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ジュンク堂書店 那覇店が選ぶ
沖縄をもっと知るための本10選

2022.7.31
<small>ジュンク堂書店 那覇店が選ぶ</small><br>沖縄をもっと知るための本10選
『サンマデモクラシー 復帰前の沖縄でオバーが起こしたビッグウェーブ』
発行|イースト・プレス

1万5000冊を超える沖縄関連本を取り扱うジュンク堂書店 那覇店の店長に、街を歩くだけではわからない沖縄の一面を知れる本を教えていただきました。すべて読破すれば、あなたも沖縄についてより語れるかも!?

選んでくれたのは……
ジュンク堂書店 那覇店
店長 森本浩平さん

2009年、ジュンク堂書店 那覇店の開業時に那覇に移住。以来、さまざまな沖縄の風景を見てきた。5月には、椎名誠さん、花村萬月さん、吉田修一さんらによる、沖縄を描いた10作品を森本さんが厳選した本(右)が刊行。芥川賞作家作品3作、沖縄書店大賞作品2作も収録。「本書から、沖縄の土地と人のパワーを感じ、新しい沖縄への価値観が生まれるはずです!」

『つながる沖縄近現代史』
沖縄の出版社から2021年に発売された一冊。ありそうでなかった「沖縄近現代史」の入門書であり、“つながる”をテーマに、1800年代にペリーが沖縄へ来航した頃から本書はスタート。日露戦争、琉球処分、沖縄戦、日本復帰など、若手歴史研究家たちによって最新研究を基に15の章で新たな視点をもってつづられています。そこから現在の沖縄が置かれた課題が、いまもなおすべてつながっていることがわかります。本章以外に社会学者・岸政彦さん、琉球歴史家・上里隆史さんはじめ、沖縄に関わる総勢25名の研究者によるコラムも興味深いです。

価格|2420円
編集|前田勇樹、古波藏契、秋山道宏
発行|ボーダーインク

『「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学』
ー心まで占領されてしまったのだと感じたー 1945年から日本復帰までの27年間に及ぶ米軍統治下時代、米国陸軍による留学制度によって、アメリカ留学した1000人余りの沖縄の若者たちがいました。当時、沖縄では留学者たちはエリートとされましたが、さまざまな苦悩に直面します。どのような想いで留学し、アメリカ本土で何を見たのか。そして“米留組”がいまの沖縄に遺したものとは? はじめて明らかになるアメリカの思惑。著者自身が「米留二世」であり、多くの留学者の方に直接取材。そこから新たな沖縄戦後史の情景が見えてきます。

価格|946円
著者|山里絹子
発行|集英社

『宝島 上・下』
第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞(小説部門)受賞作。米軍統治下時代、実際に起きた事件をベースに、戦後の実態を描いたエンターテインメント小説です。1952年から’72年の本土復帰までのコザ(沖縄市)が舞台。米軍基地に忍び込み、略奪した物品を住民に分け与える“戦果アギヤー”の若者らが主人公で、その“英雄”をめぐるストーリー。直木賞受賞後、沖縄ではメディアで連日取り上げられるなど、社会現象というほど大きな話題となりました。激動の沖縄戦後史を、圧倒的な熱量の小説で感じ取り、知ることができる一冊。

価格|上924円、下715円
著者|真藤順丈
発行|講談社

『サンマデモクラシー 復帰前の沖縄でオバーが起こしたビッグウェーブ』
2021年に公開の映画『サンマデモクラシー』が書籍化。復帰前、沖縄がアメリカ占領下の時代、理不尽な統治をするアメリカに立ち向かった人々がいました。サンマには輸入関税がかけられていましたが、関税がかかると指定された魚の項目にサンマがなかったことが発覚。庶民の味として食べていたサンマの税金をめぐり、魚屋を営むおばぁ・玉城ウシが還付訴訟を起こし立ち上がります。アメリカが最も恐れた政治家・瀬長亀次郎、弁護士・下里恵良など、権力に屈しない沖縄の男たちも登場し、アメリカを追い詰める民主主義をめぐる闘いとなっていきます。

価格|1650円
著者|山里孫存
発行|イースト・プレス

『増補改訂 ぼくの沖縄〈復帰後〉史プラス』
沖縄の出版社・ボーダーインクの編集者である新城和博さんが、復帰後の沖縄を振り返ったエッセイ。第3回「この沖縄本がスゴい!」受賞作。1972年の復帰から沖縄の出来事を年ごとに、自身の当時の想いを呼び起こし描かれています。ドルから円への通貨交換時に、当時小学生の著者が感じた思い出、安室奈美恵さんの大ブレーク、ドラマ『ちゅらさん』ブームの沖縄での様子や、大田昌秀知事の誕生、沖縄サミット開催、沖国大への米軍ヘリ墜落など、芸能から政治、基地問題に至るまで、県外とはまったく違った沖縄の50年をリアルに体感できる一冊です。

