TRADITION

天下人・豊臣秀吉が築いた、幻の名城・名護屋城跡に「黄金の茶室」がよみがえる!
佐賀県立名護屋城博物館

2022.3.28 PR
天下人・豊臣秀吉が築いた、幻の名城・名護屋城跡に「黄金の茶室」がよみがえる!<br><small>佐賀県立名護屋城博物館</small>
外光を遮った真っ暗な空間に浮かび上がるように輝く「黄金の茶室」

2022年3月27日(日)、天下人・豊臣秀吉がつくらせた「黄金の茶室」(復元)が、「佐賀県立名護屋城博物館」にて一般公開がはじまった。なぜ、佐賀県唐津市に? なぜ、名護屋城跡なのか? その答えは、名護屋の歴史・文化をたどると見えてくる。完全再現された黄金の茶室の見どころとともにひも解いていく。

黄金の茶室は豊臣秀吉の権力、
財力の象徴でもあった?

佐賀県立名護屋城博物館では、日本列島と朝鮮半島との交流史をテーマに、豊臣秀吉ゆかりの調度品や武具などをはじめ、約220点の資料を展示

豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に際して、拠点として築かれた名護屋城。城の面積は約17haと当時では大坂城に次ぐ規模で、1592(文禄元)年の開戦から豊臣秀吉が亡くなるまでのわずか7年だけ隆盛を誇ったことから“幻の名城”とも称される。周囲には徳川家康、伊達政宗、前田利家など諸大名の陣屋が150以上構築され、全国から20万人を超える人々が集ったとされている。

その名護屋城跡に隣接する「佐賀県立名護屋城博物館」にお目見えしたのが黄金の茶室だ。「はじまりの地 今、ふたたび。」と称して同日実施された「名護屋城大茶会」を機にお披露目と相成った。

実際に使われた際も屋内に設えられた「黄金の茶室」。電灯などがなかった当時、淡い灯火の中でどのように見えていたかを考えるのも一興だ

黄金の茶室は豊臣秀吉がつくらせたとされ、通常の茶室建築とは一線を画す屋内用の組み立て式であることが特徴のひとつ。京都御所での茶会や北野大茶湯、大坂城での大名との対面などで使用された後、文禄の役に際し名護屋城にも運ばれた歴史があり、文献によると名護屋城では4回の使用が確認されているそうだ。

今回の公開にあたり、当時、名護屋城で黄金の茶室での茶会に参加した博多の豪商・神屋宗湛が記した「宗湛日記」などから黄金の茶室を完全再現。壁、柱、天井はもちろん、茶道具も茶筅と茶巾以外すべて金で飾られ、豪華絢爛。まさに、天下人であった秀吉の権力、富の象徴ともいえる茶室だ。

400年以上前の景色を残すタイムカプセル

黄金の茶室の広さは、『宗湛日記』に記された「金の御座敷の事 平三畳なり」との記述をもとに、横長の3畳間に。畳表は赤の毛織物、障子には文様のある赤の絹織物が貼られている

黄金の茶室の制作を担当したのは、国宝・重要文化財などの修復なども手掛ける「はせがわ美術工芸」。文化財などにも使用される金箔1万6500枚を使用し、柱や壁、天井などはすべて金一色だ。黄金の茶室の本格的な再現は全国で4例目だが、いつでも無料で見学可能なことに加え、写真撮影もOK。さらに定期的にイベントを実施し、実際に茶室内で茶も楽しむことができるという。

佐賀県立名護屋城博物館の学芸員・安永浩さんは「この地域は、名護屋城が築かれる前は田舎の漁村でした。しかし、半年ほどの短い期間で巨大な城が築かれ、豊臣秀吉をはじめ諸大名が集結し、世界でも有数の巨大な都市が出現したのです。そこには、茶の湯や能をはじめとする桃山文化の粋が集まり、その発信地にもなりました。つまり、ここ名護屋は、その後の日本文化発展に大きな影響を与えた『はじまりの地』ともいえます」と話す。

博物館横に残る名護屋城の石垣は、江戸時代初期に幕府の関与によって破壊されたといわれている。石垣の要である角を破壊することで、二度と修復できないようにする狙いがあったという

わずか7年のみという名護屋城の隆盛。豊臣秀吉亡き後、出兵拠点という役割を終え、名護屋城や大名の陣屋は廃城に。現在は石垣や天守台、本丸御殿跡などが、往時の面影をいまに伝えている。

「名護屋城が役目を終えた後、この地域はもとの漁村に戻りました。逆にそうなったからこそ、その後も大きな開発が進むことなく名護屋城跡は当時のままの姿を残しているともいえます。400年以上前の歴史をいまに伝えるタイムカプセル。そのような視点で、黄金の茶室や博物館の展示、名護屋城跡を見ていただけると、おもしろみが増すかと思います」と安永さん。

黄金の茶室をきっかけとした日本の歴史・文化のルーツをたどる旅――。

この春、歴史や文化はもちろん、食や自然など魅力あふれる観光資源にも出会える肥前名護屋城エリアへ、文化ツーリズムに出掛けてみてはいかがだろうか。

毎年春になると名護屋城跡に桜が開花。大手口を上った先にある天守台からの眺望も絶景。天候がよければ、壱岐や対馬まで見渡せる

佐賀県立名護屋城博物館
住所|佐賀県唐津市鎮西町名護屋1931-3
Tel|0955-82-4905
開館時間|9:00~17:00
入館料|なし(※特別企画展は有料)
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)

 

≫公式サイトはこちら

 

テーマ展「館蔵名品展2022」開催中!
「黄金の茶室」にちなんだ豊臣秀吉や黄金・名護屋城に関する資料など、新規収蔵資料を中心に紹介。
会期|~2022年5月22日(日)
会場|佐賀県立名護屋城博物館 企画展示室
観覧料|なし

text: Tsutomu Isayama photo: Kousaku Kitajima

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