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《エレゾ エスプリ》の、
その日限りのジビエ料理
北海道の食肉料理人集団が手掛ける
命を学ぶジビエオーベルジュ ②

2023.11.11
《エレゾ エスプリ》の、<br>その日限りのジビエ料理<br><small>北海道の食肉料理人集団が手掛ける<br>命を学ぶジビエオーベルジュ ②</small>

2022年10月、食肉料理人集団「エレゾ」が手掛けるオーベルジュ「エレゾ エスプリ」が北海道・豊頃町にオープンした。エゾシカやヒグマなどのジビエや、生産する三元豚や黒軍鶏などを素材に、至極のジビエ料理を提供。その美味しさとともに、エレゾの哲学を伝えている。
 
今回は、レストランで提供されるジビエ一頭をあますところなくいただくコース料理をお見せしよう。

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命を無駄にしない、
その日限りのジビエ物語

コースは食材の状況により日々異なる。「肉が続いても食べ疲れしないよう、香り、旨み、温度などを少しずつ変えています」

レストランの片隅に、「命の料理人」と書かれた色紙が飾られている。この呼称は、佐々木さんを称するにふさわしい。命ある状態から皿の上まで、すべてをつかさどるのがエレゾなのだ。
 
「肉の一片、血の一滴まで無駄にしない。すべてを濁りなく召し上がっていただくために、素材の味わいを価値高く表現したいと考えています」
 
その思想を体現した料理「命のスープ」からコースがはじまる。エゾシカの骨、スジ、スネ、香味野菜、水のみで仕上げた、琥珀色の美しいコンソメスープだ。胃が温まったところでサーブされるのは、低需要部位を活用した上質なシャルキュトリである。

レストランからのオーダーが少ない、ウデ、モモ、内臓、血液といった低需要部位は、ブロックやミンチなどにかたちを変えた後、シャルキュトリとして加工される

「シャルキュトリは、塩やスパイスを最低限しか使用していません。素材を超えず、素材のポテンシャルをいかに引き上げるかを意識しています」
 
それは料理も同様。料理人としての確かな腕を必須とするシンプルな調理法で、一皿ひと皿を丁寧に仕上げていく。コースは「地場の魚介料理」、「豚の表現」と続き、いよいよ佐々木さんがかつて衝撃を受けたというエゾシカのロースト「蝦夷鹿の表現」へ。
 
「本日は2歳雌と2歳雄のエゾシカをご用意しました。同じ品種、同じ月齢でも、性別や育った環境によって、味や肉質はまるで違うんですよ」
 
雌は軟らかくピュアな味わい、雄は力強く風味豊かだ。ジビエの神髄を感じさせる至高の美味である。
 
「コースはエレゾが伝える命の物語を感じ取れる構成です。オーストラリアの醸造家、マイク・ヘイズがエレゾの肉に合わせて醸造した、5種類のオリジナルワインとお楽しみください」

<第1章>
命のスープ×ブラン・ド・ブラン
手間暇かけて仕上げたコンソメスープ。細胞が再生されていくかのように、身体の隅々まで染み渡っていく。最初の一杯は、心地よい清涼感のあるスパークリングワイン
<第2章>
シャルキュトリ盛り合わせ×シャルドネ
数十種類の中から、時期に応じたシャルキュトリをセレクト。メロンやイチジクの風味を感じさせるシャルドネとともに。ワインに使用されるブドウは、エレゾ専用区画のブドウ畑で栽培されたもの

(写真 左上から時計回りに)

サラミ×パン
自社ファームで育てた放牧豚を熟成させたサラミと、薄くスライスしたパンは相性抜群
 
生ハムとサラミ
赤ワインでマリネして約1年〜1年半熟成させた短角牛の生ハムと、1カ月半熟成させたエゾシカのサラミ
 
パテアンクルート
放牧豚・黒軍鶏・フォアグラのパテのパイ包み焼き。パイ生地とパテのバランスが絶妙
 
ピクルス
近隣の山で採れた山菜のピクルス。酸味は控えめで、山菜そのものの味が楽しめる
 
ブーダン・バナーヌ・ガトー
エゾシカの血液を使用したシナモン風味のテリーヌ。バターソテーしたバナナも中に

<第3章>
地場の魚介料理×ヴィオニエ
大津漁港で水揚げされた秋鮭のマリネに、「命のスープ」の冷たいジュレとニンジンのピューレを添えて。洗練された印象の白ワインとのペアリングが、美味しさの相乗効果を発揮
<第4章-①>
豚の表現×ピノ・ノワール
1年半傾斜地で運動させた放牧豚だからこその独特な歯応えと、豊かな香りを感じられるハム。ワインはベリー系の風味となめらかな舌触りをもつ、ピノ・ノワールを合わせて
<第4章-②>
蝦夷鹿の表現×シラー・ヴィオニエ
2歳のエゾシカの背ロースをロースト。右が雄で左が雌。食べ比べると、軟らかさや旨みの質の違いに驚く。奥はプリッとした食感のハツ。深みのある赤ワインも美味
<終章>
コンポート
コースの〆は、ローズマリーとハーブリキュールで香りづけをしたパイナップルのコンポート。肉の余韻をよりいっそう感じられる

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《エレゾ エスプリ》
究極のジビエ料理の美味しさの理由

 
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text: Nao Ohmori photo: Atsusi Yamahira
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」

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