価格|1320円
著者|新城和博
発行|ボーダーインク

『消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影』
1996年に沖縄へ移住し、多岐にわたる分野の沖縄本を出版してきた作家・仲村清司(現在は京都在住)。本書は“沖縄への遺言”として、20年目にして沖縄から離れる決意をもって書かれた一冊。大阪で生まれ育った仲村さんは、両親ともに沖縄出身の沖縄人二世。自身のルーツへ移住するも、ウチナーンチュになりきれない立ち位置に翻弄され苦悩。沖縄で見てきた基地問題、信仰、文化、風土に至るまでを相当な覚悟でつづっています。特異な立場で憂慮する仲村さんの遺言は、本書が発売される2016年までの沖縄の変遷を知ることができます。

価格|858円
著者|仲村清司
発行|光文社

『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 上・下』
ノンフィクション作家・佐野眞一さんが2008年に出版。タイトルの通り、知られざる沖縄をテーマに沖縄の密貿易、ヤクザ、ヒットマン、沖縄県警、軍用地主、政財界などを徹底取材。南国の楽園のイメージを覆すような、沖縄の“闇”が晒されています。何度も沖縄を訪れ、著者自らが多くの人に直接会って話を聞いていく、綿密な取材力にも圧倒。決して公には描かれない沖縄の現代史ともいえ、本書はいまもなお移住者、県外者にとっての“沖縄を知るバイブル”です。沖縄社会の表裏を垣間見ることで、また新たな沖縄が浮かび上がってきます。

価格|上・下ともに825円
著者|佐野眞一
発行|集英社

『ヤンキーと地元』
沖縄の暴走族に10年にもわたって自らパシリとして加わり、ヤンキーを観察し研究した社会学者・打越正行さんがつづった一冊。第6回沖縄書店大賞(沖縄部門)大賞受賞作。年齢がかなり離れた暴走族の若者たちの、一番下の舎弟となって時間をともにし、人間関係を築いて心を開かせていく。先輩後輩の絶対的関係性や、建設業界、性風俗業界とのつながりなど、ヤンキーの社会構造がリアルに炙り出されています。そこから見える彼らの人間性、そして沖縄が置かれる背景とは。ここまでの覚悟で調査に臨んだ学者は、後にも先にも類を見ないでしょう。

価格|1980円
著者|打越正行
発行|筑摩書房

『沖縄のことを聞かせてください』
―ヤマトの人間がこの曲を発表していいのだろうか?― 大ヒット曲「島唄」を制作発表した音楽家・宮沢和史さんが、県外者としてかかわり続けた沖縄への想い、そして歴史や文化に対しての想いをつづった一冊です。元ボクシング世界王者・具志堅用高さん、現代美術家・山城知佳子さん、八重山民謡歌手・大工哲弘さん、お笑い芸人兼作家・又吉直樹さん、映画監督・中江裕司さん、桜坂劇場プロデューサー・野田隆司さん、演出家・平田大一さんなどといった、沖縄とかかわり活動するさまざまな識者たち10人と、宮沢さんの対話集です。

価格|2420円
著者|宮沢和史
発行|双葉社

『沖縄島料理 食と暮らしの記録と記憶』
2020年沖縄書店大賞(沖縄部門)の準大賞に選ばれた、岡本尚文・島探訪シリーズ『沖縄島建築』の第2弾。老舗の料理店や喫茶店主から話を聞き、創業時からの変遷、かかわる人々、それらの語られる言葉が戦後の沖縄を映し出します。42店の紹介に交え、沖縄料理の歴史や食材のイラスト解説、コラムもあり興味深いです。写真家・岡本さんが企画監修し、沖縄出身のたまきまさみさんとタッグを組み、県外者の俯瞰的視点と、地元感覚を失うことなく紹介される店舗のセレクトが秀逸。店が歩んできた事情を知ることで、何よりも行きたい気にさせられます。

価格|2090円
監修|岡本尚文
発行|トゥーヴァージンズ

『沖縄。人、海、多面体のストーリー』
価格 814円、編者 森本浩平、発行 集英社

ジュンク堂書店 那覇店
専門書なども幅広く取り扱い、店内在庫は約150万冊を誇る那覇の大型書店。トークライブや握手会、朗読会といったイベントも多数開催している

住所|沖縄県那覇市牧志1-19-29
Tel|098-860-7175
営業時間|10:00~21:00
定休日|不定休

text: Kohei Morimoto photo: Kengo Tarumi
Discover Japan 2022年7月号「沖縄にときめく/約450年続いた琉球王国の秘密」

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