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《エレゾ》の理念を体現するラボラトリー
北海道の食肉料理人集団が手掛ける
命を学ぶジビエオーベルジュ ①

2023.11.11
《エレゾ》の理念を体現するラボラトリー<br><small>北海道の食肉料理人集団が手掛ける<br>命を学ぶジビエオーベルジュ ①</small>

2022年10月、食肉料理人集団「エレゾ」が手掛けるオーベルジュ「エレゾ エスプリ」が北海道・豊頃町にオープンした。エゾシカやヒグマなどのジビエや、生産する三元豚や黒軍鶏などを素材に、至極のジビエ料理を提供。その美味しさとともに、エレゾの哲学を伝えている。

建物に入った瞬間からフルコースがはじまる

レストラン空間へと続く最初のアプローチ。両サイドの壁には、エレゾが展開する4部門の事業をモチーフに、アーティストユニット「陰陽」が制作したオリジナルの作品が飾られている

北海道十勝地方の東南端に位置する小さな町、豊頃町。ここはかつて開拓に希望を抱いた人々が入植し、今日の十勝地方の礎を築いた土地である。食肉料理人集団「エレゾ」を率いる佐々木章太さんは「食の開拓をし直したい」と、2009年、手つかずの自然が残る豊頃町大津に、拠点となる食肉総合ラボラトリーを建設した。
 

エレゾ エスプリで提供されるコース料理の、ある日のメインディッシュ「蝦夷鹿(えぞしか)の表現」。手前は2歳の雄と雌、奥はハツ。同じエゾシカでも、味わいの違いに驚かされる

エレゾは狩猟・家畜家禽の生産から加工、流通、飲食の提供までを一貫して行う革新的な仕組みを構築している。「まだ第1章です」と佐々木さんは意味深長な笑みを浮かべるが、そんなエレゾの物語のはじまりは2005年のこと。佐々木さんは調理師専門学校を卒業後、東京・西麻布にあるフレンチの老舗「ビストロ・ド・ラ・シテ」などで修業。その後、祖母と母が営む帯広市内のレストラン「繪麗」に就職し、故郷である北海道へ戻った。ある日、常連客が仕留めたばかりの2歳の雌の鹿肉を振る舞ってくれ、その味わいに衝撃を受けたという。

スタッフは料理人経験者が多く、代表の佐々木さんをはじめ、ほかのスタッフも狩猟免許をもつ。ジビエの一次処理、シャルキュトリの製造、家畜の生産に携わるスタッフも、カウンターに立つ

「私がその鹿肉から何を感じたのか。オーベルジュ『エレゾ エスプリ』で追体験してください。ここはエレゾが培ってきた物語の、第1章の集大成。限られた時間ですが、食に没頭し、背景にある命と向き合い、エレゾの哲学に触れていただけたらうれしいです」

オーベルジュの世界観を伝えるシアター。アプローチを抜けると革張りのソファが並ぶウェイティングルームへ案内され、ここでエレゾの世界観を表現した短い映像作品を鑑賞する
レストランは重厚感ある落ち着いた空間。窓がないのは料理と向き合うため。エレゾ エスプリ全体の設計や空間デザイン、インテリアの選定も、佐々木さんが手掛けている

レストラン棟の扉が開いた瞬間、唯一無二の食の体験はスタートする。エレゾを表現したアートが並ぶアプローチを抜け、世界観を伝える映像に抱かれ、そしてたどり着くレストラン空間。佐々木さんやスタッフの方々の出迎えに、期待は最高潮となる。

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《エレゾ エスプリ》の、
その日限りのジビエ料理

 
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text: Nao Ohmori photo: Atsusi Yamahira
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」

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