2021年4月、日本酒「鍋島」を醸す富久千代酒造が、オーベルジュ「御宿 富久千代」を開業した。それに先立ちオープンしたレストラン「草庵 鍋島」で繰り広げられる日本酒と日本料理の融合、その感動体験をお届けする。
築200年の伝統的建築物がよみがえる
「生まれ育った町並みを守りたかった。当初は何も決めずに土地だけ買ったんです」。そう語るのは、富久千代酒造の3代目蔵元兼杜氏の飯盛直喜さんだ。
JR肥前浜駅から5分ほど歩くと、酒蔵や武家屋敷が建ち並ぶ通りが見えてくる。白壁と黒い瓦屋根のコントラストが凛々しい、無駄な装飾などがない美しい町並みは、重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)にも指定され、市民が一体となって守り抜いてきたものだ。なぜこの地でオーベルジュをはじめたのか、その問い掛けには、奥さまの飯盛理絵さんが答えてくれた。
「弊社では蔵見学も酒の販売もしていませんが、わざわざたくさんの鍋島ファンや日本酒ファンが訪れてくださいました。お越しくださる方々のため、日本酒をディープに楽しんでいただける空間づくりをしようと思い、オーベルジュを開業しました」
その想いの下、200年の歴史を紡いできた伝統的建築物が「御宿 富久千代」としてよみがえる。併設するレストランの名は「草庵 鍋島」。料理長を務めるのは、東京の三つ星和食店などで研鑽を積んだ西村卓馬さん。28歳ながら、確かな経験と若き感性を生かし、和をベースとしたコースを組み立てている。次ページでは、3時間に及んだ鍋島のおもてなしを紹介しよう。
日本酒と食、うつわから
九州の四季を味わう至福の3時間
佐賀をはじめとする九州の食材と、日本酒「鍋島」とのペアリングメニューを全紹介!
※2021年4月時点の春のメニューです。四季に合わせて、ひと月半ごとに食材、献立を替えているため、季節ごとの料理をお楽しみください。
≫後編を読む
≫公式サイトはこちら
text: Discover Japan photo: Atsushi Yamahira 撮影協力=佐賀県
2021年10月号増刊「ニッポンの一流ホテル・リゾート&名宿 2021-2022」