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千葉・館山「TAIL(テール)」
クラフトジン蒸留所を備えた、自己実現を叶える新たな”ハブ”

2021.10.9
<small>千葉・館山「TAIL(テール)」</small><br>クラフトジン蒸留所を備えた、自己実現を叶える新たな”ハブ”

千葉県館山市のJR館山駅から徒歩約7分の場所に、複合施設「TAIL(テール)」が誕生した。地元住民や訪問者がやりたいことを叶える“自己実現の場”であり、観光客に向けた“現代版・街の観光案内所”の側面も併せ持つこの施設。体験型のオリジナルジン「TATEYAMA GIN(タテヤマジン)」も生み出す、館山の新拠点に迫ります。

挑戦者たちが描く
理想の“場”をかたちに。

千房総半島の南端に位置する館山市。この地で2021年春にオープンした「TAIL」は、「Tateyama Area Incubation Lab」の頭文字を取り名付けられた。その名の通り、ここは飲食やシェアオフィスの機能を持ちながらも、新たな挑戦のきっかけづくりとなる場所だ。

閉鎖したダンボール会社の旧本社をリノベーションした同施設は、「WORK」「STAY」「HOBBY」の3つの複合スペースで展開。1階はクラフトジンの蒸留所を併設したカフェ&バー、2階はゲストハウス、3階はシェアオフィスという構成だ。

施設屋上からは館山の街を一望できる

発起人は、館山市の地域おこし協力隊でもある建築士・大田聡さん。施設やオリジナル商品のコンセプト設計には、自身も代々木上原でコミュニティスペース「No.」を運営する301.incの大谷省悟さんも携わる。大田さんは、リサーチからファイナンス、デザイン、ビルド、オペレーションまでを一括して行っている。

TAILの発起人であり、館山市の地域おこし協力隊でもある建築士・大田聡さん

大田さんが同施設を立ち上げた理由は、館山という土地の“温度感”にあった。元々施設の構想があって館山を選んだのではなく、館山を訪れてから考え始めたと話す大田さん。

大田「tu.ne. Hostel(TAIL2階のゲストハウス)のオーナーで館山リノベーションまちづくりにも参加する漆原秀さんという方との出会いが、館山という土地を選んだきっかけ。元々彼は、僕が館山に行く前からご自身で“マイクロデベロッパー”という肩書で面白い不動産をやっていたんです。僕もその活動に興味があって、何回か遊びに行ったりしている中で、地域おこし協力隊の存在を教えてもらい、応募しました」

館山を訪れた当初は、ほかの地方都市との大きな違いは感じなかったという大田さん。しかし、地域の中に入り込んでいくにつれ、“人”の面白さに驚かされたと言う。

大田「漆原さんもそうなんですけど、少し尖った人が多いんです。その人たちに会いに行くのが館山に行く動機になっていって、移住するとなったときも全く抵抗がありませんでした」

“人”をきっかけにローカルの魅力に心奪われ、二拠点生活にまで至った大田さん。彼の目に館山の人たちはどう映ったのか。

大田「例えば酸っぱい梅干しを食べて、“すっぺぇな”というのは東京の人。館山の人は“すっぺぇな。つけ過ぎだ”と言うんですよ。館山はDIY文化がすごく発達しているんですけど、梅干しの話で言うところのつけ過ぎてるかどうかは、自分で作ったことがあり、工程を全部知っているからこそ言える言葉だと思うんです。独立文化圏だから、DIY文化が発達しやすいのもあるし、いい意味で物がないので、作るしかない。館山にはコーヒーチェーン店がないけれど、その代わり焙煎場が沢山あって、自分で美味しいコーヒー淹れよう、というマインドなんですよね」

館山のクリエイティブな市民性に惹かれ、そんな人たちが集い、自己実現していける“場”づくりのため立ち上げられた同施設。具体的に訪れた人はどんなことができるのか。

大田「例えば、カフェ&バーはレンタルキッチン式に、地元のお母さんが自家製のフォカッチャやグルテンフリーのお菓子を作ってカフェ営業をしたり。1階のフリースペースでは、将来的に地元の人たちの創作物を展示販売できる場を作ろうとしていたり、色々と考えています。あとTAIL自身を地域の入り口として、施設内にある安房地域の地図にショップカードをペタペタ貼っていったり、初めて来た人を案内できたらいいなと。TAILに来たらこんなコトがあるんだと、知ってもらうきっかけづくりがしたいんです」

海から山までコンパクトにまとまった館山は、選択肢の多い場所。初めて訪れた人にも開かれ、また地域とも気軽に繋がれる“ハブ”となることを目指している。

施設の玄関口となる1階「cafe & bar TAIL」。「TATEYAMA GIN」を製造するクラフトジンの蒸留所を併設している
2階ゲストハウス「tu.ne.HIGORO」。シングルルーム3室、ダブルルーム2室、ツインルーム1室の全6室から構成
3階のシェアオフィス「SABOTAIL(サボテール)」は、“日本一仕事をしないオフィス”がコンセプト。遊びの延長戦が仕事であるという考えをもとに、ここを妄想の場であり自己実現に繋げる場としてほしいという想いが込められている
※2021年11月頃オープン予定

カスタマイズブレンドができる
オリジナルジン「TATEYAMA GIN」

TAILの取り組み第一弾として生まれたのがオリジナルジン「TATEYAMA GIN」。一般的なジンがジュニパーベリーをはじめとする複数のボタニカルを用いて風味付けされるのに対し、1種類のボタニカルごとに単品蒸留され、素材(エレメント)由来の風味をシンプルに味わえるのが特徴だ。

ジンジャー、山椒、コリアンダーをはじめとするスパイスやハーブなど全21種展開される素材は、購入者がそれぞれの蒸留酒を自由にブレンドし、自分だけのカスタマイズブレンドジンを作れる“体験型”のオリジナルジンとしても展開される。

「自分で作ること自体の体験価値を大きくしたいという想いがあった」と大田さん。DIY文化が発達する館山を表現するに相応しい一本だ。

ボトルデザインは、301.incが今回のために開発した「館山文字」が採用されている
素材を単品蒸留する「エレメントシリーズ」。季節に合わせた旬の素材で構成。それぞれの蒸留酒を自由にセレクト、好きな分量を入れてお気に入りのブレンドを作ることができる。各1980~2090円(200ml)
エレメントシリーズをブレンドして作られた「ブレンドシリーズ」。“JUNIPER” “SPICY” “FLORAL” “FRUITY” ”SPECIAL”の5つのパラメーターによってテイストが表現。オリジナルブレンド「001」は“FLORAL” “FRUITY” が強調され、初心者でも飲みやすい。「001」はジュニパーベリー、コリアンダーなど7種類をブレンド。「002」以降も順次製造予定。2200円(200ml)

オリジナルジンにも施設のコンセプトである“自己実現”というエッセンスが入るTAIL。大田さんは「ゼロからイチを作るタイミングが一番面白い。そこを並走して欲しいと思っている人って実は沢山いるんじゃないかな」と話す。同施設や訪れた人たちが今後どんなことを実現していくのか注目したい。

TAIL
住所|千葉県館山市北条1758
構成|1階カフェ&バー・蒸留所、2階ゲストハウス、3階シェアオフィス
営業時間|1階 カフェ水・木・金曜11:30~15:00、バー金・土曜17:00~21:00(20:00L.O.)/ 2階 9:00~21:00 / 3階 準備中(会員制、終日)
アクセス| JR内房線 館山駅より徒歩7分
問|tail@officeota.main.jp
https://tail-tateyama.studio.site

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