岡山県玉野市《Power Base》
妹島和世が手がける「未来の工場」
自然エネルギーの普及を進めるパワーエックスは、岡山県玉野市に日本最大級の蓄電池組立工場「Power Base」を建設する。2023年からテスト生産を行い、2024年春からEV急速充電器や定置用蓄電池などの出荷を開始する予定だ。建設地は、本州と瀬戸内海の島々をつなぐ玄関口のひとつである宇野港からほど近い、運河に面したところにある。敷地面積は約2万8272㎡で、蓄電池の生産ラインをはじめ、研究開発センター、オフィススペースなども敷地内に設置される。建築設計を手がけるのは、建築家・妹島和世氏。敷地にある既存の建物と周囲のスケールに対応した大きな屋根が特徴で、緩やかにカーブしながら、その下に点在する大小様々なサイズのオフィス、研究開発センター、会議室などをつなげるデザインとなる。
妹島和世(せじま・かずよ)
建築家。1987年妹島和世建築設計事務所設立。1995年西沢立衛とともにSANAAを設立。2010年第12回ベネチアビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターを務める。日本建築学会賞*、ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞*、プリツカー賞*、芸術文化勲章オフィシエ、紫綬褒章などを受賞。主な建築作品として、金沢21世紀美術館*(金沢市)、Rolexラーニングセンター*(ローザンヌ・スイス)、ルーヴル・ランス*(ランス・フランス)などがある。*はSANAAとして。
美しい海と島々、
造船発祥のまち
Power Baseが建設される、岡山県玉野市は南端に位置し、瀬戸内海の美しい自然環境に恵まれていることに加え、地震などの災害が少なく、とても住みやすい港町。市の中心部にある宇野港は、瀬戸内海の海上交通の重要拠点として発展し、フェリーの定期航路のほか、大型船舶が着岸できる耐震バースには年間を通じて多くの国内外クルーズ船が入出港。造船業の企業城下町として発展してきたこともあり、多くの造船関連企業が集積する「ものづくりのまち」といわれ、製造業が中心となっている。また、3年に一度開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の会場のひとつとして、芸術祭屋外作品が点在したアートサイトもあり、国内外から多くの観光客が訪れる。
妹島氏が手がける、
自然と共存する最先端の「未来の工場」
年間約1万台分の蓄電池製品に相当する最大5ギガワット時(GWh)を生産する工場は、太陽光、風力といった自然エネルギー源による電力の安定的な供給を実現させる蓄電池製品を生産する拠点。工場としての機能だけでなく、周辺の自然や生態系と調和することで従業員にとって快適な環境でありながら、好奇心を刺激したり、地域との交流拠点ともなるという。
敷地にある既存の建物と周囲のスケールに対応した大きな屋根により、新しい働く空間を作成。この屋根は緩やかにカーブしながら、その下に点在する大小さまざまなサイズのオフィス、研究開発センター、会議室などとつながっていく。少しレベルの高いプレゼンテーションルームからは、瀬戸内の美しい海と島々を望むことができる。敷地にもともと建っていた建物を活かしながら、誰もが訪れたくなる「新しい働く場」になるとしている。
妹島氏の設計に加え、自動化生産ラインの導入などにより、環境負荷の少ない、かつ効率よい生産工程を実現させる、社会と共に持続的に発展する工場として、地域の生物多様性の保全に貢献している。
⾃然エネルギーの普及拡⼤を⽬指すクリーンな次世代の蓄電池⼯場として、また地域の交流拠点ともなる、機能性と⾃然が融合した「Power Base」のこれからに注目だ。
Power Base
http://plant.power-x.jp/
Photo: PowerX, Inc.