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熊本・南坪井町《夜香木》
旅の目的地にしたい熊本の風土を楽しむバー【前編】
|いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー④

2024.1.30
熊本・南坪井町《夜香木》<br><small>旅の目的地にしたい熊本の風土を楽しむバー【前編】<br>|いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー④</small>

バーは未知の酒と出合える最前線の現場であり、バーテンダーとの会話を通して、酒の文化や歴史に触れられる場所でもある。近年多様化・進化する國酒の現在地をキャッチするべく、日本を代表する4軒のバーを訪れた。
 
今回訪れたのは「そこに足を運ばないと飲めない味わい」を信条とするバーテンダー・木場進哉さんが営むバー「夜香木」。世界的な評価を得て、その技術は日本最高峰。ただ、魅力は称号だけではない。熊本への誇りを感じる、独創的なカクテルに引き込まれる。

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熊本でしか味わえない。
それが足を運んでいただく価値になります

木場進哉(こば ・しんや)さん
1985年、熊本県生まれ。高校卒業後に酒販店でアルバイトをはじめ、その後バーの世界へ。22歳で上京し、「リゴレット」のバーに立つ。29歳でシンガポールに渡り、現地の店で約5年活躍。2020年1月、「夜香木」を開店

2023年7月、九州でははじめて「ASIA’S 50 BEST BARS」のアワードで84位にランクインしたことにより、海外での知名度を増したバーが熊本市内にある。それが「夜香木」。熊本県出身で、バーテンダーを務める木場進哉さんは2021年、世界最大級のカクテルコンペティション「DIAGEO WORLDCLASS」でチャンピオンとなり、世界大会にも出場した、日本を代表するバーテンダーの一人だ。

15席を用意し、20時までは席の予約OK。他店のバーテンダーを招くゲストシフトも積極的に行っており、Instagramで情報を発信。木場さんが海外のバーに招かれることも多い

2020年1月にオープンした夜香木。もともと旅館だったという築約150年の和風建築の1階、一見すると木の壁に見える引き戸を開けると、静謐な空間が広がる。初来店だと引き戸の存在に気づかないというケースもあるというほど隠れ家のようなつくりだ。まず驚かされるのが、日本のバーでは当たり前のチャージ料を取らないこと。木場さんは、「海外ではチャージ料という概念はありません。私自身、ただ座るだけで料金を取られることに昔から少なからず違和感はありました。何より海外から来られたお客さまに“日本の当たり前”を押しつけるのは違います」とその理由を話す。

店で提供するメニューは、いわゆる定番レシピでつくるものはなく、ノンアルコールのモクテルを含めて全16種あるカクテルはすべてオリジナル。しかもアルコール入り1600円、モクテル1400円と価格はすべて同一とし、金額が選択基準にならないようにしている。
 
「日頃、バーを利用されないような若いお客さまにも気軽にお越しいただけるような場所でありたいのです。いい意味でバーに対するハードルを下げるというのでしょうか」と木場さん。ただし、普段とは異なる非日常の体験をしていただくことは絶対に必要だと、「口に含んだ瞬間の驚きや感動を与えたいです」と続ける。同店のカクテルは、まさにその言葉通りのものばかりだ。どのカクテルも、ベースとなる酒選びから木場さんらしさ、すなわち熊本らしさが光っている。
 

夜香木

店名を冠すカクテル「夜香木」は、新進気鋭の焼酎ブランド「SHOCHU X」と、熊本・球磨郡にある六調子酒造がパートナーを組んで造った米焼酎をベースとしたものだったり、本来はフレーバードワインの一種であるベルモットを使うネグローニも、スパイスの香りをまとわせた熊本伝統の赤酒を活用していたり——。
 
「熊本ならではのオリジナリティを感じていただくという意味でわかりやすいのは、ネグローニやラストワード、マンハッタンといった世界的に愛されているクラシックカクテルが、夜香木では〝こう変わるんだ〟という、いままでにない味覚体験を楽しんでいただけること」と語る木場さん。

そう自信をもって言えるのは、彼が常に大切にする入念な下準備があるからだ。木場さんならではの創造性、熊本らしさの神髄はひと口味わえば感じることができるはず。運命の一杯との出合いを楽しんでほしい。

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熊本をまるごと味わう
「夜香木」流のカクテル

 
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text: Tsutomu Isayama photo: Kousaku Kitajima
Discover Japan 2024年1月号「ニッポンの酒 最前線 2024」

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