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サステイナブルなうつわ産地。
有田の次の400年はSDGsから生まれる?
中編|有田町のSDGs取り組み事例

2021.8.12 PR
<small>サステイナブルなうつわ産地。</small><br>有田の次の400年はSDGsから生まれる?<br><small>中編|有田町のSDGs取り組み事例</small>

400年続くサステイナブルな日本有数の磁器産地・佐賀県有田町が、「SDGs元年」を合言葉に早くも前進をはじめています。中編では、有田焼のいまに産地の未来を見出すキーマンたちに、4つの取り組みについて教えていただきました。

≪前編を読む

原料から無駄にしない
再利用とロス削減

吉右ヱ門製陶所の白泡化粧雲母銀 片菊彫19㎝プレート(φ195×H15㎜ 4290円)

〈お話をうかがった人〉
有田陶交会 会長・徳永弘幸さん
徳幸窯5代目。窯元の若者たちで構成される有田陶交会をはじめ一流シェフのニーズに応えるARITA PLUSのメンバーとしても活動。

窯元が考える“もったいない”の代表格は、素焼きの時点でヒビが入ったり、割れてしまった廃棄品。「昔から成形時に出る削りカスを集めて陶土として再利用したり、破損した素焼きのうつわを細かく砕き、釉薬の原料に使うなどしています。私たちは、窯元若手有志による『NEXTRAD』というチームを15社でつくっており、その1人、吉右ヱ門製陶所の原田吉泰さんは粉砕した素焼きの特性を利用して、泡のような新たな加飾を生み出しました。これは有田焼の中でも画期的」と徳永弘幸さん。また、NEXTRADでは各窯元の得意分野を互いに理解し合い、仕事を分け合うことにも努める。結果、失敗を減らし、ロス削減にもつながっている。

NEXTRADは20〜50代で構成。写真左から吉右ヱ門製陶所の原田吉泰さん、徳永弘幸さん、藤巻製陶の藤本浩輔さん
廃棄品となった素焼きを細かく砕き、ポットミルという道具を用いて、ペースト状に。それを釉薬に混ぜ、泡立ててうつわに塗布。そのまま焼成することで、月のクレーターのような柄が浮かび上がる

割れたうつわが建材に!?
アップサイクル

「アリタセラ」の植栽のグランドカバー材として再利用された陶磁器片「べんじゃら」。現在、コンクリートに混ぜ込むなど、建材としての活用方法を模索中だ。近い将来、べんじゃらで装飾された建物を見る日も近いかもしれない

〈お話をうかがった人〉
有田焼卸団地協同組合 青年部 会長・篠原将太さん
アリタセラに店舗を構える商社、まるぶんの5代目。有田焼卸団地協同組合として「茶わん供養・有田のちゃわん祭り」などを実施。

愛着をもって使用していたうつわをそのまま捨てるのではなく、しっかりと供養する神事「茶わん供養」を有田焼卸団地協同組合では38年も前から行ってきた。いままでは供養したうつわはそのまま廃棄していたが、2021年春からはチップ状に粉砕し、同組合が運営するショッピングモール「アリタセラ」の植栽のグランドカバー材として再利用。有田の方言で「べんじゃら」と呼ばれる陶磁器片で、白をベースに赤や青、黄といった色がちりばめられている。プロジェクトリーダーの篠原将太さんは「割れた時点で役割を終えるうつわに、新たな価値を付加する取り組み。今後はほかの用途の可能性も探りたい」と話す。

茶わん供養を象徴する「茶わん神輿」。茶碗は有田焼の窯元62社が制作。アリタセラに展示されている

アリタセラ
住所|佐賀県西松浦郡有田町赤坂丙2351-169
Tel|0955-43-2288
営業時間|9:00〜17:00(店舗により異なる)
定休日|なし
www.arita.gr.jp

想いを伝えられる人材を
次世代教育

「伝トーク!!」は厳しい状況下で産地としてどうやったら生き残れるかなど、若手が議論する場。自分の考えを伝えることの大切さを再確認してもらうという狙いもある

〈お話をうかがった人〉
有田商工会議所 会頭・深川祐次さん
九州ではじめて設立された企業法人・香蘭社の代表取締役社長。有田商工会議所はコロナ禍によるWeb有田陶器市などにも取り組む。

SDGsでは人材の育成も欠かせない。深川祐次さんは、ここ十数年の跡継ぎ問題にも警鐘を鳴らしつつ、こう話す。「ひと昔前はものをつくれば売れる時代。ただ、いまはライフスタイルの変化もあり、昔ほど経営が楽ではなくなってきたのは事実です。ただ、若い世代の柔軟な考え方や多様性でさまざまな問題はクリアできる」。そのために開かれているのが有田商工会議所が事務局を務める「伝トーク!!」だ。窯元、商社など有田焼にかかわるさまざまな業種の若手がトークバトルをするというもので、有田ケーブル・ネットワークの協力を得て、番組を制作。YouTubeでも視聴でき、外部への情報発信のツールとしても活用している。

伝トーク!!
https://www.arita.jp/dentalk/

持続可能性を考える体験を創出
アグリテック、エコツーリズム

電気は太陽光で自家発電、火源は薪と、2次エネルギーを使わない「TIMERの宿」。全国的に見てもここまで徹底した暮らしをしているのは珍しく、さらに民泊利用できるという点も斬新だ

〈お話をうかがった人〉
有田町 町長/有田観光協会 会長・松尾佳昭さん
町議を経て、2018年、有田町長に初当選。産業・観光の要である窯業・農業の活性化、自然の豊かさの発信等に力を入れる。

旧有田町と旧西有田町が合併して誕生した有田町。旧有田町は焼物の産地として発展。一方、旧西有田町は農業を主産業とした地域で、黒髪山や竜門峡に代表される豊かな自然も魅力だ。

松尾佳昭さんは、「自然や農業を生かしたネイチャーツーリズムにも力を入れていきたい。実際、電気もガスも通っていない『TIMERの宿』の主、髙岡さん夫妻など有志が集まってオーガニック、有機栽培をテーマにしたファーマーズマーケットといった新たな取り組みもはじまっています」と話す。

“自給自足”を実践している髙岡さんのような考え方をもつ人々が地域の歴史や文化を伝える取り組み。それもまた持続性を考える上で大切な要素だ。

主人の髙岡さんとのコミュニケーションも宿泊時の楽しみのひとつ

TIMERの宿
住所|佐賀県西松浦郡有田町下内野丙2440-4
Tel|080-2697-2288
客室数|1日1組(2名から5名まで)の貸切
料金|1泊夕朝食付1万6000円、中学生1万2000円、小学生8000円、幼児4000円、0〜1歳無料(税・サ込)
カード|利用不可
IN|14:00 OUT|10:30
施設|薪の露天風呂、テラス、キッチン
※8月休業、不定休
https://timer-no-yado.weebly.com

 

≫後編を読む

 
 

サステイナブルなうつわ産地。有田の次の400年はSDGsから生まれる?
前編|キーマンたちが語る有田の未来とは
中編|有田町のSDGs取り組み事例
後編|産地間の連携で実現した町づくり

text: Tsutomu Isayama photo: Kazuya Hayashi map: Alto Dcraft
2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」

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