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《エレゾ エスプリ》
究極のジビエ料理の美味しさの理由
北海道の食肉料理人集団が手掛ける
命を学ぶジビエオーベルジュ ③

2023.11.11
《エレゾ エスプリ》<br>究極のジビエ料理の美味しさの理由<br><small>北海道の食肉料理人集団が手掛ける<br>命を学ぶジビエオーベルジュ ③</small>

2022年10月、食肉料理人集団「エレゾ」が手掛けるオーベルジュ「エレゾ エスプリ」が北海道・豊頃町にオープンした。エゾシカやヒグマなどのジビエや、生産する三元豚や黒軍鶏などを素材に、至極のジビエ料理を提供。その美味しさとともに、エレゾの哲学を伝えている。
 
今回は、独自の仕組みを構築することで究極のジビエ料理を提供するエレゾの理念を体現する4つの部門を紹介。

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美味しさの理由は “100%の追求”にありました

[生産部門]
家畜家禽の運動を促して筋肉を育てる
現在、三元豚と黒軍鶏、鴨を放牧地で生産している。育てる環境、餌の種類、出荷までの月齢は、研究を重ねた上で導き出したもの。ほかにも、短角牛は北海道大学でエレゾ用として生産している

エレゾでは「料理人の考え」がすべての起点となっている。料理の美味しさやゲストの笑顔、そこから逆算し、独自のフードチェーンを構築した。つまり、狩猟や家畜の生産を行う「生産狩猟部門」、肉の旨み、香り、質感を最高レベルまで磨き上げる「枝肉熟成流通部門」、ウデ、モモ、内臓といった低需要部位を活用し、上質な加工製品へ昇華させる「シャルキュトリ製造部門」、オーベルジュ「エレゾ エスプリ」やビストロスタイルのレストラン「エレゾ ゲート」(東京・虎ノ門)のような直営店を運営する「レストラン部門」という4部門構成は、なるべくしてなった一貫生産管理体制といえよう。

[狩猟部門]
取り扱うのは捕ってから1時間半のジビエのみ
取り扱うジビエはエゾシカ、ヒグマ、キジバト、エゾユキウサギなど。ハンターが仕留めた動物の血抜き、内臓の処理、剥皮などの処理は、衛生管理を徹底したラボで行っている

「命に携わる以上、その命に感謝し、責任をもつ。だからどの部門でも100点を目指し、100点を積み重ねていくんです。命から料理までを清らかな一直線で結ぶように」

[枝肉熟成流通部門]
旨みと香りを引き出して肉そのものを成長させる
内臓などを取り除いた枝肉に解体した後、熟成を行う。熟成は肉としての成長を促し、肉の美味しさを最大限引き上げる工程だ。熟成期間は個体の種類、部位、季節などに応じて変えている

そう佐々木さんが話すように、獲物を仕留める段階から100点を目指す。そのためエレゾでは、ハンターに3つの条件を課している。「①首か頭を打ち抜くこと」。胴体を損傷すると血が回り、最良の食材にならないからだ。「②1時間半以内に、処理を行うエレゾのラボへ搬入すること」。これは迅速に血抜きや内臓の処理を行うことで、鮮度を保つため。「③動物に応じ、狩猟する月齢を定める」。月齢の指定は最良の肉質を求めた結果である。
 
「肉の味わいは品種、餌、環境で決まります。〝美味しい〟にはその根拠となる背景があるのです。十勝地方ではエゾシカ、ヒグマ、キジバトなどが捕れますが、山なのか平地なのか、どこに生息しているかによって、餌も筋繊維の発達具合も変わる。だから味わいに個性が生まれるんです」

[シャルキュトリ製造部門]
付加価値をつけてフードロスを防ぐ
低需要部位を中心とした肉原料をブロックやミンチにし、塩漬け、マリネ、煮込み、乾燥熟成といった、さまざまな技法を施して加工。シャルキュトリはエレゾのオンラインショップでも販売中

家畜も、ジビエの考えを内包したスタイルで育てる。たとえば豚は山間傾斜地に放牧。筋繊維は旨みとなるため、傾斜を利用して筋肉をつけるのだ。さらに豚は栄養価の高い餌を与え、半年ほどで出荷するのが一般的だが、エレゾでは北海道十勝産の加熱した野菜や牧草を餌とし、1年半かけてゆっくり成長させる。そうすることで、風味豊かな旨みと、軟らかさの中に歯応えのある肉質をつくり出す。

家畜の生産を主に担当するのは、三澤圭季(よしき)さん。豚たちも三澤さんによく懐いている。エレゾの豚は筋繊維が発達しており、“アスリート豚”と親しみを込めて呼んでいるという

「豊頃町は港町ですから、海風を受けた牧草はミネラルが豊富。牧草を食べる動物にもいい影響を与えています」

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《エレゾ エスプリ》
ジビエの余韻に浸るためのヴィラ

 
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text: Nao Ohmori photo: Atsusi Yamahira
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」

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