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青森県弘前市 大阪屋の「竹流し」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2024.8.25
青森県弘前市 大阪屋の「竹流し」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は1630年創業の老舗、大阪屋の「竹流し」を紹介します。

福田里香(ふくだ りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

「竹流し」と書かれた掛け紙。

「民藝運動の創始者である柳宗悦の名著『手仕事の日本』になぞらえて言えば、「竹流し」は「食べる手仕事の日本」です。

青森県弘前市は、江戸時代に津軽藩と呼ばれた地方の城下町。この町で藩の御用菓子司を務めてきたのが1630(寛永7)年創業「大阪屋」です。

伝統の暖簾を受け継ぐ老舗で銘菓揃い。その中でも1773(安永2)年からつくり続ける「竹流し」は、和クッキーと呼びたい蕎麦の風味豊かな極薄の焼き菓子です。麺棒一本で仕上げる技法は、長子口伝とされてきました。

薄い板状に焼かれた生地を口に含むとパリンと割れて得も言われず香ばしい。蓋を開けると缶にぴっちり詰まった姿は、何度見ても魅入られてしまう美しさです。

また大阪屋の立地も民藝的に素晴らしい。前述の『手仕事の日本』で柳が絶賛した津軽の刺し子「こぎん刺し」をいまなおつくり続ける「弘前こぎん研究所」から徒歩5分の場所にあるのです。弘前に民藝旅行の際には両店に立ち寄ることをぜひお忘れなく。

弘前城と岩木山を描いた包装紙。棟方志功が同郷の先輩と敬愛した野沢如洋の筆

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御菓子司 大阪屋
住所|青森県弘前市本町20
Tel|0172-32-6191
営業時間|8:30〜17:30
定休日|なし

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2024年9月号「木と暮らす」」

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