FOOD

青森県弘前市
御菓子司 大阪屋の「冬夏」
《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》

2025.11.20
青森県弘前市<br>御菓子司 大阪屋の「冬夏」<br><small>《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香ふくだりかさんの《民芸お菓子巡礼》。今回は青森県弘前市にある、御菓子司 大阪屋の「冬夏」をご紹介。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中。

シンプルな掛け紙が美しい缶。2376円。数カ月寝かせた浮種(うきだね)を炒り、和三盆をまぶして仕上げた冬夏。薄紙を解くと繭玉のような風情がある

「大阪屋」は江戸期の弘前藩に仕えた御菓子司です。390年余りの歴史ある老舗の暖簾をくぐると、ずらりと並ぶ螺鈿細工の什器が目に艶やか。螺鈿漆器は伝統的に菓子箱によく使われた手法で、東京の日本民藝館でもいくつか所蔵しているほど。そう、第一級の民藝品が現役で活躍している様を堪能できるのが大阪屋です。

弘前を訪れるなら江戸時代の技術を引き継ぐ銘菓「冬夏」がおすすめ。大阪屋の先祖が豊臣家の家臣だった縁から大坂冬・夏の陣で戦に敗れたことを忘れてはならない、という戒めが名前の由来だそう。ふわふわの食感を得るにはもち米に砂糖を加えたタネを長期熟成し、完成まで3~5カ月ほどかかります。歯を入れるとサクッとほころび、雪のように口中で溶け消える。時間と熟練を必要とする稀少な軽焼は唯一無二の美味しさです。

しかも柳宗悦が名著『手仕事の日本』で絶賛したこぎん刺しをいまなおつくり続ける「弘前こぎん研究所」へ歩いて5分で到着。この立地も、民藝好きにはありがたい。

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薄墨色で印刷された風景画を配した包装紙

御菓子司 大阪屋
住所|青森県弘前市本町20
Tel|0172-32-6191
営業時間|8:30~17:30
定休日|なし

 

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text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」

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