佐賀・唐津市
《ON THE CLIFF 宗 秀明》
離島の暮らしを守る、1日1組のホテル
|九州観光まちづくりAWARD2026 大賞
JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2026年も開催。過去最多の100組を超えるエントリーの中から、大賞を受賞したのは「ON THE CLIFF 宗 秀明」。生まれ育った島の暮らしを守るため、島の新たな産業としてグランピング施設「ON THE CLIFF」をオープン。島の日常を特別な体験として宿泊客に届け、島に新しい循環を生んでいる。
line
漁業だけに頼らず
島で生きる選択肢を増やす
玄海灘に浮かぶ佐賀県・松島。コンビニも信号もない、周囲3.6㎞の小さな島だが、海とともに育んできた営みや、キリシタンが切り開いた歴史など、未来へ残すべき文化が息づいている。

島の主な産業は漁業。しかし、「漁業だけでは島の暮らしを守れない」との危機感から立ち上がったのが、宗秀明さんだ。進学を機に島を離れ、島外で就職した後、父の背中を追ってUターン。念願だった海士となった。
しかし、地球温暖化による海水温の上昇で藻場が衰退したことで漁獲量が減り収入が減少。若者の島外流出や人口減少など厳しい現実に直面する。

そこで宗さんは、漁業だけに頼らず、島で生きる選択肢を増やすべく、漁業を本業とする島の仲間とプロジェクトチーム「Island MATSUSHIMA」を設立。2022年、島初の宿泊施設として、1日1組限定のグランピング施設「ON THE CLIFF」を開業した。

島から借り上げた崖を島民と一緒に整備して建てたドームテントからは、玄界灘を一望し、長崎の壱岐まで見渡せる絶景が広がる。目指すのは、島を観光地化することではなく、島民が暮らす生活の場を守りながら、その価値を届けること。1日1組限定だからこそ、宿泊客は船に乗り、漁師と話し、魚を釣るなど、島の日常に触れながら島民との深い交流が可能になる。ありのままの島の暮らしが、都会にはない特別な体験となって何度も訪れたくなる魅力となっている。


line
島の雇用を生む
循環型ステイの仕組み

宿泊客の受け入れは島内の仕事づくりにもつながる。食材の魚介類は海士や漁師から仕入れ、野菜は農家から調達。施設の準備や清掃は島の女性たちが主に担い、料理も島内のレストランと提携。観光による消費を、島の収入へ循環させる仕組みを築いている。

その成果として、宿には年間約260人が訪れ、約23%がリピーターに。アワビやサザエなど食材の仕入れや運営サポートによる島民への発注額は年間約200万円に上る。また、島内の仕事が増えたことで人口は40人から50人へ増加。20~30代の若い世代が増えたことも特徴だ。

さらに宗さんは、塩づくりや百花蜜の養蜂、絶景スポット・とんこ山の登山道整備など、新たな地域資源づくりにも挑戦。「子どもたちが島の暮らしを続けられる環境を、自分たちの手でつくっていきたい」と宗さん。
建築家・永山祐子さんは、「島を動かした一人の“個の可能性”を感じました。明るい日本の未来を感じさせます」と期待を寄せた。
line

《PAAK DESIGN》
≫次の記事を読む
ON THE CLIFF
住所|佐賀県唐津市鎮西町松島3489
Tel|090-2435-5497
料金|1泊2食付2名7万7000円~(税・サ込)
客室数|1棟
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00 OUT|12:30
施設|サウナ、レストランなど
https://onthecliff.jp
01|「九州観光まちづくりAWARD2026」、結果発表!
02|佐賀・唐津市「ON THE CLIFF 宗 秀明」
03|宮崎・日南市「PAAK DESIGN」
04|福岡・大川市「庄分酢」
05|鹿児島・薩摩川内市「原田米店」
06|熊本・甲佐町「パレット」
07|宮崎・日向市「美々津プラザ」
08|最終ノミネート者の皆さん
09|「九州観光まちづくりAWARD2026」を振り返ろう
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2026年10月号「感性の刺激する場所へ。/九州」


































