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《チーザニスタ》
沖縄の暮らしで身近な
ヤギのミルクでチーズづくり【前編】

2023.8.23
《チーザニスタ》<br><small>沖縄の暮らしで身近な<br>ヤギのミルクでチーズづくり【前編】</small>

2022年ロンドンで開催のチーズ大会「Mediterranean Taste Awards®︎2022」でチーズ職人・パメラ・アンさんのヤギチーズが見事金賞を獲得。沖縄のヤギ食文化は知られているが、これまで乳製品は注目されることはなく受賞は快挙。パメラさんに、ヤギチーズをつくろうと思ったきっかけとその魅力について話を聞いた。

パメラさん(中)とチーザニスタを手伝う長女のピアさん、ヤギ農家の山口栄秀さん、生後3カ月目のヤギ。広大な敷地にはヤギのほかにも、闘牛用の巨大な牛や肉用牛、パメラさん専用の馬「サクラ」がいる。パメラさんとピアさんは毎朝牧場へ来て、掃除や食事の準備をし、必要であればブラッシングや爪切りなども行う

沖縄の暮らしで身近なヤギ食文化の新展開

沖縄市の「プラザハウスショッピングセンター」にある「チーザニスタ」は、パメラ・アンさんが営む工房を兼ねたチーズ専門店。ショーケースには沖縄県産のヤギや牛のミルクからつくるチーズやヨーグルト、バター、ギリシャ料理が並ぶ。パメラさんの無添加のチーズやヨーグルトは、ヤギや牛の個性がとても上品で、深いコクがありまろやかで後味は爽やかな味わい。パメラさんの牛のチーズは、創業以来数々のチーズコンテストで受賞を果たしており、2021年には「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」と「World Cheese Awards」でダブル金賞を獲得。そして、昨年の「Mediterranean Taste Awards®︎2022」では、ヤギのチーズで金賞を手にした。
 
県内外のホテルや大手セレクトショップ、有名デパートからも引き合いがあり、自社のオリジナル商品を考えてもらえないか? という問い合わせも多い。

「ザ・リッツ・カールトン沖縄」総料理長のマルチェッロ・メレウさんは、パメラさんのヤギチーズを食べたとき、故郷イタリア・サルデーニャ島のチーズのような、フレッシュで品のある素朴な味わいに感動したという。現在ホテルでは朝食でリッツのためにつくった3種類のヨーグルトを提供。ロビーラウンジ&バーやルームサービスでのメニュー化も進んでいる

アメリカ出身のパメラさんだが、20代の頃に縁あって来日し、いくつものネイルサロンやスクールを立ち上げた。その後、子どもたちとともに、昔から憧れていたギリシャへ渡る。
 
「ギリシャでは、家庭でつくられる伝統食のフェタチーズがとても美味しくて。自分でもトライしてみたくなり、最初は独学で、そのうち発酵や熟成についてさらに学びたくなって、テッサロニキ州立のアリストテレス大学を卒業しました」
 
ギリシャの財政危機をきっかけに、沖縄に拠点を移したパメラさんは、ゼロからのスタートで、伊計島にコンテナのギリシャレストランをオープン。在日アメリカ人を中心に、本場のギリシャで学んだ料理の美味しさが口コミで広がり、チーズやヨーグルトの注文も受けるようになっていく。その後、チーズ工房のある読谷村の高台に移転したのだが、チーズの製造が追いつかなくなり、専門店として現在の場所に落ち着いた。
 
「世界最古のチーズといわれるギリシャのフェタチーズは本来、ヤギや羊のミルクでつくるもの。沖縄はヤギ汁やヤギの刺身を食べるのに、ミルクを買えるところがなかった。私が新聞で紹介された記事を見たヤギ農家の山口栄秀さんから連絡をもらい、念願のヤギチーズをつくることができました」

読了ライン

ヤギの妊娠期間は5カ月。7・8月に交配して、1〜3月の間に出産する
牛乳より消化がよいとされているヤギミルク
ギリシャオレガノのゴーダチーズを使った一皿

 

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text: Kiyomi Gon photo: Chotaro Owan
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」

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