東京・日比谷《FOLKLORE》
國酒の新たな世界を開くミクソロジーカクテル【後編】
|いま行きたい、ニッポンの酒を楽しむバー①

バーは未知の酒と出合える最前線の現場であり、バーテンダーとの会話を通して、酒の文化や歴史に触れられる場所でもある。近年多様化・進化する國酒の現在地をキャッチするべく、日本を代表する4軒のバーを訪れた。
今回訪れたのは日本随一のミクソロジスト・南雲主于三さんが生み出す、國酒のミクソロジーカクテルを堪能できるバー「FOLKLORE」。これまでにないアプローチでつくられる多種多彩なカクテルの数々を紹介する。
國酒の新たな世界を開くミクソロジーカクテル

國酒とカクテル文化を融合させたFOLKLOREで楽しめるのは、日本酒や焼酎を使用したオリジナルのシグネチャー、世界中で飲まれているクラシックカクテルに独自のアレンジを加えたもの、コーヒーと日本酒のカクテルなど多種多彩。それらは従来とは異なるアプローチで生み出され、國酒の新しい魅力に気づかせてくれる。たとえば、奈良・油長酒造「風の森」と、同県のイチゴ「あすかルビー」を使用した大和蒸溜所のジン、乾燥させた奈良のイチゴを合わせた「苺の森」。日本酒の爽やかな香りとイチゴのアロマ、口に含むと多層的に広がる果実味に驚くとともに、奈良の風土が生み出す酒や食材への好奇心もわいてくる。
南雲さんは、緻密かつロジカルなクリエイションで常に斬新なカクテルを生み出し続けているが、飲み手は構えず自由に楽しんでほしいと話す。
「日本酒や焼酎にあまり触れたことがなくてもおもしろさを感じて美味しいと思っていただくのが一番。そこから心に響いたお酒に興味をもち、現地を訪れて酒蔵のファンになる人を増やすツーリズムにつなげていきたいです」
ビギナーにもコアな飲み手にも開かれた、日本のカクテルの新境地をぜひ味わってほしい。
<Signature Sake Cocktail>

「風の森」の上品な果実味と「橘花 KIKKA GIN 朱華」のイチゴジャムのような濃縮感、ポートワインの熟したフレーバーの組み合わせは、異なるイチゴの味がグラデーションで楽しめる。乾燥させたピュレを口に含めばよりジューシーに


エルダーフラワーのリキュールとトロピカルなミルクパンチ、ほどよくキレのある「吉田蔵u 石川門」に深煎りのスペシャルティコーヒーを加えた。ブーケのような華やかな香りにユニークな複雑味が加わる


あおさ海苔に少量のアイラウイスキーを混ぜ、乾燥させた自家製海苔チップで香りづけしたウォッカと、米の旨みが豊かな「播州一献 超辛 純米吟醸」を合わせたカクテル。米と海苔のペアリングは日本ならでは

<Shochu Signature Cocktail>

「栃栗毛」はミズナラ樽で熟成された麦焼酎。その香ばしい風味に重厚なコクのシェリー、コーヒーリキュール、ホワイトチョコレート、バニラ、ココナッツミルクを合わせて甘みの層をつくり、デザートのような味わいに


「ラフロイグ10年」のピートの利いた薫香にごま焼酎「紅乙女ゴールド」の芳醇なゴマの香りを合わせると、出汁のような旨みを感じる味わいに! 乾燥させた味噌と鰹節のパウダーのほのかな香りがユニーク


京都・宇治産の玉露を漬けたウォッカと、鹿児島の芋焼酎「大和桜ひかり」の強い旨み同士を掛け合わせた。芋焼酎の甘みと果実酒のフルーティな香りが奥行きをつくる。日本庭園を模したプレゼンテーションが独創的

<New Sake Classic Cocktail>

薬草酒を使用するジンベースのカクテルを2種の日本酒で表現。「みむろ杉」の甘み、薬草酒、ジンの味が見事に合わさり、「純米アフス生」の鮮烈な酸で全体を整えるアプローチ。日本酒の懐の深さが表れている


マルガリータはテキーラベースの伝統的なショートカクテル。通常加えるライムを使用せず、「純米アフス生」が酸味と辛みを担い、優しい口当たりに。仕上げに加えるポメロの泡とライムピールでより爽やかな香りに


ヴェスパーは、ジェームズ・ボンドが愛したジンとベルモットでつくるカクテル。国産ジンとウォッカに加え、ベルモットの代わりに使用する「黒龍 貴醸酒」がアミノ酸由来の旨みを軽やかに生み出している

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《The SG Club》
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FOLKLORE
住所|東京都千代田区内幸町1-7-1 日比谷OKUROJI G27
Tel|03-6770-8785
営業時間|14:00〜23:00(L.O.22:30)
定休日|第2月曜
料金|チャージ800円、カクテル1540円〜
http://spirits-sharing.com
※時期により、提供内容、酒が異なる場合がございます。
1|東京・日比谷「FOLKLORE」前編・後編
2|東京・渋谷「The SG Club」
3|奈良・角振町「LAMP BAR」
4|熊本・南坪井町「夜香木」前編・後編
text: Ryosuke Fujitani photo: Kenji Okazaki
Discover Japan 2024年1月号「ニッポンの酒 最前線 2024」