」の店主・金子道人さんだ。同店へは世界中から「このバーのお酒が飲みたい」と多くの人が足を運ぶ。そして、その酒の豊潤な味わいに舌鼓を打つのだ。
 
金子さんがLAMP BARを開店したのは2011年。’15年に、12席あった店から26席ある現在地へと移転し、“around the world”をコンセプトに次の3室をつくり上げた。カクテルのはじまりを表現した「メインルーム」。各国へ酒を運ぶ際に用いるトランクをキーにした「トラベリングルーム」。アルコールの歴史などを表した「ミラールーム」——。金子さんは「カクテルはもちろん、空間からも世界中の方々に感動していただけるように意識しました」と話す。このとき、バーテンダーでありクリエイターとしての金子さんの才能は開花し、創造表現ははじまっていたのだ。

「LAMP BAR」のメインルームのカウンター席。右手奥でカクテルを提供しているのが金子道人さんだ。取材時にはお客の半数近くは外国人で、店の注目度がうかがえる

その直後、金子さんの人生は一変する。きっかけは、’15年に開催された「Raising the Bar(世界中のバー文化と価値を高め、バーを通してお酒の素晴らしさをお客に伝える)」をコンセプトに、世界一のバーテンダーを決める世界大会「WORLD CLASS」。この年には54カ国から約2万人が参加し、6種目の競技が行われたグローバルファイナルで総合優勝を果たしたのが、なんと金子さんだった。彼の独創性や、ユーモアと驚きを兼ね備えたプレゼンテーションが評価されたという。
 
その後、世界中から注目されるようになった金子さん。優勝者はこの大会のコンセプトを体現するバーテンダーの代表として、世界各地でレクチャーなども求められるため、現在も国内外を飛び回っている。

トラベリングルームは、このトランクの奥に

「国ごとのお酒や食文化などに触れ、さまざまな経験をさせていただきました。帰国すると、それまで当たり前に感じていた日本の素材や調理法には、日本ならではの個性があるのだと気づきました。たとえば、比較的淡いとされる日本の味つけも、針を通すような繊細な掛け合わせにより完成されています。いまはそうしたことも意識して活動しています」

LAMP BARのメインルームには、カウンター席のほか、複数名で寛げるソファ席もある

グローバルな活動を経て、現在は「自分のために行動するのではなく、自身の経験をお伝えすることでお役に立てれば」と考え、研修生を国内外から受け入れている。2023年11月には、台湾のホテル「HOTEL PROVERBS Taipei」のバー「EAST END」のリニューアルを監修。海外のバーの監修ははじめてになる。まさに「Raising the Bar」の活動を行っているのだ。
 
さらに、「本当に美味しいお酒を届けたい」という金子さんの強い想いは、オリジナルの酒造りへと向かった。清酒発祥の地である奈良の文化に着目し、奈良市内の酒蔵とコラボレーション。’21年、「Japanese Sensorium」というブランドを立ち上げ、日本酒ベルモット「一水氷室」の販売を開始した。金子さんのクリエイティビティは、泉のように止まらない。

世界へ発信する、奈良生まれのカクテル

Savories(セイボリーズ)/1650円
奈良産「大和茶」の茶葉に、少し湯を注ぎ膨らませて旨みを抽出し、さらにトマトから抽出した旨みを掛け合わせたカクテル。旨みを引き立てるため、ウォッカをベースに、カカオと紅茶をアクセントにしている
Colorless(カラーレス)/1650円
ウイスキーに含まれるタンニンや苦み、えぐみを取り去り透明色に。シェリーやシャンパン、レモングラスなどを使用してフレッシュ感を残しつつ、余韻まで楽しめる優しい味わい。コースターは、オリジナルの陶器製
Issui Martini(一水マティーニ)/1650円
「最高のマティーニを造りたい」とベルモットの開発をし、たどり着いたのは日本の素材。奈良の地酒をベースに、ゴボウや檜、ヨモギなど日本独特のボタニカルを使用。世界に誇れるジャパニーズベルモット
Lamp Negroni(ランプネグローニ)/1650円
世界中で人気のネグローニを、奈良産のゴボウと檜、グレープフルーツの皮を漬け込んだカンパリ、日本のジン、ベルモットをプレミックスし、金子さん流に表現。炙った檜、土や草などのアーシーな香りが立つ
El Presidente(エル・プレジデンテ)/1650円
芳醇な香りのダークラムに、奈良産の香ばしいほうじ茶と、松の葉の煙で燻したスモーキーな中国紅茶「ラプサンスーチョン」を合わせ、複雑な香りを表現。ロシアで飲んだスモーキーなカクテルをヒントに考案した
ランプネグローニに使用するオリジナル酒「LAMP bitter orange」
日本酒ベルモット「一水氷室」は「Japanese Sensorium」の公式サイトでも販売中

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店の外観。この扉は非日常空間への入り口だ

 

熊本・南坪井町
《夜香木》

 
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LAMP BAR
住所|奈良県奈良市角振町26 いせやビル1F
Tel|0742-24-2200
営業時間|17:00〜翌2:00、祝日〜24:00
定休日|不定休
料金|チャージ550円、カクテル1320円〜
www.lamp-bar.com
 
※時期により、提供内容、酒が異なる場合がございます。

《いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー》
1|東京・日比谷「FOLKLORE」前編後編
2|東京・渋谷「The SG Club」
3|奈良・角振町「LAMP BAR」
4|熊本・南坪井町「夜香木」前編後編

text: Yoshino Kokubo photo: Yuta Togo
Discover Japan 2024年1月号「ニッポンの酒 最前線 2024」

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