TRADITION

キーアイテムは村正の刀剣!中村勘三郎・坂東玉三郎出演の人気狂言
シネマ歌舞伎〈籠釣瓶花街酔醒〉

2023.5.2
キーアイテムは村正の刀剣!中村勘三郎・坂東玉三郎出演の人気狂言<br><small>シネマ歌舞伎〈籠釣瓶花街酔醒〉</small>
©松竹

歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。毎月、バラエティに富んだラインナップで全国34の映画館で上映。2023年5月の上映作品は『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』。5月5日(金祝)~11日(木)の上映の前にあらすじや作品背景を予習しよう。

華やかな吉原で巻き起こる愛憎劇。
村正の妖刀「籠釣瓶」が悲しい結末をもたらす?!

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上州佐野の絹商人 佐野次郎左衛門は、江戸で商いをした帰りに、話の種にと桜も美しい吉原へやってくる。初めて見る華やかな吉原の風情に驚き、念願の花魁道中も見ていよいよ帰ろうとするところへ、吉原一の花魁、八ツ橋の道中と遭遇。この世のものとは思えないほど美しい八ツ橋に次郎左衛門は魂を奪われてしまうのだった。
それから半年、あばた顔の田舎者ながら人柄も気前もよい次郎左衛門は、江戸に来る度に八ツ橋のもとへ通い、遂には身請け話も出はじめる。しかし八ツ橋には繁山栄之丞という情夫がいて…。

吉原で実際に起きた事件
「吉原百人斬り」が題材


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本作は、痴話喧嘩が元で吉原の遊女をはじめ、周囲の人々が惨殺され、俗に「吉原百人斬り」と言われた、享保(1716~35)年間に起きた実際の事件を基に書かれた作品。
江戸時代の吉原の風俗を織り込んだ原作は八幕からなる大長編だったが、現在では「見染め」「愛想尽かし」「殺し」の場を主軸に物語が展開、歌舞伎の人気狂言のひとつとして、上演を重ねている。

華やかさ満点の花魁道中と出演者


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最初の幕「見染め」は、江戸随一の繁華街である吉原の風景も見どころと言えるだろう。豪華絢爛な花魁道中が繰り広げられるこの場面では、傾城の贅を尽くした衣裳の美しさ、つま先を外に向け八の字型に足を運ぶ独特の歩き方・外八文字を踏んで花道を行く姿など、歌舞伎ならではの艶やかさがある。
そして、治郎左衛門が八ツ橋と出会い、茫然となる様子、さらに、その治郎左衛門の姿を見た八ツ橋がほほ笑む場面がこの幕のハイライトだ。
全盛を誇る吉原の傾城の色気や格を要求される大役の八ツ橋を演じるのは坂東玉三郎。八ツ橋に一目ぼれする田舎商人 治郎左衛門を中村勘三郎、八ツ橋の情夫・栄之丞を片岡仁左衛門が勤めている。

物語のキーアイテムは村正の刀「籠釣瓶」


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二幕目は八ツ橋を巡っての三角関係となる次郎左衛門と栄之丞の関係性が巧みに描かれる。続く三幕目の「八ツ橋部屋縁切りの場」は歌舞伎の数ある愛想づかし(不本意ながら縁を切ること)の中でも、代表的な場面であり、この作品最大の見せ場となっている。また、八ツ橋の仕打ちに対し、「花魁そりゃあんまりそでなかろうぜ」と始まる治郎左衛門の台詞は、台詞回しに演者の技巧が求められる聴きどころだ。
そして大詰は、一度抜くと血をみずにはおかないという、村正の妖刀「籠釣瓶」が登場。村正は伊勢国桑名(現在の三重県桑名市)で活躍した、千子村正(せんごむらまさ)を祖とする刀工一派。彼らの作る刀はその切れ味の良さから評判だったが、江戸時代には徳川家に災いをもたらす不吉な刀といううわさ話広がり「妖刀村正」と恐れられた。この「籠釣瓶」により、殺人事件が起きることになる。
本来、凄惨な場面となる殺しの様子を歌舞伎ならではの美学をもって、哀切漂う美しい場面として仕立て上げている点も必見。歌舞伎美溢れる本作を映画館で楽しもう。

本作は前回紹介した、前の(第四期)歌舞伎座での閉場直前に開催されたさよなら公演の舞台を収録。作品と併せて、旧歌舞伎座の劇場の雰囲気も堪能しよう。

読了ライン

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月イチ歌舞伎 2023 上映作品
『籠釣瓶花街酔醒』

公開日|2023年5月5日(金・祝)~11日(木)※東劇のみ5月12日(金)以降も上映(詳しくはこちら
上映館|東劇ほか全国の映画館にて
料金|一般2200円、学生・小人1500円
出演|中村勘三郎 坂東玉三郎 中村魁春 中村勘九郎 中村七之助 中村鶴松
市村家橘 片岡亀蔵 片岡市蔵 坂東彌十郎 片岡秀太郎 片岡我當 片岡仁左衛門
(平成22年2月 歌舞伎座公演)
※同時音声解説のイヤホンガイドアプリはこちら

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