TRADITION

中村勘三郎主演、ニューヨークでも大喝采を浴びた大喜劇!
シネマ歌舞伎『法界坊』

2023.11.26
中村勘三郎主演、ニューヨークでも大喝采を浴びた大喜劇!<br>シネマ歌舞伎『法界坊』
©松竹

歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。毎月バラエティに富んだラインナップで全国34の映画館で上映される本企画、2023年12月の上映作品は『法界坊』だ。
浅草の浅草寺境内に出現した仮設の芝居小屋 平成中村座で上演した舞台を撮影。NY公演でも大絶賛され、誰もがスタンディングオベーションした話題の歌舞伎公演がスクリーンに登場!
2023年12月1日(金)~7日(木)で上映される本作を観に行く前にあらすじや作品背景を予習しよう。

江戸時代の芝居小屋を現代によみがえらせた
「平成中村座」

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中村座とは、江戸三座(江戸で歌舞伎興行を公許された中村座、市村座、森田座のこと)のひとつであり、代々中村勘三郎が座元を務めてきた、中村屋ゆかりの芝居小屋だ。平成の世に江戸時代の芝居小屋を、と再現した勘三郎は、2000(平成12年)年に浅草隅田公園に建てた仮設の芝居小屋を平成中村座と名付けた。
平成中村座は、中村勘三郎と演出家の串田和美が中心となって平成12年11月に第一回目の公演を開催。江戸時代にタイムスリップしたような芝居小屋の雰囲気、大劇場では味わえない役者の息遣いが伝わる芝居に、観客は興奮し、チケットは入手困難、立ち見も当たり前となった。定期的に公演を重ね、今年は姫路や小倉でも開催。いずれの公演も大盛況で、歌舞伎ファンならずとも、演劇ファンなら必ず行ってみたい注目の劇場だ。また、アメリカやドイツでの海外公演は大成功をおさめ、大きな話題に。今回のシネマ歌舞伎は、第一回平成中村座や大阪公演、名古屋公演でも演じられた人気の演目『隅田川続俤 法界坊』だ。

悪党だけど憎めない愛嬌溢れる
坊主・法界坊のドタバタ喜劇

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本作は、天明四年(1784年)に初演。奈河七五三助によるこの狂言は、主人公の名前でもある『法界坊』の通称で親しまれ、今日まで繰り返し上演されている。
謡曲の『隅田川』を素材としながら、近松門左衛門が書いた人形浄瑠璃『雙生隅田川(ふたごすみだがわ)』に初めて登場した法界坊は、時代が経つにつれて、堕落した僧侶の名として使用されるようになった。その法界坊が主人公として活躍する本作の最大のみどころは、悪党ながらも愛嬌溢れる法界坊の人間的な魅力、作品全体の軽妙洒脱な趣と言っても過言ではない。


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永楽屋の娘・お組に横恋慕する法界坊らがお組を口説こうと奮闘したり、それが叶わないとわかるとお組と恋仲の手代・要助に復讐しようとするものの失敗して逆にひどい目に遭わされたり、とどこか憎めない魅力は必見。
最後の場面は舞踊となり、「双面(ふたおもて)」と言われる形式で演じられる見せ場。二人の登場人物が同じ姿で現れ、これを一人の俳優が演じ分けるという歌舞伎ならではの演出。舞踊らしい華やかさと、奇想天外な趣向が見どころだ。

『法界坊』のあらすじ

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金と女が大好きな法界坊(勘三郎)は、どこか憎めない愛嬌あふれる乞食坊主。永楽屋娘お組(扇雀)に恋い焦がれる法界坊は、盗まれた吉田家お家の重宝“鯉魚(りぎょ)の一軸(いちじく)”をお組と恋仲である手代の要助(実は、吉田宿位之助松若(よしだとのいのすけまつわか)・勘太郎)が探し求めていると知る。

いい金蔓(かねづる)を見つけた欲深い法界坊に、永楽屋番頭の正八(亀蔵)や山崎屋勘十郎(笹野高史)らも加わり、鯉魚の一軸を巡る悪巧みが繰り広げられる。一度は道具屋甚三郎(実は吉田家の忠臣・橋之助)にやり込められ散々な目に遭った法界坊でしたが、お組の父永楽屋権左衛門(彌十郎)と松若の許婚の野分姫(七之助)らも巻き込み、さらに数々の悪行を行うのだった…。

笑いたっぷりのユーモラスな掛け合いから、歌舞伎の様式美まで、歌舞伎の世界を存分に楽しめる本作をぜひ映画館へ観に行こう。

読了ライン

月イチ歌舞伎2023 上映作品
『法界坊』
公開日|2023年12月1日(金)~7日(木)※東劇のみ延長上映
上映館|東劇ほか全国の映画館にて
https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/1797/#joei
料金|一般2200円、学生・小人1500円
出演|中村 勘三郎、中村 芝翫、中村 勘九郎、中村 七之助、中村 歌女之丞、笹野 高史、片岡 亀蔵、坂東 彌十郎、中村 扇雀
(平成20年11月 浅草寺境内平成中村座)
※同時音声解説のイヤホンガイドアプリ

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