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《チーザニスタ》
沖縄の暮らしで身近な
ヤギのミルクでチーズづくり【後編】

2023.8.23
《チーザニスタ》<br><small>沖縄の暮らしで身近な<br>ヤギのミルクでチーズづくり【後編】</small>

2022年ロンドンで開催のチーズ大会「Mediterranean Taste Awards®︎2022」でチーズ職人・パメラ・アンさんのヤギチーズが見事金賞を獲得。沖縄のヤギ食文化は知られているが、これまで乳製品は注目されることはなく受賞は快挙。パメラさんに、ヤギチーズをつくろうと思ったきっかけとその魅力について話を聞いた。

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美味しいヤギチーズは手間暇の証し

「ヘイ・ベイビーたち、元気だったの??」。パメラさんはヤギたちにいつも話し掛ける。本当のお母さんのよう

40年ほど前、「ヤギのミルクは身体によい」というニュースを見た山口さんは、本業のかたわらヤギの飼育を開始。「沖縄はヤギ食文化だけどね、ミルクを取るのはとっても大変なわけよ。10頭のうち、原料になるほどのミルクを搾れるのはだいたい3〜4頭。大きいヤギを集めて子ヤギを産ませて改良してね、安定するまでには10年以上かかったさ。除草用にヤギを飼う人は多いけどね、そんなヤギのミルクは臭くて飲めない。うちのヤギは農薬や化学肥料は使わないで育てた沖縄の薬草を4種類、フーチバーやセンネンボク、クワの葉、ニガ菜を食べさせているよ。美味しいヤギミルクを搾ろうと思ったらとんでもなく手間暇がかかるし、ばくちみたいなもんだから誰も仕事にしたくないよね」。
 
と明るく笑う山口さんは、新鮮なミルクを飲み続けて40年間、病院要らず、二日酔い知らずで肌もツルッツル。今年81歳とは思えない若々しさだ。栄養価が高く、消化吸収がいいヤギのミルクは身体に優しいとされ、さまざまな分野で活用されているが、実は、パメラさんと出会うまでは、販売することはなく、自身で消費したり、病気がちな人に無償で分けていた程度だったという。

ベテランのママさんヤギをスタンドにセットしてミルクを搾る山口さん。ホコリなどが混ざらないように、乳頭にペットボトルの口を近づけて搾乳する。毎日1頭から約2本分のミルクを取る
センネンボクをヤギに。ヤギの出産では、一度に生まれるのは2頭だが、3度目以降の出産の場合は4頭生まれることも

当初、パメラさんはミルクを仕入れに来るだけだったが、一人で牧場を切り盛りする山口さんを見ているうちに、いつしかヤギたちの世話をするようになった。
 
「はじめて山口さんのミルクを飲んだときはその美味しさに本当に驚きました。ヤギの臭いが全然ないし、味に透明感がある。手伝うようになって山口さんのミルクがなぜ美味しいのかわかりました。これほどの情熱と手間をかけてヤギを育てている人はいないでしょう。ミルクをチーズの原料としか見ていなかったら、山口さんの苦労や愛情を知ることもなく、お世話するヤギたちから喜びをもらうこともなかった。美味しいチーズをつくらせてもらって、心から感謝です」

チーズからバターまで!
パメラさんがつくる乳製品

マリネードティリー
ヤギのミルク2160円(右)。牛のミルク(右)1590円。ギリシャハーブとオリーブオイルでマリネしたチーズ。そのままおつまみにしたり、サラダにトッピングしても。オリーブオイルはドレッシングにもなる

沖縄ヨーグルト
ギリシャの伝統的な水切り製法でつくる牛ミルクのヨーグルト。フルーツやハチミツを添えても美味しい。オリーブオイルと混ぜて、肉や魚料理のソースとしても。180g600円

フレッシュヤギ(カティキ)
ギリシャ風クリームチーズ。お好みで青ネギや塩、コショウ、ニンニクを混ぜてディップに。好きな野菜やクラッカー、バゲットに付けて。おつまみにも朝食にも。100g1390円

ヤギのブリー(プレーン)
本来は牛のミルクでつくるが、これはパメラさんオリジナルのヤギのブリー。白カビタイプのチーズ。ほかにも墨・トリュフ・ビーツの3種類がある。スパークリングワインやロゼワインとよく合う。100g2160円

ブルーチーズ
牛のミルクからつくったブルーチーズ。青カビの風味を残しつつも癖のないとても優しい味わい。ブルーチーズは苦手という人にぜひ試してほしい。梨やハチミツとの相性が抜群。赤ワインと合わせて。100g1728円

牛のゴーダチーズ
オレガノ(上)、チェダーチリペッパー(中)プレーン(下)。サラミやクラッカーと一緒に、白ワインや赤ワインどちらとも美味しくマッチ。表面をコーティングしているワックスは取っていただこう。100g1728円

ペパージャックティリー
チリペッパーとピーマンの風味たっぷりのチーズ。そのままおつまみに、チキンと一緒にサンドイッチにしても美味しい。ビールとよく合う夏らしいチーズ。100g牛1300円、ヤギ1940円

ヤギバター
プレーン、沖縄ハーブ&島らっきょう入りの2種類がある。ヤギミルクから生クリームをつくり、沖縄の塩を少しだけ追加したバターは、コクがありまろやか。ヤギを感じさせない、ふわふわと優しい味わい。80g1080円

ヨーグルトをアレンジしたザジキを料理に
肉や魚料理にはギリシャのディップ、ザジキを合わせたい。ザジキのつくり方は、沖縄ヨーグルトとおろしキュウリとおろしニンニク・塩・コショウを混ぜるだけ。写真のピタパンやラムケバブはチーザニスタでも購入可能

読了ライン

ショップにあるチーズ工房。機械はギリシャから取り寄せた。店はギリシャワインの輸入会社も兼ねており、長男の太陽さんもお手伝い。予約制のギリシャ料理とワインのイベントはすぐに満員。チーズやヨーグルトづくりを学べるスクールも開校中

チーザニスタ
住所|沖縄県沖縄市久保田3-1-9 プラザハウスショッピングセンター
Tel|080-8566-0802
営業時間|11:00〜19:00 
定休日|火〜水曜
 
※商品の価格は変動する場合があります

text: Kiyomi Gon photo: Chotaro Owan
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」

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